百貨店で化粧品を買う女子を狙う新しい流通

百貨店の休業や時短営業で美容部員の働く場が減少しています(写真:ZUMA Press/アフロ)。

新型コロナウイルスの感染拡大により、百貨店などで来店客の相談に応えながら化粧品を販売する美容部員の働き方が変わりつつある。

4月の政府の緊急事態宣言を受け、化粧品販売の主戦場でもある百貨店は休業や営業時間短縮の措置を取った。5月14日には39県、そして21日には関西2府1県で緊急事態宣言も解除され、徐々に各百貨店でも営業を再開させつつあるが、客足が以前のように戻るのには時間もかかりそうだ。

一方で、美容部員たちは店舗に変わる新たな「働く場」の開拓を始めている。コーセーでは自社ECの「メゾンコーセー」で3月25日から、EC運営などを手がけるバニッシュ・スタンダードの販売員向け機能「STAFF START(スタッフスタート)」の導入を始めた。このサービスでは、販売員が自社の製品を画像やテキストで消費者に紹介することができる。これまで800以上のアパレルブランドで使用されてきたが、化粧品業界でも初めて導入を決定した。

「STAFF START」の機能を利用するコーセーの美容部員は、店頭でお客に商品を進める時のように、Web上で商品紹介から使い方、メイクアップのコツまでさまざまな提案を行い、購買へとつなげている。

また投稿者である美容部員は、自分が投稿した商品の購入やアクセス数、投稿者間の順位も把握できる。広報担当は「こうしたフィードバックが、美容部員のモチベーションアップにもつながっている」と話す。美容部員の中には、1週間で4~5商品を紹介する人も複数人いるという。

チャットサービスでメイク相談に乗る

他メーカーでも、美容部員による新しい取り組みに挑戦している。ポーラ・オルビスホールディングス傘下のオルビスでは、4月27日から自社サイトで美容部員によるチャットサービスを期間限定で導入し始めた。

休業店舗から有志で集まった全国の美容部員が土日以外の平日・祝日(10〜15時)に実施しており、メイクや肌悩み、使用方法、商品のオススメなど日頃の接客と変わらない対応を行っている。

広報担当者は「質問の傾向として、巣ごもり生活のストレスによる肌トラブル、マスクによるメイク崩れ対策といった悩みに効果的なアイテムやアドバイスを求める方が多い」と話す。

さらにゴールデンウィーク中にはWeb会議ツールのZoomを用いた、オンライン上での「対面」接客も行った。「最初はお客様も緊張をしていた様子だったが、会話が弾むにつれて、積極的な質問が出たり、子供がいるお客様からは『子供がいると店頭に行けないので、とてもうれしい』という声も聞こえてきた」(同社広報担当)。今回は期間限定の試みだが、今後の追加実施も検討している。

他方で会社に所属していない派遣や個人事業主などの美容部員は、仕事を失ったり、派遣会社から保証を受けているものの休職状態という人も多く、深刻な状況にある。そうした中で、元美容部員のユーチューバー、和田さん。とPR事業などを手がける RooMooNは、美容部員を支援する取り組み「オンラインBAプロジェクト produced by 元美容部員 和田さん。」を始めた。

このプロジェクトでは和田さん。はプロデューサーとなり、美容部員がお客へのカウンセリングを行う。Zoomを使用しての1対1でのカウンセリング(40分想定)や、Zoomでのセミナー(30分想定)などを計画しており、特定ブランドに限らず、客が所有するコスメを使用して美容の知識も伝えていくという。

【2020年5月24日15時50分追記】初出時、プロジェクトの企画と運営主体について誤りがありましたので、上記のように修正しました。

コロナ収束後も美容部員の働き方が鍵に

実は美容部員によるデジタルツールを活用した接客の普及は、これまで容易でなかった。近年は各百貨店で化粧品売り場の拡張が相次ぎ、ブランド側も対面による消費者とのコミュニケーションを重視してきた。そのため、あくまでもデジタル施策は店舗に招くための一環として位置付けられていたのだ。

ただし、新型コロナの影響で、店舗の再開後も近距離での接客や肌に触れられる行為をためらう客も少なからずいるのが現状だ。実際にこれまで資生堂や日本ロレアル、カネボウ化粧品の美容部員に感染者が出ており、すぐにこれまでのような接客に戻るのは現実的ではなく、前述のような新たな形での対応が求められることになりそうだ。

一方で、感染が最初に確認された中国では、コロナ禍でライブコマース(動画の生放送によるインターネット販売)が加速。中国商務部の調査によると、2020年第1四半期(1~3月)では400万件以上のライブコマースがあったという。特に最も大きなライブコマースプラットフォームである「タオバオライブ(淘宝直播)」では、新規参入者を誘致する施策として加入料の期間限定無償化などが行われ、休業状態のオフライン店なども参入した。

ライブコマースも普及し始めてきている

また普段ライブコマースを行っているKOL(キーオピニオンリーダー、=インフルエンサー)だけでなく、メーカーの社長や開発者、店舗の美容部員も配信し始めている。5月に入り自粛ムードが開けてきたが、それでも依然としてライブコマースは活況だ。

日本ではライブコマースこそ事例が少ないものの、この自粛期間中にインスタグラムライブなどで配信する化粧品ブランドも出てきている。消費者のニーズという面でも、今後美容部員を中心としたオンラインへのシフトチェンジがより一層進む可能性は十分にありえるだろう。

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