余韻続く「バチェロレッテ」予想外の"真の勝者"

「バチェロレッテ・ジャパン」の番宣に使用されたこのカット。実は萌子さんが手に持っている3人が、最終的に残った3人だったと、のちに話題に・・・(イラスト:momokoharada)
コロナ自粛の影響で、近年になく映像作品に親しむようになった人が増えています。より日常が豊かになるような、映像作品の楽しみ方とは? コラムニストの佐藤友美(さとゆみ)さんが、ドラマと日常の間に、華麗に接線を引いていきます。
今回のテーマは『バチェロレッテ・ジャパン』です。ネタバレを含みますので、まだご覧になっていない方はどうぞご注意ください。

試合に負けて勝負に勝った人は・・・

最終回の配信から半月以上経っても、まだまだ話題の『バチェロレッテ・ジャパン』。

佐藤友美さんによる新連載です

数々のメディアで出演者たちのインタビューが掲載され、番組の裏話が明かされるにいたって、「2度見・3度見」族や、今から参戦する「追っかけ見」族が、後を断ちません。

映像業界で働く友人いわく、

「いま、どこの動画配信媒体の打ち合わせにいっても、『バチェロレッテ』のヒットに続けという空気感。久しぶりの話題作」

なのだとか。

先日は落合陽一氏が進行するNews Picksの「WEEKLY OCHIAI」内でも、この番組についての討論会が行われるなど、その影響は、エンタメ界を超えてビジネス文脈にも及んでいます。

さて。この番組に対して数々のレビューが散見される今日、いまさら何かを語るのも気が引けるところなのですが。番組が終了して多少の時間が経った今だからこそ感じることを、ちょっと書きたいなと思うのです。

それは何かというとーー。

結局、本当の勝者は誰だったのか、ということです。

婚活リアリティバラエティ番組『バチェラー』の男女逆転版として、はじめて女性が男性を選ぶ番となった『バチェロレッテ・ジャパン』。

すでにご存じの方も多いと思いますが、この番組、主役である福田萌子さんが「最終的に誰も選ばない」という、前代未聞の決断を下したため、勝者不在の幕切れとなりました。

だが、しかし、なのですよね。

番組出演者、とくに後半戦まで生き残った男性陣の、後追いインタビュー記事を読んだり、さまざまな露出を見たりするにつけ、

「あ〜! 試合に負けて、勝負に勝った人が結構いるなー」という感想をいだくにいたりました。

『バチェロレッテ・ジャパン』に出演するためには、基本的に、2カ月のスケジュールをまるまる空けなくてはならないそうです。これは、社会人男性にとって相当な負担と覚悟が必要なことでしょう。

しかも、番組を通しで見ているとわかるのですが、このオーディションの時点では、自分たちが争奪戦をくり広げる相手、バチェロレッテの福田萌子さんに関して、ほとんどの情報が与えられていなかったそう。

だから、出演を決める際、多くの男性は「番組出演によるメリット」と「2カ月の休職」を天秤にかけて、メリットを感じたからこそ出演をしたと思われます(もちろん、この時点で萌子さんに一目惚れして参加を決意したという可能性もあります)。

2カ月休職の費用対効果は?

そして、ちょっといやらしい言い方に聞こえたらゴメンナサイだけれど、実際に、この番組に出ることによって、知名度があがり、本業にもいい影響が出た男性が少なからずいると感じます

とくに、最後のほうまで残ったメンバーに関しては、いまや売れっ子タレントも真っ青の取材&出演オファーが相次いでいるようです。

例えば、もともと歌手として芸能活動をしてた當間ローズさん。彼は、番組内で萌子さんに捧げる歌を披露していましたが、その後、今月11日に新曲「Falling for you」をリリースして、話題になっています。

ライバルだった黄皓(こう・こう)さんが、ローズさんのピアノ演奏で熱唱する動画も公開され、『バチェロレッテ』ファンを喜ばせていました。

その黄皓さんは、三菱商事→親御さんの会社を継いだのち→フィットネス会社を立ち上げている実業家。

番組終了後、黄皓さんがプロデュースしている「フィットネスつきマンション」が、再び注目を集めています。これは、おそらく萌子さんが番組内で職場訪問していた際に進行していたプロジェクト。もし、コロナの影響がなく、当初のスケジュールどおり春から夏にかけて配信されていれば、ちょうど最終回直後くらいにリリースされていたはずの物件でしょう。

この原稿を書いているちょうど11月18日にも、新会社の設立が発表されました。

黄皓さんの名前だけではなく、フィットネス事業や不動産業とのコラボを行う黄皓さんの会社も、急激に認知度をあげていると思われます。

そして、杉ちゃんこと、杉田陽平さん。

「この反響も、いつまで続くのか、一時的なモノだとはわかっていても、今は、日に日に数が増えて、多くなっていき、問い合わせの数が予想を越え読み切れない状態が続いています」(杉田陽平official blogより)と、アメブロに近況をアップした杉ちゃん。出演者の中でも、最も環境が変わった人ではないでしょうか。

もともとアーティストとして知られた存在であった杉ちゃんですが、『バチェロレッテ』の出演によって、よりファン層を拡大しています。

先日は、杉ちゃんに届いた山ほどの誕生日プレゼントを開封するYouTube動画がアップされ、なんだか複雑な思いになったのは私だけでしょうか。

そのYouTubeも7日間で3万人に登録されていたりします。

他にも、番組登場時の職業はカフェ店員だった“ちゃみ”こと北原さんは、現在料理研究家としてそのレシピが話題になっていますし、番組終了後も北海道に帰る気配のないマラカイさんはアパレルブランドを立ち上げるなど、活動の幅を広げている様子がわかります。

2カ月の休職に見合うリターンをいちばん大きく受け取ったのは、いったい誰だったのでしょうか

余談ですが、スーツテイラーとしてスーツのよさを世界に知らせたいと言っていたマッキーこと牧野さんは、現在、番組最後に謎に漏らしたホテル経営ではなく、フィットネス事業を立ち上げています。この話、個人的に、じわじわくる。

男同士の友情コラボはこれからも続く?

番組によって彼らが得た財産は、知名度やファンだけではないように見えます。

その後の対談記事や、それぞれのSNS投稿を見ているとわかるのが、番組内ではライバルであった男性同士に強い絆が生まれているということです。

番組では、萌子さんが彼らに与えた影響にフォーカスがあたっていましたが、それ以上に男性同士もお互いに影響を与え合っていたことが、最近の後追い記事からわかります。

これは番組終了後の裏話として披露されたエピソードですが、実はロケ収録最中は、全員ケータイ電話を没収されるのだそうです。

なので、「男性同士、ロケ中におしゃべりしようと思ったら、ホテルの部屋宛に手紙を届けるしかなかった」のだとか。そこで、毎日文通(!)をするようになって、急速に仲が良くなったメンバーもいたそうです。

確かに、番組中、男性だけが集まっているシーンで、突然あだ名で呼ばれるようになった人が出てきたり、妙に仲の良さが深まっている雰囲気が出ていたりと、視聴者が知らない時間を感じさせるシーンがあったのですが、そんな背景があったのですね。

『バチェロレッテ』の配信終了後も、男性出演者同士のつながりを感じさせる投稿が次々とアップされています。

これはひょっとしたら、萌子さんが「誰も選ばない」という選択をしたことも関係あるかもしれません。結果的に、男性陣は一律、「勝者不在」のフラットな立ち位置になったからです。

おそらくこれから、男性出演者の間で、さまざまなコラボレーションが生まれていくことでしょう。

番組内では、選ぶ立場だった萌子さん。でも、番組終了後は、選ばれる立場だった物同士が、次の人生をスタートしている……。

これもまた、リアリティショーの、リアルなところです。

その人の人生にとって、ある出来事が、「起承転結」のどのフェーズだったのかは、死ぬときまできっと、わからないものだと感じます。

『バチェロレッテ』という番組内では、いったん起承転結の「結」まで描かれた物語。でも、実生活においては、それが「転」のタイミングだったり、またある人にとっては「起」のタイミングだったりしたのかもしれない。

そんなことを、最近、考えています。

現場からは以上です。

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