「東芝次期社長」に冨山和彦氏の名前が浮上する訳

東芝の次期社長候補に浮上した冨山和彦氏。写真は2016年9月撮影(撮影:尾形文繁)

トップ人事の調整を進めている東芝の社長候補に、経営共創基盤の創業者で現在は会長を務める冨山和彦氏が浮上していていることが東洋経済の取材でわかった。

東芝をめぐっては2021年4月、社長兼CEOを務めていた車谷暢昭氏が突然辞任。6月に開かれた定時株主総会では、社外取締役で取締役会議長を務めていた永山治氏の再任案も否決された。

その後、車谷氏の前に社長を務め、2020年4月から会長職を務めていた綱川智氏が社長兼CEOに就任。暫定的に取締役会議長も務めている。

「企業再生のプロ」が浮上

東芝は7月30日付で「当社取締役会からの発表について」というリリースを公表し、綱川氏の後継者候補を社内外で検討するため、エグゼクティブサーチ会社2社を選定したことを明らかにしていた。

そうした中で浮上したのが冨山氏だ。冨山氏は2003年に産業再生機構の設立に参画。代表取締役専務兼業務執行最高責任者(COO)を務めた後、2007年に企業再生を専門とするコンサルティング会社の経営共創基盤を設立した。

経営破綻した日本航空の再生では政府のタスクフォースのサブリーダーとして主導的な役割を果たすなど、金融業界では「企業再生のプロ」との呼び声が高い。

こうした経歴が評価されて候補に名前が挙がった模様だが、「もう一つの大きな理由が、経済産業省との関係の深さだ」と金融関係者は明かす。

というのも、2020年7月の株主総会の運営をめぐる弁護士らの調査でも明らかになったように、「経産省とはズブズブの関係」(金融関係者)で、社長人事を決めるのも「経産省の意向を無視できない」(同)ためだ。

その点、冨山氏は経産省の受けは悪くない。前述したように、経産省の肝いりで誕生した産業再生機構の設立に携わり、現在も経産省が監督する政府系ファンドの産業革新投資機構の社外取締役の経験もある。

経産省は、電力会社やメーカーを横断した原子力産業の再編を進めたいとの思惑を持っていると言われ、東京電力ホールディングスの社外取締役を2020年まで務めていた冨山氏はまさに適任というわけだ。事情に詳しい関係者によれば、「経産省も水面下で(冨山氏の東芝社長就任に)前向きだと言われている」と明かす。

「火中の栗」を拾う冨山氏

冨山氏の起用案は東芝の大株主であるアクティビストの一部にも打診されている模様だ。「冨山氏であれば反対はしないとの意向を示している」(別の金融関係者)といい、「他に火中の栗を拾うような奇特な人はおらず、冨山氏決定が濃厚なのでは」(同)との見方が広がっている。

「車谷氏は『俺がアクティビストをおとなしくさせる』と対立する前提で東芝に乗り込んだために失敗したが、(冨山氏の社長)就任前にアクティビストに了解を得ていれば同じ轍は踏まないだろう。だが肝心なのは、東芝の企業価値を高めて株価を向上させること。それに失敗すれば、再びアクティビストたちが牙をむいてもおかしくない」(同)

東芝は冨山氏の起用案について、東洋経済の取材に「CEOの後任は指名委員会において社内外の候補者を前提に検討を進めている。社外候補者についてはグローバルなエグゼクティブサーチ会社を選定したところであり、候補者の特定を含め、現時点で決まっているものは何もない」とコメントしている。

アクティビストたちの本音は、株価のさらなる上昇のためには1日も早く混乱の収拾を進めるべきというもの。冨山氏の社長就任は認めるが、その後はお手並み拝見といったところのようだ。

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