20年度は4.7兆円、巨額の公共事業費を使い残す訳

日本では災害が毎年のように起きている。写真は2021年7月に静岡県熱海市で起きた大規模な土石流災害(写真:時事)

今年もわが国は豪雨災害に見舞われている。被災された方々にはお見舞い申し上げたい。

わが国では毎年、どこかで集中豪雨が発生し、水害や土砂災害が起きている。水害は堤防やダムで、土砂災害は擁壁で防ぐのが基本としても、巨額の予算を一気に投下して、全国至る所でひたすらコンクリートで固めればよいわけではない。

現にわが国の一般会計での公共事業費は、毎年のように巨額の補正予算を計上しても年度末までに使い切れず、巨額の使い残しが出ている。

増え続ける公共事業費の使い残し

「総選挙前にこれ以上の巨額補正予算が不要なわけ」で詳述したように、2017年度には2.6兆円、2018年度には3.2兆円、2019年度には3.9兆円の公共事業費を使い残して、それぞれ翌年度に繰り越した。

7月30日に発表された2020年度決算では4.7兆円が2021年度に繰り越された。このように年度内に使い切れない公共事業費は年を追うごとに増えている。

しかも、4.7兆円という額は2021年度当初予算で計上された公共事業費6.0兆円の約8割に達する。この両者の合計である10.7兆円が、2021年度に使える状態になっているのだから、いまさら補正予算で公共事業費を積み増す必要はなかろう。

補正予算を増額するよりも、公共事業費がなぜ使い切れないのか、その原因を探究し、適正規模の予算を適切かつ効果的に執行することを考えるべきである。やみくもに補正予算を増やしても防災には役に立たない。

公共事業費を使い切れないのは、政治圧力で補正予算を無理に増額していることが主因だが、公共事業を請け負う民間業者のキャパシティーに限りがあることも制約となっている。建設や土木の職業の有効求人倍率はこのところ4倍を超えており、人手不足が常態化している。

もちろん、予算を年度内に無理に使い切る必要はない。しかし、繰り越されることがあらかじめわかっているのに前年度の補正予算を増額するぐらいなら、消化できる適正な規模で当年度の当初予算に計上すればよい話である。

省庁横断的な工夫で防災

公共事業を請け負える量に限りがあるから、防災はハードだけに頼れない。ソフト面の防災にも注力する必要がある。その観点から、防災のための公共事業費の使途にも近年工夫がなされ始めている。

豪雨防災の分野では、国が管理する一級河川はすでに「流域治水」という発想で、関係省庁が垣根を越えて一元的に被害軽減を推進する取り組みを始めている。治水は国土交通省の所管で、同省は治水ダムや堤防の強化を担ってきたが、他の省庁が担うもので治水に役立つものは多い。

例えば、農林水産省や厚生労働省、経済産業省が所管している利水ダム(産業用等に用いるダム)を治水に活用したり、財務省が所管している国有地で遊水機能を活用。文部科学省が所管している学校の校舎等の防災機能向上や防災教育のほか、金融庁が所管している保険等を通じた浸水対策や居住誘導を行ったりしている。省庁横断的にハードとソフトの対策を組み合わせることで、一級河川の流域全体で効果を上げようというわけである。

2021年度予算からは、新築住宅にかかる政策金融支援(住宅ローンの借入金利を一定期間引き下げる)や住宅関係の補助事業において、災害リスクの高い区域を支援や補助の対象外とした。災害リスクが高い区域とは、建築物の建築の禁止が定められた災害危険区域や土砂災害特別警戒区域である。そのような地域に新築住宅を建てる場合、今後起きかねない豪雨災害で被害が避けられない。それを未然に防ごうというわけである。

ただ、災害リスクの高い区域として指定できるのは、これまでは土砂災害についてのみで、水害については存在しなかった。

そこで、浸水災害のレッドゾーンといえる「浸水被害防止区域」の新設などを盛り込んだ流域治水関連法が今年の通常国会で成立した。これにより、土砂災害の危険はなくとも浸水災害の危険がある区域を都道府県知事が浸水被害防止区域に指定し、住宅等の建築や開発行為を制限できるようになった。

区域指定に積極的な自治体に支援を

ただ、浸水被害防止区域に指定して建築制限をするには、浸水被害をもたらす恐れのある河川を「特定都市河川」に指定しなければならない。特定都市河川はこれまで、市街化の進展により河川整備で被害防止が困難な河川と定義され、東京都、神奈川県、愛知県、静岡県、大阪府を流れる8河川しかなかった。

ところが、近年の豪雨災害は大都市圏以外の地域で多発している。このことから、前掲の流域治水関連法では、バックウォーター現象の恐れや狭隘な川幅など、自然的条件により被害防止が困難な河川も特定都市河川に指定できるよう改正した。

国は、都道府県知事が早期に浸水被害防止区域を指定できるよう、財政支援を準備している。浸水被害防止区域に指定すると開発や建築が制限されるため地価の下落が予想され、地元の反対に遭う恐れもある。しかし、住民の生命と財産を守るために、客観的に見て災害リスクが高い区域は躊躇なく指定すべきである。それを後押しすべく、財政支援は区域指定に積極的な自治体に優先すべきである。

また、災害リスクの高い区域にある医療・福祉施設の移転も促す必要がある。その移転促進のための予算も2021年度予算には計上されている。

このように、豪雨災害による損害を軽減するためには、ゾーニング(土地利用規制)が今後重要になってくる。ハード面ばかりに使い切れないような巨額の予算を計上するのではなく、災害リスクが高い区域における建築や開発の制限といったソフト面での対策に注力することが豪雨災害への備えとなる。

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