ぶっちぎりで上昇した海運株の今後はどうなるか

スエズ運河では座礁船が航行を再開。海運株の値動きに影響はあるのだろうか(写真:新華社/アフロ)

突然で恐縮だが、読者の皆様は「今年の上半期(1~6月)に東京証券取引所の33分類のなかでもっとも上昇した業種」は何か、おわかりだろうか?

タイトルにもある通り、答えは海運株だ。年初からの6月末まで6カ月間の騰落率は、TOPIXが+7.70%、日経平均株価が+4.91%なのに対し、海運はなんと+94.91%とぶっちぎりの上昇率1位である。6月だけの月間騰落率をとってみてもTOPIX+1.07%、日経平均▲0.24%に対し、海運は+23.97%とやはり上昇率1位なのだ。

なぜ海運株は絶好調なのか?

ちなみに、海運株とは、日本郵船(9101)、商船三井(9104)、川崎汽船(9107)などの銘柄群を指す。

このように、日経平均がモタモタしていても、株価上昇が期待できる有望な業種をしっかり見極めることができれば、日経平均型に連動するようなETF(上場投資信託)に投資するよりも、リターンを上げることが可能かもしれない。セクター投資(有望セクターへのパッケージ投資)は、個別株への集中投資よりも、ハードルが低くリスクを低減できるはずだ。

こうしたなか、東証が全国4証券取引所(東京・名古屋・福岡・札幌)の「2020年度株式分布状況調査の調査結果について」を公表した。これがとても興味深い。

まず、まっさきに確認したいのは、「投資部門別」の株式保有状況や保有比率等の状況だ。「投資部門別」とは、①政府・地方公共団体、②金融機関、③証券会社、④事業法人等、⑤外国法人等、⑥個人・その他、の6つに分けられる。そのなかで注目は、5つ目の外国法人等だ。ここには「多くの投資のヒント」が詰まっている。

さっそく中身を紹介しよう。まず2020年度の外国法人等の保有比率だ。2020年度は前年度比+0.6ポイントの30.2%となり、3年ぶりで30%超となった。また「海外投資家(外国法人等)の投資部門別売買状況」をみると、2020年度は5168億円の買い越しとなり、買い越しは4年ぶりだ。年度の前半は累計で3兆1284億円の売り越しだったが、年度の後半は11月の1兆5113億円を筆頭に、累計で3兆6453億円の買い越しとなった。

昨年11月と言えばアメリカの大統領選挙があった月だが、海外投資家はこれを境に、世界の景気敏感株である日本株を買い越しに転じた。このように、やはり海外投資家は、日本株の騰落を左右する「スイングファクター」だ。彼らが買い越しに転じれば、日本株も大きく上昇することが非常に多い。日経平均株価も2万4000円手前(2020年11月)から、ザラ場高値の3万0700円台(2021年2月)まで一気に上昇したのは記憶に新しい。

さて、次に確認したいのは、「外国法人等の『業種別』保有比率の状況等」だ。これを見ると、昨年度は前年度比で33業種中19業種が増加した。そのうち「トップ3」を挙げると、1位:海運業+5.1ポイント、2位:金属製品+4.7ポイント、3位:その他製品+2.3ポイント。一方、「ワースト3」は、33位:鉱業-9.3ポイント、32位:医薬品-2.6ポイント、31位:保険業-2.4ポイントだった。

冒頭では今年1~6月の騰落率を挙げたが、昨年度(2020年4月~2021年3月)で見るとTOPIX+39.27%、日経平均+54.25%に対し、「海運業」はなんと+147.96%と33業種のなかで断トツの上昇率となっている。

やはり「生き馬の目を抜く」ともいわれるプロ投資の世界で、海外投資家は、先々をしっかり見通して投資をしているようだ。このように、今までの相場に乗れたかどうかをチェックしてみることは、今後の相場に備えるためにも必要な作業だと思う。

「海運株」の今後はどうなる?

さて、海運株が海外投資家の買い越しによって好調に推移してきたことがわかった。海外投資家は新型コロナのワクチン接種による世界的な経済回復による海上貿易の復活などを先回りして買ったことになる。具体的には、商品市況の急騰による運賃急上昇や、好調な欧米や米中の運賃などが上昇した。海運各社の株価上昇は、このような業績回復によるバリュエーション面での魅力回復や、財務体質の改善による増配が予想されていることも株価上昇の要因になってきたとみるべきだろう。

では、ここからの海運株の行方はどうなるだろうか。具体的な論点を4つ挙げてみよう。

4つの論点は以下の通りだ。
① これまで述べてきたポジティブな要因が今後も継続するのか
② スエズ運河の座礁事故による運賃高騰は一時的で終わるのか?
③ 現状の船不足はいつ解消されるのか(2022年以降、新船造船により船不足が解消されるのか。あるいは古船を廃棄して新船に乗り換える「リプレイス需要がどれだけあるのか?)
④ 「米中冷戦激化」による船舶貿易の低迷リスク(頭の片隅に置く必要がある中期的なリスク)はどれだけあるのか

これらを参考に、読者の方々にぜひお考えいただきたい。

なぜ日本株はつい最近まで米株に比べ出遅れたのか

さて、最後に国内株のマーケット全体にも触れておこう。年初からアメリカ株に比べて出遅れといわれていた日本株だが、私は「出遅れではなく、構造的な理由等もある」と分析してきた。

ここで6月~7月9日までの株式相場を振り返ってみよう。残念ながら日米の代表的な指数である日経平均と二ューヨークダウとの騰落率を見ると「格差」はまったく縮まっていない。日経平均同様、動きの鈍かったナスダックも、5月末までは「おつきあい」をしてくれたが、6月以降は大きく水をあけられた。

この理由は主に以下の7つだ。①アメリカの長期金利低下、②日銀のETF買い縮小(日経平均FTFは買わず、値がさ株が重い)、③新型コロナのワクチン接種の遅れ(感染率は低いが、世界的にデルタ・インド株拡大、オリンピックや夏休みなどでの人流増加懸念)、④緊急事態宣言の効果不透明、⑤東芝のガバナンス問題(日本企業全体の問題として認識された)、⑥米中冷戦による地政学的リスク(中国IT企業の中国政府の規制強化によるアメリカ市場への上場減少など)、⑦7月8日・9日のETF分配金支払いに伴う約7000億円の株式売却(2日間合計、金額は推定)などだ。

ただ、それでも、ここからの日本株は上昇する確率が以前より高くなったと考える。具体的に言えば、7月以降の日経平均は、7月9日のザラ場安値2万7419円をボトムに、年後半(11月頃)に年初来高値3万0500円~3万1000円を目指す可能性が高まったとみている。これまではサブシナリオとして20~30%の確率とみていたが、今回メインシナリオとして55%の確率まで引き上げる。

逆に、これまで70~80%の確率で起きるメインシナリオとして掲げていた「年後半での(9月中旬前後)安値」(ターゲットは2万7000~2万7500円前後、高値から10%以上の下落)は今回の下落局面で、ほぼ前倒し達成した。そのため、こちらのほうは今回サブシナリオとして45%の確率まで引き下げる。

日経平均株価の再上昇には何が必要か?

では、今後の日経平均を見るうえでカギを握るのは何か。上記の7つの理由がなくなればいいわけだが、ズバリ①の「アメリカの10年国債利回り」がいつ上昇に転じるのかが最重要だ。10年国債の利回りは直近では7月8日に一時1.24%まで低下したが、これでほぼ下限レンジに達し、リバウンドが始まった可能性が高いとみている。そもそも日本株は世界の景気敏感株のはずである。このことからも、日経平均と連動していきそうだ。

残りの6つだが、②は株価下落でかなりリスクを織り込んだ。③④は国内の政局と密接に関係するが、株価の反応からは(時を味方にして)最悪期を脱し始めた。また⑤は東証再編(来年4月東証1部の「プライム」移行、TOPIXの銘柄数減少など)により緩やかに改善、⑥は一部に悪影響があるものの長期的なリスクのため、短期的には織り込まれた、⑦は一時的要因、と言える。

ただし、引き続きアメリカ景気(雇用、賃金、ガソリンや食料などのインフレ含む)に左右されることは間違いない。そのため、FRB(連邦準備制度理事会)の金融緩和の出口議論の行方(8月のジャクソンホールでの会合や、FOMC会合)や、バイデン政権のインフラ投資を含む財政政策の行方に引き続き注目すべきだろう。

では、物色対象はなにか。「業績好調の上方修正銘柄」と「経済再開に伴うリオープニング(逆襲)銘柄」の「二刀流」で考えるのがいいのではないか。

まず、ハイテク銘柄のトップバッターである安川電機(6506)の四半期決算が9日に終了したが、同社を含め、7月末にかけて徐々に本格化する企業決算に注目する方法だ。

前回の3カ月前、同社株は好決算を発表したにもかかわらず、すでに株価が上昇して評価されていたこともあり「市場の期待を下回った」として売られ「安川ショック」が起きた。だが今回の決算では、業績は市場の予想を上回り絶好調だった。この流れ(業績モメンタム)をしっかりと確認したい。

2つ目は、国内の複数のイベントが依然カギを握っている。すなわち、①東京4回目の「緊急事態宣言」と「新型コロナワクチン接種」の行方、②ほぼ無観客となった「東京オリンピック・パラリンピック」、③秋の衆議院選挙の行方、などである。ただ時間を味方にできるのなら、もはやコロナ前に100%戻ることは考えづらく、経済再開相場(リオープニング相場の逆襲)にも期待したい。

このようにいかにバランス良く「二刀流」で投資することができるかがが、ポイントになるはずだ。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

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