沖縄への緊急事態宣言 7月11日まで延長

解散か否か、「コロナ置き去り」の永田町狂想曲

4月8日に東京都へのまん延防止等重点措置適用の方針を表明し、質問に答える菅義偉首相(右端、写真:時事)

コロナ第4波への国民の懸念をそっちのけにして、永田町では衆院解散と内閣不信任案を絡めた不規則発言が飛びかっている。

「コロナより政局」というわけだが、「今の政治家の発想はまさに『永田町の常識は国民の非常識』だ」(有力政治学者)との批判を招いている。

今後の政治日程やコロナの感染状況からみて、解散権者の菅義偉首相が「伝家の宝刀」を抜くチャンスはすでに極めて限られている。にもかかわらず、政界ではもっともらしい解散日程を書き込んだ複数の怪文書が出回り、与野党双方に疑心暗鬼を広げている。

「不信任決議案なら解散」と明言

関西圏ではコロナ変異株が原因とされる感染の爆発が発生。首都圏だけでなく、全国に伝播するのは「時間の問題」(感染症専門家)とみられている。そうした中、与野党幹部の解散発言によって、「国民の政治不信は一段と拡大し、政府と国民が一体となってのコロナ対応もますます困難になる」(首相経験者)ことは避けられそうもない。

3月ごろから散発的に起こっていた政府与党幹部の解散絡みの発言を、一気に公然化させたのが4月6日の菅首相の発言だった。

民放BSの報道番組に出演した菅首相は、9月末までに予定される自民党総裁選挙の前に解散・総選挙を行う可能性を問われると、「当然これはありうるだろう」と語った。さらに、立憲民主党などが今国会で内閣不信任決議案を提出すれば、「(解散断行の)大義になる」と明言した。

「今はコロナの感染拡大阻止が最優先課題」と繰り返したうえでの発言だったが、政界ではすぐさま「五輪前解散もありうる」との臆測が広がった。

伏線は、3月末の「野党が不信任案を出せば直ちに解散で立ち向かうよう菅首相に進言したい」という二階俊博自民党幹事長の発言だった。立憲民主党の枝野幸男代表の「コロナ第4波を招けば内閣総辞職では済まない」との指摘や、安住淳同党国対委員長の「長期自民党政権に、われわれの考え方を伝える重要な方法だ。(不信任案提出の)準備をしたい」という発言への牽制とみられた。

二階氏周辺は「売られたケンカは買うのが当たり前」と凄み、菅首相がダメ押しした格好だ。これに対し、共産党の小池晃書記局長は、コロナ感染急拡大を理由に「今の時期に不信任案を提出する、解散するというのは適切でない」と二階、安住両氏らの言動を批判。

立憲民主の江田憲司代表代行も「与野党が不信任案を出す、出さないと議論していること自体がよくない」と語るなど、解散への怯えもにじませた。

もちろん菅首相の一連の発言については、与党内でも「単に党内の引き締めを狙ったブラフ」(公明幹部)と受け止める向きが多い。その一方で野党側が「下手に不信任案を出せば、解散を誘発する」と及び腰になったことで、自民党は「不信任案封じ込めの効果はあった」(国対幹部)とほくそ笑む。

解散時期を左右する4.25トリプル選

自民党幹部が4月解散・5月衆院選を示唆する解散発言を連発したことを受け、同党は3月22日の役員会で、二階幹事長が「(解散は)菅義偉首相の専権事項だ」として党幹部が発言することを控えるよう申し合わせた。ただ、その二階氏が「舌の根も乾かぬうちに堂々と解散発言を繰り返した」(自民幹部)ことで党内の不満も広がっている。

4月8日には、参院長野選挙区補欠選挙と参院広島選挙区再選挙が告示された。どちらも自民公認で公明推薦の与党候補と、立憲民主など主要野党の統一候補が激突する構図だ。

13日告示の衆院北海道2区補選と合わせた「4.25トリプル選挙」は、菅政権発足後初の国政選挙となる。10月21日の衆院議員任期満了をにらみ、選挙結果は菅首相の政権運営や解散時期をめぐる判断に大きな影響を及ぼすとみられている。

自民党内には、「トリプル選の結果次第では秋の総裁選で総裁を交代させ、総選挙を戦うための『菅降ろし』が現実化する」(閣僚経験者)と見る向きもある。だからこそ菅首相は「その前の解散断行に言及することで、党内の反菅勢力を牽制した」(同)というわけだ。

ただ、今後の政治日程を予測すると、菅首相にとっての解散時期の選択肢は限られている。

下村博文政調会長らが言及して波紋を広げた「連休前の衆院解散・5月23日投開票」説は、すでに消えたとみられている。「菅首相の訪米と日米首脳会談で政権浮揚を図り、連休前のデジタル庁創設法の成立を受けての解散」(自民幹部)との思惑だったからだ。

4月16日に訪米してバイデン大統領と初の首脳会談に臨む菅首相は、6日の民放番組で「初の対面での会談で互いの信頼関係をつくることが重要」と語った。ただ、対中国戦略も含め、会談が画期的な成果を上げられるかは不透明だ。

加えて、菅首相の肝いり政策のデジタル庁関連法案の成立は、政府・自民党の当初の目論見が狂い、連休前どころか5月中旬以降にずれ込みそうだ。同法案は6日に衆院を通過したが、参院の与野党協議で審議入りは14日となった。衆院での約30時間並みの審議時間を消化するには「1カ月以上かかる」(参院自民国対)とみられる。

念頭にある都議選との同日選

自民党幹部は「衆参国対幹部の連携不足」と憤るが、自民党参院側には、政府がまん延防止等重点措置の適用を連休最終日の5月5日までと決めた段階で、「5月の衆院選はなくなった」との判断があったとみられる。

そこで注目されるのが、今国会での野党の内閣不信任案提出の有無と、出す場合のタイミングだ。放送法改正案など重要法案の審議見通しなどを踏まえると、国会日程上は野党の不信任案提出が6月16日の会期末直前となる可能性が大きい。

もちろん、それまでにコロナの感染爆発による第4波が現実となって、政府が3度目の緊急事態宣言を余儀なくされれば、その段階の不信任案提出はありうる。ただ、その場合は「解散を打てる状況ではない」(自民長老)のは当然だ。

となれば、法案処理が決着する会期末に合わせた不信任案提出と、これを大義名分とした菅首相の解散断行が現実味を帯びる。二階氏は「不信任案が出た段階で即解散」と発言したが、7月4日投開票の東京都議選との同日選が念頭にあるのは間違いない。

ただ、「日程的にはかなり困難」(自民国対)だ。公職選挙法を踏まえると、「解散から衆院選投開票日まで22日間以上が必要」(総務省)とされ、解散が6月16日かその直前となれば、投票日は都議選投開票の1週間後の7月11日にせざるをえない。

ところが、7月11日の衆院選投開票となれば、手続き上から特別国会召集は同月20日以降となり、自民党が勝った場合でも首相指名・組閣が東京五輪開幕の23日に近接しかねない。現在の閣僚を全員再任しても、五輪主催国として「開幕直前まで職務執行内閣で対応するのは国際儀礼上もありえない」(五輪組織委幹部)との指摘が多い。

こうしてみると、「現状では東京五輪を開催する限り、菅首相の解散の選択肢は五輪後しかない」(有力閣僚)ことになる。その場合、自民党総裁選と衆院解散の順番が最大の問題となる。

菅首相は解散時期に絡めて3月には「9月までの総裁任期」に言及し、さらに4月6日には「総裁選前の解散」に踏み込んだ。これを受け、自民党内には「9月5日の東京五輪・パラリンピック閉幕直後の解散、10月3日投開票を狙っている」(岸田派幹部)との見方が広がった。

ただ、そのためには総裁任期満了の9月30日までに実施するよう党則などで定められている自民党総裁選を、1カ月程度延長することが必要だ。3年ごとに行われる総裁選は、2020年9月の総裁選とは違って党員・党友も参加する本格総裁選とするよう規定されている。

コロナ次第で菅首相「五輪花道論」も

今回も有権者となる党員・党友の資格審査などの手続きのため、7月末までに総裁選日程を決めることが必要だ。さらに総裁選の規程上、告示から投開票日まで12日間以上の選挙期間が必要で、通常は9月上旬告示、20日前後の投開票を想定している。

もちろん、衆院任期満了と絡むことを理由に、「状況次第で1カ月程度の総裁任期延長」を確認しておけば、菅首相サイドが狙う「五輪閉幕直後の解散で勝利して、総裁選は無投票再選」(側近)とのシナリオも実現できる。

ただ、7月の総裁選管理委で総裁選日程を決めれば、党内でそれに向けた有力候補らの出馬の動きが本格化することは確実だ。それと並行して、コロナ禍や東京五輪開催の状況次第では菅首相の「五輪花道論」が浮上し、総裁選先行論が拡大して菅首相の解散への手足が縛られる可能性もある。

こうしてみると、菅首相らの解散発言は「党内や野党に対する恫喝のための言葉の遊び」(自民長老)ともみえる。最新の世論調査でも五輪前解散を支持する声は極めて少数で、圧倒的多数が任期満了近くの衆院選を求めている。

「コロナ禍は第3次世界大戦」(安倍晋三前首相)という非常時に、菅首相ら自民党最高幹部が政局優先で解散発言をもてあそぶ。そのこと自体が「国民無視」(首相経験者)と批判されても仕方がない。

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