日本の女子高生が「中国コスメ」にハマる理由

中国国産ブランドの「花西子」。日本でもインスタグラムなどで注目されている(写真は花西子のHPより)

去年から今年にかけ、日本の女子高生の間では「チャイボーグ」という言葉が流行っている。チャイボーグとは、「チャイナ」と「サイボーグ」を掛け合わせた造語で、サイボーグ並みに人間離れした美しい女の子たちという意味を指す。深みのある真っ赤な口紅を引くなど、ハッキリしたメイクが特徴だ。

マーケティング研究機関、TT総研の「現役女子高生の2020年トレンド予測および2019年下半期トレンド」では、アイテム部門で「チャイボーグ」がトレンド入りを果たした。

メイクの流行とともに、中国メーカーのコスメにも注目が集まる。インスタグラムやツイッターでは、「花西子」(ファ シー ズー)など現地ブランドの鮮やかなパッケージを写した写真が続々投稿されている。

かつては人気が無かった中国製コスメ

中国現地でも、「メイド・イン・チャイナ」の人気に火がついている。中国では長らく「ロレアル パリ」「メイベリン」「資生堂」といった外資のビッグネームが人気を博してきた。海外製品は高品質であることや研究開発の先進性を理由に支持を受けていたためだ。一方で国産品は「偽物が多い」「質が悪い」と捉えられる風潮があった。

だが、2017年頃を境に潮目が変わり始める。中国現地でも質が高く、かつ安価な化粧品が数多く登場し始めたのだ。中でもオンライン発のメイクアップブランド「完美日記(Perfect Diary)」を運営する逸仙電商は創設からわずか3年の昨年9月に、評価額10億ドル(約1060億円)以上のユニコーン企業となると、今年4月には追加1億ドル(約106億円)を調達して評価額20億ドル(約2120億円)まで駆け上がった。まさに「チャイニーズドリーム」と言える。

市場調査会社のカンターとテンセント広告が共同で発表した「2019テンセント国産美粧洞察レポート」によると、2018年の時点で市場シェアの56%を中国国産品が占めたという。実際、昨年の独身の日(W11)のTモールの美容ブランドランキングでは、トップ10のうち4ブランドが中国ブランドだった。

新興の中国メーカーは特に1990年代生まれの「90後(ジューリンホウ)」と呼ばれる若者を中心に支持を集めてきた。彼らを取り込めたのは、中国メーカーの化粧品が、質が良くて安価になっただけではなく、他にもいくつかの要素がある。

中国では主にオンラインで化粧品が購買されている。新興の中国メーカーの多くも実はオンライン発である。中国化粧品メディアC2CCとリテールテック企業の有賛が発表した「2020年美容業界の発展動向インサイト」によると、これまでのテレビやタオバオ(アリババが運営する現地EC)といった場で行われていた化粧品マーケティングは、2018年頃からソーシャルプラットフォームに移行。短時間動画やライブコマースなどを用いてKOL(インフルエンサー、Key Opinion Leader)のコンテンツを発信している。

また現地では、「中国版インスタグラム」と言われるRED(小紅書)や、メッセージアプリのWeChat(微信)で美容情報が広く発信されている。消費者の多くはタメになる情報や口コミを求めてアプリを開き、KOLだけでなく一般ユーザーの使用した感想を得ている。

アニメやドラマ、タピオカ店とコラボも

そこで中国メーカーも、SNS上でさまざまなコンテンツを発信している。例えば前述の「完美日記」はWeChatでトークグループを作り、顧客と直接繋がっている。日本でも企業がLINEなどを使用してユーザーへメッセージを送ることがあるが、「完美日記」の場合は双方向のコミュニケーションだ。かつ送信されるメッセージは宣伝だけでなく使用方法や美容テクニックなどのコンテンツも多い。濃厚なコミュニケーションでファンの心を掴み、リピーターを育てている。

紫禁城(故宮博物院)もコスメを発売している(写真:故宮博物院のTモール旗艦店サイトより)

さらに新規客を獲得する方法として、外部とのコラボレーションなども積極的に展開している。例えば昨年は、北京の世界遺産・紫禁城とのコラボアイテムが複数のブランドから登場した。これは紫禁城600周年というアニバーサリーに絡めた物であったが、ちょうど若者の中では「国潮」と呼ばれる伝統文化を重んじるトレンドが起こっており、まさに伝統の象徴である紫禁城に惹かれる人が多かったことも原因の1つと言える。

最近ではスキンケアの「Winona」が中国郵政とコラボしたことも話題になった。これは国産品と国の輸送機関という国の力が結びつき、新型コロナからの復興の光となるというコンセプトで、注目を集めた。このほかにも、アニメやゲーム、ドラマなどのコンテンツや、地元民に愛されるレストランやタピオカ店とのコラボも出てきている。

こういったマーケティングや商品開発にはビッグデータが活用される。データを活用して傾向や対象を絞ったり、次の商品の構想を練ることは海外ブランドも起こっていることだ。

一方で中国メーカーは、消費者とのコミュニケーションもより重視している。「完美日記」はおよそ1000人いる従業員の平均年齢は24歳だ。ターゲット層とコンテンツ制作を行うチームが同年代であり、消費者が求める物を熟知している。またメイクアップ製品が人気の「花西子」は販売前のABテストから販売後まで消費者へのアンケートを回し続け、消費者の声に沿って短期間のうちに製品を改良して発売している。

日本でも「チャイナコスメ」を販売

物と情報が溢れるオンラインでファンの心を繋ぎ、さらにファンの心を理解して改善しつづける中国の化粧品は、品質からパッケージデザイン、コンテンツに至るまで洗練されたものが多い。

その製品力は海を越えて話題となっている。中国でも人気の高いコスメブランドの「ZEESEA(ズーシー)」は日本のプラザ(PLAZA)で展開を開始し、大きな話題となった。今後も中国化粧品の上陸は続く気配がある。

長引く新型コロナでインバウンドやトラベルリテールの売り上げ回復が見込めない今、日本の企業にとっては中国市場、国内市場ともに注力したいところだ。その市場をじわじわと食っている中国メーカーは、もはや見過ごすことのできない存在である。

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