老後の住まいが心配な人に知ってほしい必須知識

賃貸か持ち家かと考えたとき、老後に有利なのは?(写真:けむく/PIXTA)
賃貸か持ち家かは、なかなか答えの出ない論争です。しかし、老後にしわ寄せが来る可能性が高いのが賃貸。とくに平均寿命が延び「老後期間」が長くなるこれから、「老後賃貸のリスクが上がる」と話すのは『すみません、2DKってなんですか?』の著者で住宅ジャーナリストの日下部理絵氏が老後賃貸のリスクについて解説します。
「老後2000万円問題」――金融庁の報告書が発端となって話題になったのを覚えている人も多いのではないでしょうか。老後に必要なお金を試算した結果「2000万円」という数字が出たのですが、試算をよく見ると住居費は毎月「1万3000円」という設定で計算されています。
毎月の家賃が1万3000円の物件は非常に稀。つまり、「老後2000万円」はローン返済を終えた持ち家の人に当てはまる試算、一生賃貸の人は2000万円どころかもっと必要だというのが現実なのです。

高齢賃貸特有のリスク 

そもそも、高齢者の賃貸には心配な点があります。それは、高齢になると賃貸住宅を借りにくくなること。

退職して収入が減ったり、その部屋が「最期の部屋」となって事故物件になりかねなかったりすることから、物件所有者は高齢の入居者を敬遠します。それゆえ、60~70歳になると賃貸物件は借りづらくなります。

物件所有者からすれば、事故物件を抱えることは是が非でも避けたいところ。とくに今は「何度入居者が変わっても、心理的瑕疵があれば告知すべき」とルールが厳しく設定されています。もし高齢の入居者に万が一のことがあれば……入居者が遠のいて「空室でお金が1円も入らない」のに、「固定資産税など固定費はかさむ」状況に直結しかねません。

とはいえ住むところは必要ですし、全員が全員「家を所有」するわけにもいきません。高齢化がどんどん進めば「おひとりさま」での自然死も増えていきます。そこで近年増加しているのが「シニア向け賃貸住宅」や「サービス付き高齢者住宅」と呼ばれる民間事業者などにより運営される介護施設です。

これは、高齢者が安全快適に暮らせるようバリアフリー構造で建てられた賃貸住宅で、生活相談員さんが在中して安否確認をしたり、不安なことを相談できたりするような住居になっています。

しかし、一般的な賃貸物件と比較すると、家賃が高く物件数も少ないため選択肢が限られるデメリットがあります。基準となる一定収入以下なら国や地方自治体から家賃補助を受けられる可能性があるのですが、その分入居希望者も多く抽選などで入居すらできないこともあります。

高齢でも家を買える時代に

高齢者の賃貸が問題となる今、1つの解決策として「高齢者でも家を買いやすくしよう」という動きがあります。

そもそも、元来の住宅ローンは借入時の年齢に制限があり、なかなか歳を重ねてからは審査に通りにくい傾向がありました。

そこで注目を集めているのが「シニア向けの住宅ローン」。とくに、「リバースモーゲージ型住宅ローン」はその代表格ともいえる住宅ローンです。

そもそもリバースモーゲージとは、「高齢者などが持ち家を担保にし、その範囲内で生活資金を借りられる」融資制度のこと。平たく言えば家を担保に借金できるシステムで、残高が年々増えていく融資形態です。契約者の死亡時にその家を売ってそれまでの借金を一括返済できる仕組みになっています。

「自宅という資産を保有する高齢者が、自宅の資産価値の範囲内で生活費など自由に使えるお金を借りられる」イメージです。

(出所)『すみません、2DKってなんですか?』(サンマーク出版)

リバースモーゲージは、老後資金の不安を軽減できることに加えて、「亡くなったら家の権利を渡す」というのが契約条件のため、面倒な相続問題と関わらずに済むという利点もあります。「子どもに家を遺さなくていい世帯」にとってはメリットが多い融資形態といえるでしょう。

このリバースモーゲージの仕組みをベースにした住宅ローンが「リバースモーゲージ型住宅ローン」で、これから買おうとしている家を担保に住宅取得目的の資金を借りることができます。

リバースモーゲージ型住宅ローンを組んで家を買えば、毎月の支払いは原則利息のみ。そして亡くなったときに家を売って一括で返済という流れです。

(出所)『すみません、2DKってなんですか?』(サンマーク出版)

このタイプの住宅ローンだと高齢者でも家が買いやすく、子どもの独立後などに相続を気にせず住み替えしやすくなります。

家の相続が思わぬマイナスになることも

そもそも実家の相続は、いつ発生するか読みにくいイベントです。子どもにとって思わぬ形でデメリットになることがあります。

たとえば、子どもが実家から離れた場所で仕事をしている場合、譲られても住むことはなかなか容易ではありません。いくらリモートワークが普及しても、生活の基盤がすでに構築されていれば、離れた実家で暮らせる人は少数派ではないでしょうか。

売却しようにも不動産屋さんや現地に何度も赴くことになります。買い手が見つかるまでは固定資産税などの維持費を支払わねばならず、「譲り受けたことで想定外にお金が出たり、手間がかかったりする」事例は珍しくありません。

まるで不動産ならぬ「負動産」ですが、負動産を引き継がない意味でも、リバースモーゲージが注目されているわけです。

ただし、リバースモーゲージにもリスクがあります。

「家の資産価値内で生活資金を借りられる」のが大きな特徴ですが、社会情勢や物価変動に少なからず影響を受けます。たとえば物価が下がった場合、毎月受け取れる金額がつられて下がるリスクは否めません。

また、家の価値を超えて借金はできないので、大幅に長く生きた場合、毎月の融資が打ち切りになる可能性もあります。

リバースモーゲージやそれを土台とする住宅ローンは、金融機関ごとに様々なタイプの商品があります。利用する際は、条件をよく検討して自分のライフプランにあったものを選ぶようにしましょう。

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