企業の資金繰り支援で銀行が問われる覚悟

コロナショックからあらゆる業界で事業環境が悪化。金融機関は企業の資金繰りをどこまでサポートできるか(編集部撮影)

新型コロナウイルスの感染拡大から外出や店舗営業の自粛が続き、企業の資金繰りはたちまち悪化している。金融機関には飲食業をはじめ、卸売業、建設業、製造業、小売業など幅広い業種から相談が殺到。緊急事態宣言以降も金融機関は店舗営業を続け、資金繰り支援に対応中だ。

現在、民間の金融機関が行っている対応は大きく分けて3つある。日本政策金融公庫への斡旋、信用保証協会のセーフティネット貸付、自らがリスクをとるプロパー融資だ。

1つめの日本政策金融公庫では、3月中旬から「新型コロナウイルス感染症特別貸付」(以下、特別貸付)を始めている。小規模事業者で売上高が15%以上、中小企業で同20%以上減少(原則、最近1カ月に加え、その後2カ月も含めた3カ月間のうちのいずれかの1カ月と前年同期を比較)した場合、国からの利子補給を受けられ、実質的に無利子で融資を受けられる。プロパー融資よりも金利条件が良いことから、「特別貸付の条件に合えば、まずは日本公庫を紹介する」(地方銀行の営業担当者)という。

申し込みは26万件で融資決定は半分

業況の急激な悪化を背景に、日本政策金融公庫への申し込みが急増しており、融資にまで時間がかかるケースが増えている。特別貸付の申し込み件数は2020年4月19日までで26万1575件、融資が決まったものは13万3529件と半分にとどまる。

首都圏で融資関連業務に携わる日本政策金融公庫の職員は4月上旬、「現場は完全にパンクしていて案件がさばききれない。国民生活事業(小規模事業者等への融資)は電話回線がつながらないほど」と話していた。

また、「中小企業向けの審査は従来1~2カ月かかっていた。書類を簡素化しても、一定の時間がかかる」(前出の職員)という。そのため、特別貸付が実行されている大半は小規模事業者向けとみられる。

特別貸付の申し込み殺到を受けて、金融庁は4月21日、日本政策金融公庫の融資が実行されるまでの間、「つなぎ融資」を民間金融機関が行うように要請した。併せて、日本公庫には借り換えが希望された場合可能な限り応じること、民間金融機関にはつなぎ融資を含めた資金繰り支援を積極化することを求めている。

政府は、日本政策金融公庫の特別貸付だけでなく民間金融機関でも無利子融資が受けられる仕組みの導入を急いでいる。地方自治体の制度融資を活用して利子補給を行い、事業者が民間金融機関で実質無利子の融資を受けられるようにする方針だ。ただ、「予算はいつ決まるのか」「利子補給の水準や形式が見えていない」(地方銀行の行員)と言われる状態で、枠組みの詳細は見えていない。

2つ目の信用保証協会のセーフティネット貸付は、「マルホ付き融資」と呼ばれる制度で、リーマンショック後など過去の危機局面でも活用された。こちらも売り上げが悪化した企業が対象で、万が一金融機関への返済が滞った場合にも信用保証協会が貸出の80%~100%を肩代わりする。そのため、金融機関側のリスクは低く、融資がしやすい。しかし、こちらも信用保証協会の審査に1カ月程度かかる。

迅速性という意味で、企業にとって重要になるのが3つ目の「プロパー融資」だ。各金融機関が特別融資の設定やファンドの立ち上げを行い、仕組みは整っている。過去に取引のある企業であれば「最短、即日での融資も可能」という金融機関もある。

これから難しい判断を迫られる

だが、仕組みが整っていても民間の金融機関が積極的にプロパー融資に動くかどうかは別問題だ。「メインの取引先はすべて支える」(信用金庫幹部)、「今は選別せず、基本的に支えていく」(地方銀行幹部)と腹を決めるところがある一方、「取引先からの相談を受けた対応は、日本政策金融公庫の紹介とマルホ付きが大半」(地銀の営業担当者)、「正直返せるあてがあるか微妙なので、プロパー融資の審査はかなり厳しい」(大手銀行営業担当)という声も聞かれる。

民間金融機関は1つめと2つめの対応にいつまでも頼れるわけではない。日本政策金融公庫の場合、小規模事業者の融資限度額は6000万円(このうち、3000万円分の金利が特別貸付の対象で実質無利子に)、中小企業の融資限度額が3億円(このうち、1億円分の金利が特別貸付の対象で実質無利子に)となっている。金額は異なるが限度額があるのはマルホ付きも同じだ。

今後も自粛ムードが継続すれば、企業の業績は一段と悪化し、資金繰りがさらに厳しくなる。公庫やマルホの融資では運転資金が足りず、企業から民間金融機関にプロパー融資の要請が大幅に増えるだろう。民間金融機関が自らリスクを取って急増した融資要請の可否を判断する局面が早晩訪れるはずだ。

そのとき、過度にリスクを意識して取引先の追加支援を控えれば倒産が多発する。一方、融資要請にすべて答えた場合、不良債権化して金融機関の財務を毀損するリスクが膨らむ。一定の損失が出ることを覚悟して、企業からの融資要請にどこまで応えるのか。いつ収束するともわからない新型コロナの感染拡大。先行きがきわめて不透明な状況下で、目利き力を求められる金融機関にとって、これからが正念場だ。

ジャンルで探す