堀江貴文「人の仕事なくなる」未来想定の球団設立

会見で「福岡北九州フェニックス」の構想を語る堀江貴文氏(写真:筆者撮影)

堀江貴文氏がオーナーを務める新球団「福岡北九州フェニックス」は、独立リーグ「ヤマエ久野九州アジアプロ野球リーグ」への来季からの参入を認められた。9月17日、北九州市内で記者会見があった。

「まったく何もない中でのスタートになりますので皆さん“本当にあいつはできるのだろうか”とか疑問に思っていると思いますが」

球団代表取締役の河西智之氏(弁護士)が今後のスケジュールについて紹介した後、堀江氏は静かに語り始めた。

堀江氏「これからは地方の時代だ」

今の時代に独立リーグ球団を設立する意味について、「働き方、生き方が大きく変わりつつある現在、リモートワークやDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展で『人の仕事』がなくなってしまう。なんとなく会社に来て、なんとなくパソコンの前に向かって時間を過ごすような働き方はなくなり、大量に空き時間ができる。その時間をいかに埋めていくかが大きな課題となる。独立リーグ球団の設立は、その実践の場だ」とした。

堀江氏はすでに自らのオンラインサロンで、3人制バスケットのチームを運営するなど、サロンの仲間とプロスポーツの分野に乗り出している。さらに大きなチームを作ろうと、今回の設立に至ったという。

「ただし日本にはすでにNPBがあるので、ガチなファン以外を取り込むのが大きなテーマとなる。野球が大好きじゃない人が圧倒的な中で、いかに球場に呼びこんだり、ファンになってもらうかが課題だ」(堀江氏)

堀江氏は「これからは地方の時代だ」と断言する。2004年に「仙台ライブドア・フェニックス」という球団名でNPBに参入しようとした時期には、巨人、阪神など大都市圏のセ・リーグのチームが人気だったが、その後、ソフトバンクが福岡でドーム球場、ホテル、プロ野球チームで大人気になったように、地方に本拠を置いたパ・リーグがセ・リーグに肩を並べるようになった。

「仙台なんかで球団つくったって客入るわけねーだろ、パ・リーグみんな赤字じゃねーかよとか、めちゃくちゃ言われましたけど今、どうですか」「当時と比べても今は、SNSの利用が進み、DXが進展しつつある。空き時間がさらに増える中、プロスポーツはまだまだ足りない、球場を核として小回りの利く、新しい施策を打ち出していく」と堀江氏は語る。

今後の構想として「台湾、韓国とも密に連携をとりたい。台湾には日本でチームを持ちたいというオーナーもいる。むしろ、韓国、九州、台湾で12球団くらいできるのではないか」「さらに、IR事業との連携も考えられる。横浜は難しくなったが、大阪にカジノができるとすれば、いろんな『スポーツベッティング』が行われるだろう。独立リーグは対応しやすいのではないか」という。

球団代表取締役の河西智之氏(左)と堀江貴文氏(写真:筆者撮影)

堀江氏はすでにクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」で予算を上回る資金を集め、それに加えてブロックチェーンを利用した「FiNANCiE」でも資金集めに成功。キャピタルゲイン的な運用を考えたいと話した。

堀江氏自身も千数百万円出資し、スポンサーも集めるとし、初年度1億円の資金集めはメドがついているとのことだ。

「AKB48も最初は地下アイドルとしてスタートしたが、国民的なアイドルになった。独立リーグがメジャーになる日も夢ではない」(堀江氏)

プロ野球球団の所有が実現する堀江氏の狙い

「北九州市は、人口も減少少子高齢化が進んでいるが」という取材陣からの質問に対しては、「福岡県のどこでもよかったが、たまたま北九州市になった。最近は安全になってきて、これからは環境もすごく良くなるだろう。九州第2の都市だし、ポテンシャルはあるし、スポンサードも期待できる」と話す。

さらに「2004年の球界再編時にできなかった、球団所有という悲願がかなうことになるが」との質問にこう話した。

「自分の悲願などどうでもよい。あのとき(2004年の球界再編時)は12球団を10球団、8球団に減らす案が出ていた。世界的にも同じ議論があったが、MLBでは反対に1990年の16球団が、30球団にエキスパンションして大成功した。その後楽天さんが参入して、日本一のときは僕もその場にいてよかったなと心底思ったが、今はローカルなプロスポーツ、エンターテインメントをつくっていく使命感、“おせっかい”に近いが、うまくいったらそれでいいじゃないか」

メディアでもよく顔を見かける堀江氏だが、こんなに楽しそうな顔をするのは珍しいのではないかと思った。しかし、独立リーグ球団の設立が主目的ではなく、これを核としたさまざまな事業展開を構想しているところが、ホリエモンこと堀江貴文氏の真骨頂ではあろう。

ただ、こうした構想はリーグに属する1球団で実現できるものではない。「ヤマエ久野九州アジアプロ野球リーグ」に属する他の2球団はどのように受け止めているのか、両球団の代表にもコメントをもらった。

熊本を本拠とする火の国サラマンダーズの神田康範球団社長は次のように語った。

火の国サラマンダーズの神田康範球団社長(写真:筆者撮影)

「堀江さんとは前々職(ヨーロッパサッカー経営)や前職(Bリーグ)からのお付き合いです。つねに新しい発想をお持ちで非常に尊敬している存在です。今回の参入の時もLINEの1通から始まり、数日後には堀江さん側の数人と会議をして参入が決まるといったスピード感でした。クラファンなど現代的なマネタイズを積極的にされているのも、熊本球団や大分球団にもいい刺激になっております。

一方、東京のようにすべてがビジネスライクで進まないのが、九州、そして野球界なので堀江さんたちともコミュニケーションをしっかりとって、みんなで高め合っていきたいです。フェニックスの参入は、本当にありがたいです。1年先輩として、球場以外では全面的にサポートしていこうと思っています。大分・北九州・熊本の代表同士も気軽にコミュニケーションがとれる体制を作ろうと思っています。とにかく、今はまだ成長期ですので、球場以外では手を取り合うことが非常に大事です」

話題性がある球団の増加は「大歓迎」

大分を本拠とする大分B-リングスの森慎一郎代表取締役は

大分B-リングスの森慎一郎代表取締役(写真:筆者撮影)

「基本的にリーグが盛り上がることについてはプラス要素しかないので、球団が増えること、話題性がある球団が増えることは大歓迎です。ただ、リーグあっての球団なので、リーグがやるべき役割はリーグ機構の方針のもと、リーグ所属球団が足並みをそろえ活動していくべきだと考えます。

来季は3球団のコラボによる企画はどんどんやっていきたいと思います。できれば各球団フロントの部署ごと担当者による会議を開催し、ファン拡大への取り組みをしていければよいと思います。

アジアリーグ構想ですが、まずは九州内の各県1チームができ都市対抗戦の様相を呈すればリーグの価値、チームの人気や集客効果、スポンサード意識の高揚につながると思います。九州内の1県1チーム構想が進み、リーグや各チームが安定的経営をできるようになったら、アジア諸国への展開を進めていき野球の魅力をアジア諸国に広め、野球産業の拡大を図るべきだと思います」

とこちらも前向きに語った。

今年からスタートした「ヤマエ久野九州アジアプロ野球リーグ」は、独立リーグ、そして日本の野球界に大きな波紋を広げている。母体が社会人野球「熊本ゴールデンラークス」だったとはいえ、「火の国サラマンダーズ」は、先行する四国アイランドリーグplusのチームやソフトバンク3軍と互角以上の勝負を演じ、相手チームから「強い」と言う声が上がっているのだ。

また、独立リーグ初のドラフト1位指名があるのではないかと言われる火の国サラマンダーズの石森大誠には、多くのNPB球団のスカウトが群がるなど、これまでにない景色が見えてきている。

火の国サラマンダーズの石森大誠(写真:筆者撮影)

そもそも、コロナ禍で独立リーグ球団はドミノ倒しで潰れていくのではと危惧される中、2シーズンが経過してIPBL(日本独立リーグ野球機構)傘下で潰れた球団は皆無。

もともと観客動員に頼らないビジネスモデルで、損益分岐点が低かったうえに、球団経営者が思い切ったコストカットを断行。何とか生き延びたのだ。

コロナ禍でも独立リーグに「追い風」

コロナ禍で、活動が休止状態になった大学野球や、親会社の経営不振が目立つ社会人野球を選択せずに、独立リーグに優秀な人材が流れてきている。

「ルートインBCリーグ」から分離独立した「日本海オセアンリーグ」も新しい展開を打ち出しているし、いろんな意味で、独立リーグには「風が吹いている」という印象だ。ホリエモンの参入によって、追い風はさらに強まるのではないか。

福岡北九州フェニックスの今後の日程
10月下旬に球団ロゴ、エンブレム、ユニホームのデザインを決定。
10月30日と11月3日に球団のトライアウト。
12月までに監督、コーチ決定。
1月に北九州市出身のバンド「175R(イナゴライダー)」による球団テーマソングを公開。
来年2月のキャンプ、3月の開幕を目指す。

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