「自分は不幸」と思う日本人がやたら多い不思議

収入が少なくても幸せになる方法はあります(写真:kitzcorner/iStock)
「もう少し年収が増えたら幸せになれるのに」「もっと給料が高くなったらいいな」
このように思ったことはありませんか? おそらく、多くの人が、「ある」と答えるのではないかと思います。
人々がどうしたら幸せになれるのか。「年収1億円で劣等感ある人が不思議じゃない訳」(2020年5月30日配信)、「年収がいくら増えても『幸せ』には直結しない訳」(6月2日配信)に続いて、科学的データや統計データを用いて論じた『年収が増えれば増えるほど、幸せになれますか?』から一部を抜粋し、お金と幸せの関係性について明らかにします。

日本人が「もっとお金が欲しい」と思いやすい理由

上の図は、2012年に21カ国で行われた調査をグラフにしたものです。「もっと多くの財産があれば幸せなのに」と思う人(非常にそう思う、ややそう思う、と回答した人の合計)が、日本人では65パーセントにも達しています。なんと3人に2人です。1位のロシア、2位の中国は新興国ですから、「もっとお金が欲しい」と思うのも理解できます。

しかし、日本は経済成長が停滞しているとはいえ、今でも世界有数の先進国です。にもかかわらず、ロシア、中国と肩を並べる結果が出ています。

(外部配信先では図を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

物質的な面でも、インフラの面でも、恵まれた暮らしを享受しています。なのに、なぜ日本人は「もっと多くの財産があれば幸せなのに」と思ってしまうのでしょうか。

理由の1つとして、日本人の生まれ持った遺伝子が関係していると考えられます。

別名「幸せホルモン」と呼ばれる、セロトニンという神経伝達物質をご存じでしょうか。このセロトニンが脳内から減ると、人は不安を感じたり、気分が落ち込んだりしやすいと考えられています。

セロトニンの分泌量を左右するのが、「セロトニントランスポーター遺伝子」です。この遺伝子にはセロトニンの分泌量の少ない「S型」と、分泌量の多い「L型」の2種類があり、その組み合わせによって、「SS型」「SL型」「LL型」の3つに分かれます。

不安を感じやすいかどうかは生まれつき

SS型の遺伝子を持っている人は不安を感じやすい人、LL型の遺伝子を持っている人は楽観的な人、SL型はその中間ということになります。不安を感じやすいかどうかは、ある程度、生まれつき決まっているのです。

調査によれば、日本人の遺伝子はSS型が65%を占めています。SL型は32%、LL型はたった3.2%にすぎません。一方、アメリカ人は、SS型が19%。SL型が49%、LL型が32%という結果が出ています。

つまり、日本人は不安を感じやすい民族なのです。「もっと多くの財産があれば幸せなのに」と思う人が多いのは、日本人が強欲だからではなく、心配症だからなのでしょう。

「老後2000万円問題」があれだけ論議を呼んだのも、そのせいでしょう。マスコミが煽ったこともあって、心配性の日本人は冷静な判断ができなくなってしまった。

「なんとかなる」と考えられないのが、よくも悪くも日本人です。

では、なぜ日本人は心配性のSS型が多いのでしょうか。いろいろな仮説を立てることが可能だと思いますが、1つの考え方は、災害の多さが関係しているという説です。地震、津波、台風、火山など、日本は「災害大国」として知られています。もし、「なんとかなる」と楽観的にかまえていたら、いざというときに対応することができません。災害から自分や家族の身を守るために、日本人は不安遺伝子を育ててきたのです。

ただ、災害をある程度、事前に予測し、克服できるようになった今、過剰な心配や不安は必要なものではなくなってきています。むしろ幸せの足を引っ張るという弊害が目立っています。遺伝子に刻まれた、生まれつきのこの性格を、変えることはできないのでしょうか。

学術的には、性格は大雑把に言って半分くらいは後天的に変わると考えられています。人間には生まれつきの遺伝子を乗り越える力が備わっていることを、忘れないでいただきたいと思います。

バブル崩壊後、30年間にわたって日本経済は停滞し続けています。それどころか近い将来、少子化による人口減少の影響を受け、日本経済は縮小へと転じるのではないかと見られています。

しかし、世界的に見れば、いまだに日本は超がつくほどの経済大国です。2018年の実質GDP(国内総生産)ランキングでは、アメリカ、中国に次いで3位の座を維持しています。

では、GDPが高ければ高いほど幸せなのでしょうか?

日本人の生活満足度はほとんど変わっていない

内閣府の「幸福度に関する研究会」の報告によれば、日本人の1人あたりの実質GDPは、1960年代から上昇し続け、50年で6倍になりました。しかし、人々の生活満足度はほとんど変わっていません。

GDPが上がるということは、国民の収入も上がるということです。しかし、年収が数倍になっても、人々の幸福度には影響しないのです。この調査結果は、「年収が増えれば増えるほど、幸せになれますか?」という問いの答えを、端的に表しているといえるかもしれません。

さて、GDPと幸せは比例するのでしょうか。

国連の関連団体が発表している「世界幸福度ランキング」と1人あたりGDPを比べてみると、関係はありそうです。世界幸福度ランキングは、各国の人々に「どれくらい幸せを感じているか」を答えてもらった結果です。また、その結果に対し、GDP、平均余命、寛大さ、社会的支援、自由度、腐敗度などの要素で分析をしています。

2019年のランキングでは、1位に輝いたのはフィンランドでした。2位はデンマーク、3位はノルウェー。イギリスは15位、アメリカは19位、フランスは24位、イタリアは36位、日本はそこから大きく下がって58位でした。これは先進国の中で最低です。

この幸福度ランキングを見ていて、気づくことがあります。トップ10のうち、半数を北欧諸国が占めていることです。トップスリーの3カ国に加え、4位にアイスランド、7位にスウェーデンがランクインしています。

北欧諸国の幸福度が高いのは、社会保障が手厚いことが関係していると考えられます。子どもの教育費や医療費はすべて無料、老後の心配は少ないと考えられます。どこかの国と違って、「老後2000万円問題」は起きにくいでしょう。

その反面、税金が高いことでも知られています。フィンランドの消費税は22パーセント、ノルウェーは24パーセント、スウェーデンは25パーセントです。10パーセントの日本からすれば、信じられないような税率です。

福祉のために税金を納めるのは「誇り」

しかし北欧諸国の国民は、福祉のために税金を納めることを誇りに思っていると聞きます。「自分たちの国は平等で、貧しい人がいない。そんな素晴らしい国を、自分たちの手でつくっているんだ」。そういった気持ちで納税しているのです。民度の高さに驚かされます。

彼らにとって税金は、「取られるもの」ではありません。豊かな国をつくるための大切な資源です。だからこそ、払いっぱなしにはしません。チェック機関をつくって、どんなことに税金が使われているかを精査しています。

税金を高くすると、お金持ちが海外に逃げてしまうという懸念を、日本ではよく聞きます。北欧が素晴らしいのは、お金持ちも国を支えるために進んで税金を払っていることです。北欧のお金持ちの多くはいくら税金が高くても海外に逃げないそうです。

北欧は教育と民主主義が、日本よりもはるかに進歩していると思います。自分たちで権利を勝ち取ってきた歴史があるため、自分たちの幸せな人生は自分たちでつくるものだという観念が浸透しています。

日本には、民衆が革命を起こした歴史がありません。お上が全部やってくれていたので、残念ながら他人任せの国家になっているように思います。一人ひとりがもっと政治参加する意識を持たないと、幸福度は低いままだと思います。

もし日本が北欧のような社会を目指すのなら、教育、政治、経営、哲学、すべて根本から変わらなければなりません。はたして日本が、北欧のような「幸福大国」になる日は来るのでしょうか。

日本が「幸せランキング58位」なのは、なぜか

上の図に、1人あたりGDPと主観的幸福の国際比較を示しました。北欧や中欧の諸国幸福度も一人あたりGDPも高いことが見て取れます。しかし、興味深いのは、このグラフは右肩上がりにはなっていないという点です。

つまり、1人あたりGDPは小さくても幸せな国(図中左上)はたくさんあるのです。要するに、「1人あたりGDPが高い国はある程度幸せな傾向がある」けれども「1人あたりGDPが小さくても幸せな国はある」ということです。

前回までの記事で紹介した収入やワインの限界効用のグラフと似ています。つまり、このグラフから見た本書のタイトル「年収が増えれば増えるほど、幸せになれますか?」への答えは、収入が増えるとある程度不幸になりにくくはなるけれども、収入が少なくても幸せになる方法はあるということです。

ここまで見てきたように、先進国間で比べると、1人あたりGDPと幸福度は相関があるものの、1人あたりGDPが小さくても幸せな国はあります。国の特徴が影響しているのです。

日本が奇妙なのは、半世紀以上もかけて1人あたりGDPは右に向かって増えたのに、縦軸の幸福度は上がっていないということです。生理的欲求と安全欲求が極めて高いレベルで満たされているにもかかわらず、「まだ足りない」「もっともっと」といって、自ら不幸に陥っていることです。それが「幸福度ランキング58位」という悲しい結果を招いています。

このままだといくら日本が今後、1人あたりGDPが増えても、幸せにはなれないということです。

考えてみれば、今の日本人は、江戸時代の殿様よりずっと恵まれています。電気もガスもあるし、娯楽もたくさんある。インターネットでいろんな人とつながれるし、世界中を旅することもできる。

400円の牛丼をどう感じるか

食事だって、江戸時代の殿様が食べていたものより、コンビニエンスストアで買ってきた弁当のほうがおそらくおいしいと思います。もし、江戸時代に持っていったら、「こんなすごいものは食べたことない!」と驚かれるでしょう。

日本の食事のレベルは、海外と比べても本当に高いと思います。アメリカのセブン–イレブンに行くと、そのことがよくわかります。失礼ながら、日本人が見ると、まずいパン、甘いだけの巨大なケーキ、干からびたサラダに驚きます。

日本人は幸せを感じるのが下手になっているようです。本当はもう十分幸せなのに、そのことに気づいていない。

牛丼を食べて、「こんなにおいしいものがたった400円で食べられるなんて、自分はなんて幸せなんだろう」と感じるか、それとも「400円の牛丼しか食べられないなんて、自分はなんて不幸なんだろう」と感じるか。これをどう感じるかで、幸福度は決まるのです。

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