沖縄への緊急事態宣言 7月11日まで延長

菅首相、無策の果ての「ワクチン1本足打法」

緊急事態宣言の解除を決め、記者会見する菅義偉首相(左)と政府諮問委員会の尾身茂会長(右)(写真:時事)

政府は3月18日、1月から首都圏などで実施されている緊急事態宣言を21日を期限に全面解除する方針を決めた。菅義偉首相は18日夜の記者会見で、「病床ひっ迫度も改善され、解除の条件が整った」と判断の正当性をアピールした。

ただ、宣言対象の4都県では、ここにきて新規感染者数が増加し始め、先行解除された関西圏のほか、宮城県などでも感染再拡大が目立っている。政府諮問委員会の尾身茂会長も「リバウンドの可能性は極めて高い。解除した後の対策が重要だ」と危機感を訴える。

リバウンド対策は「ほぼ無策」

菅首相は宣言解除決定後の記者会見で、感染防止対策の徹底を改めて呼び掛けるとともに、変異ウイルスへの検査拡大や医療体制強化など5本柱のリバウンド防止策を打ち出した。しかし、「いずれも従来の延長線のものばかりで、ほぼ無策に等しい」(立憲民主幹部)と効果を疑問視する声が相次ぐ。

宣言解除の決断は、再延長後の2週間、新規感染者数が下げ止まりから微増に転じたことで「宣言の限界を思い知らされた」(同)ことが背景にあるとされる。菅首相も「だらだら続けても意味がない。あとは国民の協力とワクチン接種の迅速化が頼みの綱」(周辺)と開き直っている。しかし、下駄を預けられた格好の国民には不安と不満が募る。

2020年4~5月以来、二度目となった今回の緊急事態宣言は二度の期間延長を経て、約2カ月半での全面解除となる。政府は感染対策を当面は継続し、首都圏の飲食店への営業時間短縮要請は午後9時までとし、協力店舗には1日4万円が支給される。

ただ、宣言解除直後には都内の桜が満開となって、花見による人出の増加が想定される。年度末前後には学校の卒業式や入学式、企業の歓送迎会も相次ぎ、「都心部などでの人の動きが急拡大するのは確実」(政府筋)とみられている。菅首相は記者会見で「できることはすべてやり抜く」と強調したが、「リバウンドは必ず起こる」(感染症専門家)との声が出ている。

宣言解除の決定を受け、菅首相は18日午後7時から首相官邸で記者会見した。冒頭、宣言対象となっている首都4都県について、感染レベルでの4段階の指標の中で政府が宣言解除の目安としたステージ3相当という基準を「安定して満たしており、解除の判断をした」と胸を張った。

一方、感染の現状は「新規感染者数は横ばい、微増の傾向がみられ、人出が増加している地域もあることから、リバウンドが懸念されている。変異株の広がりにも警戒する必要がある」との危機感も示した。

5本柱で感染拡大を防止

菅首相が宣言解除後の対応として強調したのは、①飲食店などでの感染対策徹底、②変異株の監視体制の強化・拡大、③感染拡大の予兆探知のためのモニタリング検査、④ワクチン接種の促進、⑤新たな感染拡大に備えた医療提供体制の充実・強化、の5本柱だ。

菅首相は「再び宣言を出すことがないように5つの対策をしっかりやるのが私の責務だ」と、自治体との連携を強調。感染再拡大時に緊急事態宣言に準じた対策が可能となる「まん延防止等重点措置」については、「必要であれば実行に移すのは当然だ」と語った。

記者団からは「感染が増えているのになぜ解除するのか」「リバウンド防止はできるのか」などの厳しい質問が相次いだが、菅首相は「5本柱の実施で何としてもリバウンドを防ぐ」などと答弁メモを読み続け、時には笑顔をみせる余裕も見せた。会見はこれまで通り時間を理由に打ち切ったが、強い抗議の声も出なかった。

これに先立ち、菅首相は18日午後に衆参両院の議院運営委員会で、宣言解除方針を事前報告した。これに対し、立憲民主党の枝野幸男代表は「すでにリバウンドが始まっており、解除は時期尚早」と指摘したうえで、「第4波を招けば内閣総辞職では済まない」と追及。菅首相は「1日も早い感染収束に全力を尽くすのが私の責任」と繰り返すだけで、第4波が起こった場合の政治責任に踏み込むことは避けた。

一方、対応が注目された4都県知事も18日に宣言解除後の対応などを協議。その結果、飲食店の営業に対する時短要請を段階的に緩和し、解除翌日の3月22日から31日までは閉店時間を現在の午後8時から午後9時まで遅らせる方針を決めた。その場合、酒類の提供は午後8時までとし、応じた店舗への協力金は現在の1日当たり6万円から4万円に引き下げることも確認した。

そうした中、小池百合子知事は18日、都内で時短要請に応じていない飲食店(27店)に、コロナ特別措置法に基づく時短営業の命令を出した。全国でも初めての強制力のある命令で、従わなければ30万円以下の過料を科す方針だ。

小池氏は今回の宣言解除については最後まで態度表明を避けた。4都県知事の間で再延長するか、それとも解除なのかで足並みが乱れたためだが、「今回は政府に下駄を預けることで、リバウンドした場合の責任も回避したい」(都庁関係者)との思惑もにじむ。解除直前になっての時短命令も、「小池流の政治手法」(同)とみる向きが多い。

そこで注目されるのが関係者の間で「マンボウ」と呼ばれるまん延防止等重点措置だ。2月に成立したコロナ対策改正特措法に盛り込まれたもので、緊急事態宣言下でなくても都道府県知事が飲食店などに時短営業を命令することが可能。違反者への過料など、一定の強制力も持つ。

本来、緊急事態宣言発令が目前となった場合の措置とされていたが、日本医師会の中川俊男会長は、菅首相が宣言解除方針を表明した17日の記者会見で、「政府は、まん延防止等重点措置を(宣言の)解除と同時に適用すべきだ」と主張した。同日に東京の新規感染者数が400人を超えたことを踏まえたもので、小池氏にとっても「マンボウがこれからの政府との駆け引き材料になる」(自民幹部)との見方も広がる。

花見の人出が感染拡大を招くのか

他地域でも感染再拡大の兆しがみられる中、宣言解除後は全国での新規感染者数の推移が政府や自治体の対応に大きな影響を及ぼす。1年前には、「3月下旬の3連休の人出が、その後の感染爆発を招き、緊急事態宣言につながった」(政府筋)。特に国民が待ち受けている花見の季節は「感染拡大に直結しかねない魔性の桜」(感染症専門家)との声も出る。

そうした中、菅首相の強気にもみえる態度は「ワクチン接種で1年前の悪夢再来は防げる」(政府筋)との強い期待と自信からとされる。今後の菅首相のコロナ対策は「ワクチンの一本足打法」(閣僚経験者)というわけだが、肝心の高齢者への接種は自治体での混乱が日増しに拡大している。

19日の参院予算員会集中審議では、コロナや総務省違法接待問題での野党の追及に、菅首相も防戦一方だった。ただ、菅首相にとって身内のスキャンダルとなった違法接待報道は、ここにきて「陰に隠れ勝ち」(有力紙幹部)になっている。

今夏の東京五輪開催に向け、25日には福島を起点とした聖火リレーがスタートする。その直後には前半国会の最重要課題となる2021年度予算も成立。4月9日には菅首相が訪米し、バイデン大統領との日米首脳会談も想定されている。実現すれば、アメリカ大統領の対面による初の首脳会談で「菅外交の最初の成果」(外務省幹部)ともなる。

こうしてみると、宣言解除以降は「政治日程上も反転攻勢の季節」(側近)となる。ただ、「感染第4波となるリバウンドの有無が政局の最大の焦点」(自民長老)であることは避けられず、背水の陣で身構える菅首相にとって「当分は薄氷を踏むような政権運営」(同)が続きそうだ。

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