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在宅勤務で「残業代が出ない人」が知るべきこと

在宅勤務が当たり前となりつつ昨今、働き方が変わるとルールや制度も変わるのでしょうか? よくある3つの疑問を紹介します(写真:metamorworks/PIXTA)

2度目の緊急事態宣言が発令され、再び在宅勤務をはじめとしたテレワークがメインになる人が増えています。

満員電車でもみくちゃにされながら毎日会社へ通勤し、会社のデスクに座って仕事をすることは、もはや当たり前ではなくなっています。

在宅勤務の働き方に関する3つの疑問

こうした働き方の変化に伴い、今回は在宅勤務をやっていて、疑問に感じそうな3つのことについて、解説していきたいと思います。

1. なぜか残業代が払われなくなったが…?

在宅勤務の労働者も労働基準法(以下、労基法)が適用されるため、残業が発生すればその時間に応じた残業代は当然もらえます。

では、在宅勤務になって、なぜ残業代がもらえなくなってしまうケースがありうるかというと、会社が在宅勤務の労働者に対して、「事業場外みなし労働時間制度」を採用した可能性が考えられます。

労働者といっても職種によって働き方はさまざまであるため、労基法では労働時間の管理方法について、いくつか制度を設けています。

「事業場外みなし労働時間制度」は、直行直帰が多い営業職や出張のときなど、会社が労働者の労働時間を細かく把握できない場合に適用できる制度です。実際に働いた労働時間に関係なく、あらかじめ「決められた時間を働いたものとみなす制度」になっています。

そのため、例えば、就業規則等でみなし労働時間を8時間としているケースでは、6時間しか働いてない日でも、逆に10時間働いた日であっても、労働時間は実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ就業規則等で決められた8時間としてみなされることになるわけです。

ところで、この「事業場外みなし労働時間制」が在宅勤務に対して、必ず適用できるかというとそうではありません。

なぜなら、「事業場外みなし労働時間制」は、「会社の具体的な指揮監督が及ばず、会社が労働時間を算定し難い場合」に限り、適用できるからです。

具体的には、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」において、2つの要件が示されており、

①情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態になっていないこと
②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと

が必要となっています。

なので、ずっと通信が接続されていて労働者が勝手に回線を切断できず、メールなどで連絡があれば即対応しなければいけない状況で仕事をしているようなケース。また、裁量もなく常に細かい指示を受けて仕事をしているようなケースでは、「事業場外みなし労働時間制」は適用できないことになります。

したがって、もし上記のような働き方で、残業代が払われなくなった場合は、問題がある可能性があるので、まずは会社のルールを確認し、人事部に相談してみてはいかがでしょうか。

在宅中の労災は適用されるか

2. 自宅でケガした場合でも労災の対象になる?

通常、労働者が仕事中にケガをした場合は、労働者災害補償保険(以下、労災)が適用されます。しかし、在宅勤務時に階段でつまずいて転んで骨折してしまったケースなどのように、在宅勤務時にケガや病気となった場合に労災が適用されるでしょうか。うっすら疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。

このところ、在宅勤務中に転んでケガをしたケースや、ずっと固いイスに座りっぱなしで腰痛になってしまったケースなど、在宅勤務特有の労災手続きもいくつか見られるようになってきました。

そもそも、労働者の病気やケガが、労災(業務上災害)として認められるためには、

①業務遂行性
②業務起因性

が認められる必要があります。

まず①の「業務遂行性」とは、会社の支配、管理下にあったかどうか。つまり、会社で業務をしているときはもちろん、在宅で業務をしているときなども会社の支配管理下にあるので、この業務遂行性が認められることになります。

次に②の「業務起因性」とは、病気やケガの原因が業務であること。例えば、飲食店で調理している最中に手を火傷したような場合は、業務が原因であることが明白で、業務起因性が認められます。

仕事中に風邪を発症したり、持病の貧血によりめまいで倒れて入院したケースなど、仕事中にたまたま病気が発症したような場合には、業務起因性が認められないことになります。

一方、在宅勤務時は自宅ですので、仕事中に私的行為がどうしても紛れ込んできます。

例えば、在宅勤務中に雨が急に降ってきたので、洗濯物を取りに行った最中に階段で転んでケガをした場合などです。

こういった私的行為中にケガなどをした場合はあくまでも業務が原因でケガをしたわけではないため、労災は認められません。

なお、在宅勤務でずっと座りっぱなしで腰痛になったようなケースは、本人の特質もありケースバイケースで何とも言えませんが、一般の労働者が同じような環境で仕事をしていたら、腰痛になるような状況かどうかという視点で、労働基準監督署が調査のうえ、判断することになります。

通勤手当が支給されなくなった場合

3. 在宅勤務で社会保険料が変わってくる?

在宅勤務によって会社へ通勤する必要がなくなったり、会社へ出勤する頻度がかなり少なくなったため、通勤手当を従来どおり支給しなくなる会社が増えています。

そもそも、通勤手当については、法令などによって、支払いが義務付けられているものではありません。あくまでも、会社が自社のルールブックである就業規則に定めたルールに従って通勤手当を支給しているだけです。

したがって、就業規則において、通勤手当が「通勤に係る費用に対して支給する」趣旨である場合は、実際に通勤行為に対してその実費相当分を支払うことになるので、在宅勤務に伴って通勤しなくなった分は原則支給されなくなるということです。

ところで、在宅勤務で、通勤手当が少なくなった方は社会保険料が下がる可能性があります。なぜなら、社会保険料は標準報酬月額(ひょうげつ)という仕組みで計算されていますが、この標準報酬月額は通勤手当を含めて計算されているからです。

なお、「ひょうげつ」とは、社会保険の事務処理を簡略するために考えられた仕組みで、給与をおよそ1万円から6万円の幅で区分した等級であり、健康保険は139万円、厚生年金は65万円が上限になっています。

社会保険のあらゆる場面で使われる重要なキーワードで、自分の「ひょうげつ」がわかればいろいろな計算ができます(詳しくは過去記事「給与が減ったと思ったら「この表」を見よ!」をご覧ください)。

例えば、静岡から新幹線で通勤していた場合は、定期代が1カ月13万6330円になるので、月給が30万だった場合は、月給30万円に13万6330円が加算され、43万6330円が報酬月額となり、等級表に当てはめると、ひょうげつは44万円となります。

そのため、社会保険料は、健康保険料が月額2万1714円(協会けんぽ東京支部R2年度〈介護保険料なし〉)、厚生年金保険料が、月額4万0260円になります。

一方、在宅勤務で通勤手当が0円になった場合は、ひょうげつは定期代を含まない月給30万円として計算されます。健康保険料が月額1万4805円(協会けんぽ東京支部R2年度〈介護保険料なし〉)、厚生年金保険料が月額2万7450円になるので、月額1万9719円も社会保険料が安くなることになります。

もちろん、社会保険料が安くなるぶん、ケガや出産時などの所得補償や将来の年金額も下がることになるので、その点は一応押さえておいてください。

なお、通勤手当が変更されたタイミングにもよりますが、多くの会社は10月給与から社会保険料が見直されます。ご自身の給与明細を一度、確認してみてはいかがでしょうか。

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