高速道路の「インターチェンジ改名」が珍しい訳

2021年に東名高速道路の「上郷サービスエリア」は「豊田上郷サービスエリア」に名前が変更される(写真:中日本エクシス)

今春、関東の大手私鉄、京浜急行で4つの駅の名前が改称された。「産業道路」駅が「大師橋」へ、「仲木戸」駅が「京急東神奈川」へなど、なじみのある駅名がいくつも消えた。

関西では、昨年の秋に京阪電車の「八幡市」駅が「石清水八幡宮」に変わるなど、京阪の4駅が改称されたほか、阪急でも京都と大阪の始発駅である「梅田」駅と「河原町」駅がそれぞれ「大阪梅田」「京都河原町」に改称されるなど、駅名の変更は時々見られる。

一方で、高速道路のインターチェンジ(IC)やサービスエリア(SA)、パーキングエリア(PA)の名称は、駅名ほどの頻度では変更されない。むしろ、かなり珍しいといってよい。

そんな高速道路で、今年3月に、中国道の「湯田PA」(山口県)が「湯田温泉PA」に改称され、2021年には東名高速道路の「上郷SA」が「豊田上郷SA」に変更されることが今年2月に発表されるなど、改称が立て続く予定だ。

容易ではない名称変更

駅名などの交通機関、施設の名称は、広く周知される公共的な名前だけに、定着したものを変えるのは、地元の理解や少なくない費用の発生、そして継続的な周知が必要で、それほど簡単ではない。

駅名の変更は珍しくないと述べたが、例えば、東急東横線の「学芸大学」「都立大学」(ともに東京都目黒区)の連続する2駅は、どちらも立地する大学名を冠してつけられたが、今ではともに大学が移転してしまい実態と合っていないため、改名の話が持ち上がったことがある。しかし、慣れ親しみ半ばブランド化している名前の変更に反対する地元の方が多く、今もそのままになっているというケースがあるなど、地域の理解が必要だ。

高速道路のICやSA・PAの名称も定着すればするほど変更は難しくなることは容易に想像できる。それでは日本の高速道路の施設名の変更例はどれくらいあるだろうか。

まず、鉄道で言えば駅にあたるICの名前では、1997年に東名高速道路の「横浜IC」が「横浜町田IC」へ、2007年に阪和自動車道の「吉備IC」が「有田IC」に、「吉備南IC」が「有田南IC」に、2012年に長野道の「豊科IC」が「安曇野IC」に変わった例などがある。

1968年4月に東名の東京~厚木間の開通に合わせて設置された横浜IC。横浜とは言え、市の中心部からはかなり遠く、所在地も東京都の町田市との境付近に設置されたICである。1998年に東名川崎IC~横浜IC間に新たなICが設置されることになり、横浜青葉ICと命名されたため、横浜ICはこの新設のICとの混同を避けるために、新たに町田の地名を付加しすることになった。異なる都県にまたがる地名が並列されるという珍しいIC名はこうして誕生した。

他方、2012年に豊科ICから変更された安曇野ICのケースは、変更前の名称とはまったく別の名前に変更されたさらに珍しい事例である。変更のきっかけは、自治体名の変更である。

2005年に南安曇郡豊科町をはじめ周辺5町村が合併して安曇野市が誕生。「安曇野」は松本盆地の北部、JR大糸線に沿ったエリアの広域名で、観光地としての認知度も高かったため新市名に採用され、その7年後に新自治体の高速道路上の玄関にあたる豊科ICが新市名の名を冠することになったのである。

変更にあたっては、関連団体などを中心に「安曇野市・豊科地域インターチェンジ名称検討協議会」が設置され、地元の意向調査なども行って、変更を決定した。松本盆地を北上する長野道は、豊科からは東に曲がり長野市方面へ向かってしまうため、市内で唯一のICであるということも、名称変更のハードルが高くなかった理由だと推察される。

平成の大合併後のIC改名はまれ

平成の大合併では数多くの新たな自治体名が生まれたが、安曇野IC同様、変更したほうがわかりやすそうなものの、実際にICの名称を自治体名に合わせて変更した例はほかにはない。

例えば、山陽道の「山陽IC」は、設置当時の所在地は赤磐郡山陽町だったが、その後合併で赤磐市となっており、市内にはほかに高速道路のICがないうえ、山陽ICと言っても「山陽」は中国地方の瀬戸内側全体を指す名称でもあるので、赤磐のほうが特定しやすいが、変わってはいない。九州道の「松橋IC」も平成の大合併で宇城市の玄関の役割を担うようになったので、宇城ICになってもおかしくないが、変わっていない。

一方、鉄道の駅では、駅名を市町名に合わせて改称することは珍しくなく、JR発足直後には、「白木原」⇒「大野城」(JR鹿児島線、福岡県)、「加久藤」⇒「えびの」(JR吉都線、宮崎県)、「筑後千足」⇒「うきは」(JR久大線、福岡県)などがあるし、今年になってJR常磐線の「佐貫」が「龍ケ崎市」へと改称された。市のHPには変更の経緯が記載されているが、知名度の低い自治体名の認知度向上が目的だと記されている。

ほかにも、観光地であることを強調するために、「温泉」を付加するケース(「城崎温泉」「武雄温泉」「石和温泉」のように)や、最寄りの大学名を併記して「深草」⇒「龍谷大前深草」(京阪電鉄、2020年)、「石橋」⇒「石橋阪大前」(阪急電鉄、2019年)などの例がある。

石川PAや談合坂SAは改名の可能性低い

SAやPAの名称変更について、今年から来年にかけて前述の2件のほかでは、1996年に東北道の「相去PA」が「北上金ヶ崎PA」に、2013年に名神の「秦荘PA」が「湖東三山PA」に変更された例などがある。

後者は、以前あった自治体名(2006年まで秦荘町が存在、この年合併で愛荘町となり、自治体名としての秦荘の名は消滅)から湖東三山という名刹の観光地名への変更で、湯田PA、上郷SAの場合と同様、スマートICが休憩施設に併設されることにより、その名称を付ける際に併せてSA、PAの名称を変更したという例である。

上郷SA(下り)のスタンプ。2021年には豊田上郷に変わる(筆者撮影)

逆にこうしたケース以外、すでに定着したSA、PAの名称の変更は難しいということである。中央道の最も東京寄りにある石川PAは、それだけでは具体的な地名と結びつきにくいので、所在地の「八王子PA」への変更を求める声もあると聞くが、単独でPAだけ名前を変えることはこれまでの定着度やコストの面で難しいという。

中央道では、SAとしては一番東京寄りに「談合坂SA」があるが、関東のドライバーにはすっかり定着しているので、いまさら所在地の「上野原SA」に変える必要はないと考えられるし、首都圏では最も知名度が高く利用者が最も多い東名の「海老名SA」などは、地元の海老名市の知名度向上に相当の貢献をしているといえるだろう。

上郷SAの頭に「豊田」をつけることが発表されたのは、今年の2月14日だが、ネクスコ中日本では、「お客さまの利便性を考慮して、現市名である『豊田』を附した名称とすることで所在地がより明確となり、分かりやすいご案内が可能となるため、スマートICおよびSAの位置する市名および具体的な地域名を用いた名称としました」としている。

こうした変更のほかに近年開通した新規のICでは、長い名前が付けられることが多くなった。大分農業文化公園IC(大分道)、大井川焼津藤枝スマートIC(東名)、三沢・十和田・下田IC(第二みちのく有料道路)などは、IC名というよりは、降りた先の目的地を示しているのかと思うほどの長さである。

たかが名前、されど名前。地名が持つ面白さに加えて、こうした命名の妙を味わいながら次々とICやSA・PAを通過していくのも、高速道路を走る楽しみの1つではないだろうか。

【2020年6月22日17時54分追記】初出時、IC名やPA名の変更例について不正確な部分があったので補足しました。

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