人数制限し感染対策「鉄道イベント」開催の難しさ

「西武・電車フェスタ2021 in 武蔵丘車両検修場」の会場。2年ぶりの開催にあたって人数制限など感染対策を徹底した(筆者撮影)

2021年に入って再び出された「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」には効果があったのだろうか。昨年の宣言期間のような外出自粛はもはや見られず、街には多くの人が出歩いていた。感染者は再び増加に転じ、今後の見通しはどうなるかわからない。

一方、多くの人が集まる大規模イベントの開催についてはさまざまな制約がある。鉄道各社が開く車両基地公開などのイベントも影響を受け、昨年は中止が相次いだ。鉄道イベントは最近になって再び開催するケースが増えてきたが、そこにはコロナ感染対策に配慮しつつ実施する難しさがある。また、やむをえず中止になるケースもある。

2年ぶりの恒例イベント

西武鉄道は6月5日、埼玉県日高市の武蔵丘車両検修場で「西武・電車フェスタ 2021 in 武蔵丘車両検修場」を開催した。恒例のイベントだが、昨年は全国一律に「緊急事態宣言」が出され、その中で準備することが難しく開催が見送られた。今年は感染対策を徹底しつつ、鉄道事業への理解を地域住民に深めてほしいと再び実施されることとなった。

例年、このイベントは1万人ほどの来場者があり、自由に入場できる形だったが、今回は入場者数を最大5000人に制限した完全事前申し込み制となった。会場への入場は11時以降・12時以降の2つに分け、「西武線アプリ」を使用した「電子入場券」を使用しないと入れないようにしている。

当日、筆者は同イベントに取材で訪れた。入場時は検温と手指の消毒を行って少しずつ会場に入る。体験イベントは多くの人が同時に参加する形のものは行わず、トラバーサー(電車を載せて移動する大型機械)の乗車体験など少数にしぼった。目玉だった、今年4月に定期運行を引退した「レッドアロークラシック」の撮影会は列に並んで交代で撮影する形で、こちらも人が密集することを避けるよう配慮されていた。

西武は今回、2年ぶりにイベントを開催したことについて、「西武鉄道をご利用のお客さまや沿線にお住まいの地域住民の方をはじめ、みなさまが電車に親しんでいただき、当社事業への理解を深めていただくために開催しました」と説明する。そのために入場者数の制限や完全事前申し込み制の導入など感染防止対策を徹底した。

完全事前申し込み制として入場者数を制限した西武のイベント(筆者撮影)

会場となった車両検修場のある埼玉県日高市は、「緊急事態宣言」のエリアではなく、「まん延防止等重点措置」も対象外であった。その状況を踏まえてこのイベントが開催できたといえる。さらにイベントの開催制限5000人を守り、会場内での飲食は一部を除き禁止している。現状で可能な範囲内で、極力例年に近い内容のイベントを行うべく工夫したわけだ。

なお、今回は事前申し込みにあたって、地元の飯能市や日高市(ともに「まん防」対象外)の住民をそれぞれ500人ずつ招待した。全体で5000人の参加者のうち、1000人は地元の人々となったわけだ。地域住民に理解を深めてもらうという主旨を考えると理にかなっている。筆者は「宣言」対象地の東京都調布市から県境を越えて行ったとなると、取材とはいえ申し訳ないような気持ちがした。

「お手軽企画」でも感染対策は徹底

一方、もっと人数を限定してイベントを行った例もある。京成電鉄の子会社京成トラベルサービスは、5月29日に「宗吾車両基地見学ツアー」を開催した。

このイベントは、空港特急「スカイライナー」AE形に東京都台東区の京成上野駅から乗車し、千葉県印旛郡酒々井町の宗吾車両基地までやってきて、その車両基地を見学しようとするものだ。9時前に京成上野駅を出発し、11時40ころに現地解散という行程だった。定員は176人で、実際には172人が参加した。ちなみに酒々井町は「まん延防止等重点措置」の対象外だ。

京成電鉄はツアーについて、「遠出を伴わないお手軽企画で気分転換を図っていただくことを目的に実施しました」という。開催にあたっては感染防止対策を徹底した。どんな対策を取ったのだろうか。

京成のイベントにおける感染対策は以下の通りだ。

1)開催場所における消毒(手を触れる場所を中心に出発前に実施)
2)受付時の検温実施(37.5度以上は参加の遠慮をお願いする)
3)密接防止のため参加人数を制限
4)添乗員等によるイベント中の密接防止の案内と注意喚起
5)参加者に適宜手指の消毒及びマスク着用のお願い
6)添乗員等のマスク着用、検温、手洗い・うがいの励行

前記の通り、京成はイベント実施にあたってかなり丁寧な感染対策を講じているといえる。京成によると「新型コロナウイルス流行後に実施したイベント列車などで、感染者が発生した事例はありません」としている。

西武にせよ京成にせよ、鉄道事業者はコロナ禍の中でも利用者やファンへのサービスなどといった点で、できるだけイベントを実施したいという考えがある。そして、相応の対策を取って実施にこぎつけていることがわかる。

一方、イベントを中止せざるをえない事情もある。

京阪電気鉄道は、「5扉車」として知られる5000系のさよならイベントを5月16日と同月29日に予定していた。イベントは、「5000系ありがとう寝屋川車庫洗車体験会」と題し、中之島駅からの臨時列車乗車、寝屋川車庫での洗車機通過体験、三条駅入替線の乗車体験といった内容だった。

緊急事態宣言で中止に

参加定員は各日140人で事前申し込み制だったが、このイベントは5月10日に中止が発表された。京阪によると、中止は「コロナ拡大の状況を鑑みて」ということだ。当初は5月11日までだった緊急事態宣言が延長され、大阪府・京都府は宣言下ではイベントの無観客開催(大阪)や開催自粛(京都)を要請していたため、実施が困難になったといえる。一時期の関西圏での感染拡大状況を考えると納得できる対応だ。

京阪電鉄の5ドア車両5000系。5月中に予定していたイベントは中止になったが、車両の運行終了時期も延期された(写真:あいらんど/PIXTA)

そもそも、当初は6月の予定だった5000系の運行終了自体も列車運用の見直しにともない、9月ころに延期になった。今後イベントを実施するかどうかは、「コロナ感染症の拡大の状況を見ながら可否を検討中」としている。

イベントは鉄道ファンが期待しているというだけでなく、鉄道会社にとっても多くの人に自社の事業を知ってもらいたい、また沿線利用者のファンを増やすきっかけにしたいという思いがある。オンラインイベントを開催するケースもあるものの、やはりファンは生の鉄道にふれたい。

コロナ禍はすでに1年を超え、大規模イベントなどは制限が続く。2020年は中止に追い込まれたケースも多かった。そんな中、鉄道各社は感染対策に苦慮しつつ、恒例のイベントの復活や、新たな形での実施を模索している。

いつになれば再び自由にイベントを楽しめるようになるのだろうか。コロナ禍が早く収束することを祈るほかない。

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