社長が語る、乗客激減「いすみ鉄道」の生きる道

いすみ鉄道の現状はどうなっているのか(筆者撮影)

新型コロナウイルスは鉄道にも大きな影響を与えている。特に地方鉄道は観光列車運行を休止し、定期外旅客が激減した。イベントも大半が中止となっている。

千葉県は緊急事態宣言が最も長く発令された地域の1つで、大きな影響を受けている。地方鉄道の現状を伝えるべく、千葉県を走る第3セクター鉄道・いすみ鉄道の古竹孝一社長に話を聞いた。

利用状況は10分の1に激減

――新型コロナは、利用状況にどのような影響を与えましたか?

沿線の学校休校の影響を受けました。また観光もストップしました。影響は相当なものです。普段の利用が10だとしたら、1くらいです。

――緊急事態宣言中はどんなお客様がいすみ鉄道を利用していたのですか。

いつも乗っているおばあちゃんだけということもありました。クルマで来てちょっとだけ様子をのぞいて帰るというお客様もいました。ただ、そうしたクルマのお客様の反応を見ると「ここにいすみ鉄道がある」ことが、お客様の認識の中で大きいと感じるのです。

――コロナ禍で気づいたことはありましたか?

ローカル線がどの程度地域の足になっているのか、通学と観光の比重がどれだけ高いのかをあらためて実感しました。日常の連続では気づかないことも見えてきました。たとえば、平日と土休日に出社する社員数の比率はこのままでいいのかなどです。

今までも台風の被害はありましたが、それまでしてきたことを「これでいいの?」と見直すことはありませんでした。新型コロナは「今までと同じやり方」では乗り越えられず、「これからすべきこと」を考えるいい機会になりました。

――社員の仕事や雇用で変わった部分はありますか。

減った仕事もありますが、逆にフェイスブックやツイッターで発信してもらうなど、今までの仕事量が1だとすると、それを頑張って1.2にしましょうと指示しています。

いすみ鉄道の古竹孝一社長。1971年香川県生まれ。高松市でタクシー事業や自動車関連サービス事業などを行う6社の代表取締役を歴任。いすみ鉄道の社長公募に応募し、2018年から同社社長(筆者撮影)

全体の経費としては減らしていますが、集客のキーとなる部分、商品開発につながる仕事は予算を増やしました。今までしてこなかったことについて、社員たちが少しずつ考えて取り組むようにしています。

――地域と鉄道との関係について、どう考えますか。

沿線地域の力を引き出す魅力のシンボルが鉄道ですから、社員には「社長をうまく使ってください」、地域には「いすみ鉄道をうまく使ってください」と言っています。地域を無視した施策は長続きしません。地域との協力は不可欠です。

――地域キャラクターのヘッドマークを車両に掲げるなど、1つひとつの地域の観光情報を重点的に掲示していますね。

第3セクター鉄道ですから、いすみ市や大多喜町だけではなく、いすみ地域2市2町、千葉県全体も考えるべきだと思っています。いっしょにがんばりたいと思うのです。

「支店長」が大活躍

――これまで行ってきた「地域との協力」はどのようなことですか。

キハ52形と古竹社長(筆者撮影)

たとえば「大多喜ハーブガーデン」とのコラボで、ランタンフェスティバルを行いました。大多喜お城まつりでは当社社長として実行委員も務めています。いすみエリアにはまだまだポテンシャルがあり、それを引き出す施策が必要だと考えています。

――社外から案を募る「いすみ鉄道支店長」も募集していますね。

各地の支店長からいただいた案は少しずつ実現しています。たとえば城西国際大学メディア学部が企画した動画をホームページに掲載しました。同学部が撮影した、キハ52形の全般検査を行う経緯や、オーバーホールの様子も写真集にする予定です。

また大多喜高校、大原高校の美術部とコラボし、10~11月に大原駅の壁画を変える準備をしています。なお、弊社の営業課長は外から支店長に応募した人で、当社の営業課長になってもらいました。

――経営者として、鉄道会社の経営をどう考えますか?

小湊鉄道(右)との連携も模索する(筆者撮影)

やりがいも手ごたえもあります。「変えられるのはよそ者だからでしょ」と言われたこともありますが、私はこの鉄道がある限りいすみ鉄道と付き合うつもりです。私の前職であるタクシー会社の経営と異なり、同業者と協力しやすいですし、学べることも多いです。

ほかの鉄道会社の社長さんとも前向きな話をしています。千葉県を盛り上げるためにも、小湊鉄道さん、銚子電鉄さんとの連携も進めたい。費用がかかるので今はまだ夢ですが、小湊鉄道さんとの直通も一緒に盛り上げたいです。

――コロナが収束したら、何に重点を置きますか。

コロナがなかったとしても人口減少など、避けられない問題を考えなければなりません。いすみ鉄道が生き残るためには、観光列車などもっと多くの企画を行う必要があります。地域の足というだけではなく、地域のシンボルになるように少しずつ舵を取らなければならない。だから、車や自転車で当地に来る人も大切にしたい。自転車を列車に乗せて乗車できるようにしようと思っています。

急行列車にもいろいろな意見はありましたが、何とか残す算段を付け、7月の復活に向けて準備しています。

乗客が「気持ちをリセット」できる鉄道に

――急行列車の魅力をどう考えますか?

国鉄形気動車を残すことで、この地域に「昭和」が残ります。風情や人情まで含めて残さなければいけません。今は風情や人情はいらない時代かもしれませんが、それらが昭和の面白さなので、そのテイストを楽しんでいただきたい。首都圏の煩雑さに疲れた人が、ときどき来て、気持ちをリセットしてもらえるような、そんな鉄道会社にしたいのです。

1人ではできないので、みんなの力を借りて進めていく必要があります。まだまだ道半ばです。

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