東芝、「株主への圧力問題」で判明した経産省の影

東芝の調査報告書で、経産省(右)と東芝が一体の関係にあることが明らかになった(写真はいずれも今井康一撮影)

イギリスの投資ファンドからの買収提案と車谷暢昭社長の電撃的な辞任から2カ月。落ち着きを取り戻したかに見えた東芝を、再び激しい嵐が襲っている。

2020年7月に開催された定時株主総会をめぐり、東芝が株主提案などを妨害したとされる問題で、会社法に基づく調査報告書が6月10日に公表された。

東芝と経産省は「一体」

報告書は、東芝の幹部と経済産業省幹部との生々しいやりとりを明らかにした。東芝幹部が、エフィッシモ・キャピタル・マネジーメントなどの大株主を「モノ言う株主(アクティビスト)」と見なし、その排除のために2020年5月に改正された外為法(外国為替及び外国貿易法)を利用しようとしたと指摘。

さらに、株主提案をさせないようエフィッシモに働きかけたり、東芝が有利になるように、経産省と一緒になってほかの大株主の議決権行使に影響を与えようとした。その結果、東芝の株主の権利が制限され、株主総会が公平に運営されなかったと結論づけた。

報告書を受けた東芝は6月14日、同25日開催の株主総会で会社側の社外取締役候補である太田順司、山内卓両氏の再任案を取り下げた。さらに、豊原正恭副社長、加茂正治上席常務の退任も決めた。

同日には永山治取締役会議長が記者会見を行い、陳謝した。東芝は今後、第三者による調査を行い、原因究明と責任の明確化を目指す。永山氏は取締役候補に残り、25日の株主総会で再任が適切か否か、株主の判断を仰ぐ。

報告書は図らずも、「東芝は、経産省といわば一体」という、経産省と東芝の親密な関係も白日の下にさらした。

具体的には、経産省幹部が東芝に対して株主への対応を指示したほか、幹部や経産省参与(当時)が株主に接触して圧力をかけたと指摘。その過程で得た情報を不当に東芝に流した、国家公務員法における守秘義務違反の疑いすらあると踏み込んだ。

経産省はこれまで日本企業に対してコーポレートガバナンスの推進を掲げ、制度設計を進めてきた。その提唱者がガバナンスの原理原則に反するような行動を取っていただけに、問題は根深い。

ところが、経産省の動きは鈍い。梶山弘志経産相は15日の記者会見で経産省として独自に調査する考えを否定。東芝に関する一連の言動も「経産省の政策として当然のことを行っているまで」と開き直った。

職員の守秘義務違反の疑いについても、「必ずしも根拠が明確ではない」と問題視せず、「国の経済安保上重要」という言葉を繰り返し、今後も東芝への外為法上の監督を続ける姿勢を示す。

車谷前社長と菅首相の関係

2015年の不正会計以後、人心一新を図ったはずなのに、東芝はなぜガバナンス上の問題を繰り返すのか。

「車谷氏もそれ以外の取締役も東芝の外部から来た。にもかかわらず不祥事が起きることに驚きを隠せない」。14日の会見では、アナリストからこんな意見も飛び出した。

東芝が選んだ社外取締役にも経産省の影がちらつく。そもそも車谷氏が社長に就任したのも、経産省の強い後押しがあったから。ある元社外取締役は、車谷氏を推薦したのは当時の経産省事務次官の嶋田隆氏で、その背後には菅義偉官房長官(現首相)の意向も働いていたと証言する。

東芝の調査報告書でも車谷氏と菅氏の会食が指摘され、このときに株主への対応を報告した可能性が高い。一連の株主への圧力行為はトップである車谷氏の主導で行われており、菅氏の関与が明確になれば、政治問題化する可能性もある。

25日の株主総会は波乱が避けられそうにない。永山氏らの再任案には投資助言会社が反対推奨しているほか、問題に直接関与した取締役候補だけを取り下げる対応に株主が納得するかわからない。「経産省との関わりなどに予想以上に踏み込んだ」(市場関係者)報告書に、株主の追及は必至だろう。

永山氏は14日、取締役としての監督責任を認めたうえで「責任を取る(辞任)よりも責任を果たす(続投)」と続投の理由を説明する。仮に永山氏が辞任したとして東芝の取締役会議長という「火中のクリ」を拾う人がいない現実も表している。東芝は株主総会後も取締役候補を探す予定だが、適任者が見つかる保証はない。

原子力など国家の安全保障に関わる事業を手がける東芝は、いや応なしに政官と関わらざるをえない宿命にある。だが、東芝に健全なガバナンスを取り戻すには、経産省との関係を見直す必要がある。

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