フランス、2年で「仕事・家族・恋愛」こんな変わった

新型コロナの影響により、フランスは同じ国とは思えないほどの変化が……(写真:Nathan Laine/Bloomberg)

フランスに住む日本人女性のくみと、日本に住んだ経験を持つフランス人男性のエマニュエルが日本とフランスの相違点について語り合う本連載。新型コロナウイルスの影響もあって、約1年9カ月ぶりの連載再開となりますが、今回はまさに「コロナでフランスに起きた大変化」について2人が感じていることを話し合いました。日本人が感じていることと何か違う点はあるでしょうか。

とても同じ国とは思えないくらい変わった

エマニュエル : コロナの影響もあってくみと話すのももう1年以上ぶりかな。2019年以降はフランスもまったく変わって、とても同じ国とは思えないぐらいだよね。

くみ : そうね。つい最近ワクチン2回接種者が8割を超えて、ロックダウンしていたころに比べたらかなり普通になってきたけど、まだまだもとの生活からはほど遠いね。何より普段の生活で一切マスクを付けなかったフランス人がマスクを付けてる時点で別世界よね。

エマニュエル : 一番大きな変化はやっぱり仕事だと思うんだ。ロックダウン以降導入されたさまざまな規制措置や、マスクの着用や社会的距離などの影響によってテレワークの位置づけが完全に変わってしまった。

もちろんコロナ以前もテレワーク自体は公共、民間問わず存在はしてたけれど、ほとんど見られなかった。だから以前は、テレワークしている同僚のことを “ビーチでテレワーク”しているなんて社内の廊下で冗談を言ったりしていたから、社内の評価を気にする社員たちには、テレワークを頻繁にすることはすすめられていなかった。

1週間のうち1日以上テレワークすることがなかなかできなかったのは、たくさんの人がテレワークできるようなシステムがそもそも準備されていなかったし、社内でのチームワークが保証されないという考えもあったからだ。

こんな考え方は最初のロックダウン以降完全に変わって、今では会社がどれくらいの日数出社できるかを交渉でき、週に2日以下しかテレワークを認めないなんてことはほとんどなくなった。

くみ : そうね。職種などにもよるのだけど、たとえテレワークで問題なく仕事ができる職場であっても、「オフィスに来ていない=仕事していない」と感じる人たちは一定数いて、コロナの状況下でもあまりその感覚が変わっていない人も見かけた。一方でテレワークにすっかり慣れてしまって、以前のように毎日出勤して働くのが想像できないという人もいるわね。

子どもと夕食を一緒にできることの意味

エマニュエル : 仕事への影響もそうだけど、家族関係や社会生活、恋愛関係への影響も大きかったよね。
 
コロナ以前であったら、民間の管理職なんかは19時前に退社するのはなかなか難しかったと思う。日本の企業と比べたら19時退社なんて早いかもしれないけれど、子どもが寝る前に会うには少し遅すぎる時間だ。子どもが夕食を食べ終わるかぐらいの時間に帰ってきて眠る前におやすみを言うぐらいしかできなかった。

それが、テレワークが始まってからは、学校が終わる17時、18時から子どもに会えるし、家で子どもと昼食を一緒に取る機会も増えた。この変化はとても大切だと思う。特に夕食を一緒に食べて、親と子がたくさん話す時間は親子関係にとても影響がある。今日1日あったことをよく話すようになることで親は子どもの学校生活をよりよく知れるし、何気ない会話でも子どもの話す力の向上にもつながる。

例えば、7、8歳のころに1日あったことをわかりやすく簡潔に話せる能力があったら、その後仕事上でもプライベートでも即興でスピーチをするのに苦労しなくなるだろうね。レトリックは習うよりも実践で身につけるものだから。くみは覚えてるかわからないけど、前にこのことについて記事で話したことがあったよね(「日本とフランス、夕食の風景はこんなに違う」)。

でも、もちろんこれは子どもが学校に行くという前提での話だよ。最初のロックダウンの時のように休校だと、親が子どもに学校の代わりに勉強をみなければいけないので、そうなると親には多大なストレスがかかる。そのことは、くみはどう思った?

くみ : 私のまわりにも子どもの面倒を見ながらテレワークしてる人たちがいたわね。オンライン会議を設定しようとしても子どもの学校の時間との関係に合わせて調整することになったり、会議中に子どもが乱入しないようにするなど大変だと聞いた。一方で、私は母が専業主婦だったから共働きの両親と暮らすことがほとんどなフランスの子どもたちの普段の生活は想像するしかないのだけど、でも私自身の体験から言うと、学校から帰ったらつねに親が家にいていつでも何か話せるという関係は子ども心にも安心感があったと思う。

もちろん、個人的には女性も希望するキャリアを追い続けることができる社会が理想だと思ってるけど、だからこそテレワークなどをうまく取り入れて、キャリアを続けながら家族との時間も多く持てるような生活をできることはとても大切な気がする。

エマニュエル : そうだね。それにこの働き方の変化は本当にさまざまな影響があって、社会生活に隕石が落ちたかのような衝撃だった。都市部はとくに自宅と職場が離れている場合が多く、感染を避けるために公共の交通機関を避けることも多くなり、自宅周辺から離れる機会も以前よりかなり減ってしまった。

結果として、コロナ以前は頻繁に行われていたフランス人の大好きな“ビジネスランチ”の重要性も下がったというわけだ。以前のように自社、他社問わず社員同士の情報交換の機会が減ったということは、各自の人脈・情報の”ネットワーク”の構築がしづらくなってしまったことになる。特定の職種(新技術の開発など)においては、この”ネットワーク”こそが個人だけでなく業界全体においての利益のもとでもあった。

予定を合わせるのがものすごく大変に

くみ:同僚とのビジネスランチだけでなく、友だち同士で出かけることも楽ではなくなってしまったよね。

エマニュエル:そうだね。1つ例を挙げようか。ジャン、ジャック、ポールの3人の友人がそれぞれパリの9区、11区、15区で勤務していたとしよう。コロナ以前では、気軽に仕事帰りにどこかのバーで1杯飲むことができた。

しかし、ジャンがパリ南部の郊外、ジャックがパリ西部の郊外、ポールがパリ北部に住んでいて、各々が週に2回職場に出勤していたとしても、それぞれが同じ日に出勤しているとは限らないのでそう簡単に仕事終わりに飲みに集まる事もできなくなった。それなので、どうしても友だち同士で仕事後に会うとなると、何日も前から日にちを全員で合わせて会うしかないため、必然的に、友だち同士でこうやって会う機会も減ってしまうわけだ。このジャンとジャック、ポールがテレワークをあまり好まないとしても、オープンスペースのオフィスでは社会的距離を確保するために1日の出勤者数を制限するため、週に数日以上のテレワークを会社から要請されることもある。

くみ : 仕事関係だけじゃなく友だちと会うことも減ったというのはまさにそう。激減した。それに、たとえ実出勤日が重なってたとしても、カフェが閉まっていたりして、外で会う場所もない時期もあったよね。季節がよければフランスは公園などでおしゃべりすることもよくあるけど、いい季節ばかりではないしね。あと、恋愛にもすごい影響が出たと思う。

エマニュエル : 確かに恋愛関係においても少なからず影響はあっただろうね。テレワークによって男女の出会いの場自体が激減したからね。友だち同士で会うのと同様、男女の最初のデートの日程を決めるのも楽ではなくなったから、コロナ以前よりも会う相手を慎重に選ぶようになったんじゃないかな。

特にロックダウン時は、デートできるようなレストランだとか美術館、映画館、劇場なんかはほぼ閉まっていたり、規制がしかれていたりしたからね。

くみ : 個人的に面白いと思ったのは、ロックダウンが始まった頃、隣国ドイツで「感染予防のため恋人は1人に絞るように」というのが出されなかった?フランスでは見なかったけど。そんなプライベートまで言及するのは面白いなと思った。

ただ、それまでに恋人がいた人であっても、いちばん厳しいロックダウンのときは緊急時を除いて1キロ圏内しか移動が許されなかったから会うのも難しかったんじゃないかと思うし、逆に近場で求める人も増えたのかもしれないと思った。

ロックダウン中に近所のスーパーに必需品の買い物に出かけたとき、昼間でもひっそり静まりかえった通りで声をかけられたことが2回あって驚いた。普段は声なんて絶対かけられない通りなんだけど……。

厳しいロックダウン後に増えた離婚率

エマニュエル : 夫婦関係においても変化はみられる。前までは、夫婦がずっと一緒に過ごすのなんて老後が始まってからだろうと思っていたのが、20年も30年も早くそんな状況になったわけだからね。このことで夫婦の絆がより強固になったという場合もあるけれど、もちろん逆の場合もある。多分これはフランスだけではないと思うんだけど、2020年は離婚率が平年よりも増加した。特に厳格だった1回目のロックダウンは、夫婦の関係に大きな影響を与えた。普段であったら見過ごせたような些細なことが、ストレスで抑えられなくなり夫婦仲に修復しようのない亀裂が入ってしまったんだ。

結果として、2020年5月後半期には、前年同時期よりも25%も離婚が増加したそうだ。離婚理由としては、「もう耐えられない」「浮気していたのがばれた」「もう特に話すことも共有することもないことがわかった」というのが多い。イギリスでも同様に、2020年の7月から10月における離婚件数が前年よりも122件も増加したそうだよ。

くみ : そうやって数字で示されるとやっぱりコロナは生活様式を変えてしまったと言えるね。フランスはだいぶ戻ってきてる気はするけど、今後どうなっていくのか引き続き注意が必要だね。

エマニュエル : 多分コロナの状況にかかわらず、テレワークによる社会の変化の大部分はこのまま続いていくだろうね。フランス人もすっかりテレワークに慣れたし、社会におけるテレワークの受け入れられ方もすっかり以前とは変わってしまったから。そしてフランスの社会全体もこうやって見てきたように変わりつつある。僕が思うに、これはなんだか静かなビッグバンって感じだよ。

ジャンルで探す