なぜ日経平均はNYダウに比べ「出遅れて」いるのか

「ワクチン相場」が本格化する条件は整いつつある(撮影:東洋経済オンライン編集部)

今年の4月初旬以降、個人投資家の方々を中心に「ニューヨークダウ(以下、NYダウ)は上がり続けているのに、なぜ日経平均株価は上がらないのか?」という質問をいただくことが多くなった。5月の後半以降は日経平均も戻り歩調を強めているが、今回のコラムではこれをとりあげたい。

4月を起点に差がついた

まず、以下の日経平均とNYダウ(ダウ工業株30種平均)の株価を比較したチャート(日足)をご覧いただきたい。

(出典:筆者作成)

2021年1月4日のそれぞれの株価(2万7258円、3万0223ドル)を100として、直近の6月11日まで日次終値ベースで折れ線チャートを描いてみた。緑が日経平均、赤がNYダウのチャートだ。

日経平均は、当面の戻りの限界が明らかになった4月5日の3万0089円(3番目の天井)が110.4(年初来10.4%上昇)だが、ここを起点にNYダウとの差が開き始めたことがわかる。まるでワニの口のようだ。日経平均は6月11日現在で106.2、NYダウは114.1となっている。

ではなぜ日経平均はNYダウに比べ出遅れたのか。3、4、5月の月次ベースで説明してみよう。

まず、3月の日経平均は、NYダウの前月比6.6%上昇(ちなみにTOPIX=東証株価指数も同4.8%上昇)に対して、同0.7%の上昇にとどまった。この主な理由は、日本銀行がETF(上場投資信託)の買い入れをTOPIX型のみとし、日経平均型ETFの買い入れを中止したことが大きい。

これまで株価を支えていた日銀による日経平均型ETF買いがなくなったことで、上値が重くなったとみるべきだ。もちろん、今後いつまでTOPIX型の買い入れが続くのかも気になるところだ。

日経平均の急落には独自の要因も

次に4月の日経平均は、NYダウの前月比2.7%上昇に対して逆に同1.3%も下落してしまった(TOPIXも同2.9%下落)。これはアメリカではジョー・バイデン大統領が3月30日に発表した巨大インフラ投資政策(「アメリカ雇用計画」)が大きかったいっぽう、日本国内では新型コロナウイルスによる3回目の緊急事態宣言の発出(4月23日発表、4月25日から5月11日まで)が重石となった。また企業決算ガイダンスも、期待されていた中国関連企業などを中心に想定を上回るほどではなかったことも理由に挙げられる。

さらに5月の日経平均は、NYダウの前月比1.9%上昇(TOPIXも同1.3%上昇)に対して、同0.2%の上昇にとどまった。この理由は、アメリカのインフレ懸念による長期金利の高止まりや、ビットコイン急落に加え、日本では世界の投資家のベンチマークになっているMSCIの定期銘柄入れ替えがあり、日本の銘柄が29銘柄除外になるなど需給面での影響を受けたためだ。

日経平均は5月11日から13日までの3日間の下落幅(終値ベース)はなんと2070円、率にすると7.0%の急落となったのは記憶に新しい。MSCIの銘柄入れ替えは5月12日に発表され、5月27日の終値で反映されたが、「新規採用ゼロ、除外29」の発表でマーケット参加者は約8200億円の資金流失が起こるとただちに想定、結果的に13日は需給不安から日経平均は2万7385円(ザラバ安値)まで急落した。

この日を起点に株価はV字型に反転し、5月の月間騰落率はなんとかプラスに転じたわけだが、このように3~5月の下落要因をみていくと、日銀のETF購入方針の見直しなど、構造的な要因もあるため、ひとくちに出遅れとはいえない部分があることを、ご理解いただけるのではないか。

さて、こういうと少しビックリされるかもしれないが、「日経平均はアメリカ株に対して必ずしも出遅れていない」とも言える。

以下は日経平均(緑)とナスダック総合指数(赤、以下ナスダック)を比較したチャートだ。

(出典:筆者作成)

ここでも2021年1月4日の株価をそれぞれ100としている。ナスダックは同日が1万2698ポイントなので、6月11日の1万4069ポイントは110.8(年初来10.8%上昇)になる。2つを比較すると、ナスダックと日経平均はほぼ連動しているようにみえる。

ナスダックは日経平均の「先行指数」?

3~5月にナスダックが日経平均と同じようなボックス圏の動きとなったのは、①アメリカの長期金利(10年国債利回りなど)が昨年夏をボトムに3月末にかけて急上昇してきたこと、②ビットコインが4月6万400ドルをピークに5月は3万ドル前後まで急落したことなどによる。

アメリカの10年国債利回り(NY終値ベース)を見ると、今年の1月4日時点は0.916%だったが、1月末1.062%、2月末1.437%、3月末1.743%と急上昇してきた。3月末に高値1.743%(NY終値ベース)をつけた以降は、6月3日の1.623%までは下限レンジである1.54%を割らずに1.60%近辺で高止まりしてきた。

ナスダックはS&P500やNYダウと比較して、PER(株価収益率)などの指標面が高いグロース株の構成比率が高い。日経平均もソフトバンクグループ、ファーストリテイリング、東京エレクトロンなどの値がさ株の構成比率が高い。そのため、アメリカの長期金利上昇にネガティブに反応するナスダックと日経平均は、今年1月以降、6月3日まで同じような値動きになっていたのだ。

今後、日経平均の行方を占うためには、アメリカの長期金利に加えてナスダックの株価動向にも、より注目したいものだ。直近では6月14日に終値ベースで最高値を更新した(1万4174ポイント)が、ザラバベースでの1万4211ポイントはまだ抜けていない。これを明確に抜くようなら、日経平均も2月高値である3万0467円を突破、3万0500円~3万0700円を目指す可能性が残っている。

日経平均も「ワクチン相場」を期待

足元では、6月4日以降アメリカの10年国債利回りは、同国の雇用統計をきっかけに6月10日にかけて1.442%まで下落した。こうしたなか、年初から同じ値動きをしていたナスダックと日経平均の株価の値動きがデカップリング(連動性がなくなること)し始めた可能性もある。

ナスダックは長期金利下落を素直に上昇で反応したが、日経平均の動きは鈍く、モミ合い(ほぼ横ばい)での推移となっている。これは、日本が米中冷戦に伴う地政学リスクを受けやすく、海外投資家などが日本株式への積極的な投資を控えてることも理由のひとつにあげられるかもしれない。イギリスでのG7を終え、欧米の先進国と日本がどのように中国と対峙していくのかについては注意深く見守る必要がありそうだ。

それでも、出遅れを解消できそうな要因も出てきた。足元では、日本でも遅れていた国内のワクチン接種がやっと軌道に乗り始めている。7月末の高齢者2回接種目標も視野に入り、10~11月の全希望者へのワクチン接種終了の目標も立てられた。マーケット参加者は、日本の「ワクチン(リ・オープニング)相場」に期待しているようだ。

なお、絶対的な値上がり益を意識するなら、やはりアメリカの株式(NYダウやナスダックなど)が大きく崩れないことが前提となるだろう。ただし現状ではアメリカ株よりも日本株のほうが割安とみており、下落リスクは限定的とみている。

筆者もさらなる日本のワクチン相場に期待したいが、個別ではここからはきめ細かな銘柄選択が必要になると思っている。慎重に投資すべき時間帯(5~9月)に入ってきたとみているからだ。それについては、過去2回のコラム「日経平均株価は『3月に売れ』だったかもしれない」「今年の日経平均株価の高値はいくらになるのか」をぜひお読みいただきたい。

なお長期投資の観点からは、あくまで理想だが、株価がコロナショック前の水準以下か、長期間低迷していた業種や銘柄のなかから、足元はもたもたしていても、今後マーケットコンセンサスを上回る実績を継続してたたき出す業種や企業に、分散してじっくり投資すべき時期に入ってきたと考えている。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

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