「地方銀行の崩壊」コロナが映す暗い未来予想図

コロナが地方銀行などの地域金融機関に与える衝撃とは?(Fast&Slow/PIXTA)

新型コロナウイルスの被害拡大で多くの業種が苦境に立たされる中、このところじわじわと存在感を増しているのが、地方銀行(地銀)など地域金融機関。コロナ対策の緊急融資が国・自治体から要請され、地域の中小企業・零細企業を支える役割がクローズアップされています。

しかし、拙速な融資の拡大は不良債権を生み、地域金融機関の破綻、ひいては地域経済の崩壊を招く危険性があり、諸刃の剣とも言えます。地域金融機関は、地域経済を救う救世主でしょうか、それとも地域経済の崩壊という大爆発を引き起こす弾薬庫でしょうか。地域経済を左右する地域金融機関の近未来を占ってみましょう。

なぜ「地域金融機関」が苦境にあるのか?

今後を占うに当たり、地銀など地域金融機関の現状を簡単に振りかえっておきます。

一言でいうと、地域金融機関は「瀕死状態」です。地銀の場合、2019年3月決算で全105行の4割を超える46行が本業で赤字です(金融庁)。うち27行が5期以上連続の赤字です。株式売却益などで何とか決算を取り繕っていますが、専門家・関係者の間では、「生き残ることができるのは半数以下」「20行もあれば十分」と言われています。

苦境の最大の原因は、地域の人口と企業が減少し、融資先がなくなっていることです。さらに、2013年から続く日銀の金融緩和で金利が消滅し、ベースとなる預貸取引で収益を上げられなくなったことが、追い打ちをかけています。

地域金融機関は店舗の統廃合によるコスト削減や、企業の経営力を評価して貸し出すリレーションシップバンキングなど改革を進めてきました。しかし、それだけでは、苦境を脱するのにまったく不十分。全国各地で、生き残りをかけた合従連衡・再編が進められています(FG=フィナンシャルグループ、カッコ内は発足年)。

九州FG(2015)=肥後+鹿児島
コンコルディアFG(2016)=横浜+東日本
めぶきFG(2016)=常陽+足利
関西みらいFG(2018)=近畿大阪+関西アーバン+みなと
東京きらぼし(2018)=八千代+東京都民+新銀行東京
第四北越FG(2018)=第四+北越
ふくおかFG(2019)=福岡+熊本+親和+十八

また、住宅ローンなど不動産関連事業に活路を求める地域金融機関が増えています。ただ不動産関連事業はリスクが大きく、スルガ銀行の不正融資に見るように不良債権が増加し、かえって経営を混乱させているケースが目立ちます。

この八方塞がりの地域金融機関に突然降って湧いてきたのが、新型コロナウイルス対策の緊急融資です。

3月6日、麻生太郎財務相が民間金融機関に対し、中小企業の資金繰りに対応するよう要望しました。それを受けて、いま全国の金融機関が緊急融資制度を導入しています。それに先がけて京都銀行などは、地方自治体からの要請を受けて2月から緊急融資制度を導入しています。

「現役の地銀幹部」が語る本音

こうして地域金融機関は、地域経済を支えるという本来の役割を取り戻し、存在感を急速に高めています。ただ、心配なのが融資に伴う信用リスク。

緊急融資に殺到するのは、すでに資金繰りに困窮し、返済能力が疑わしい限界企業です。緊急融資で延命できたとしても、将来、返済不能になり、金融機関は大量の不良債権を抱え込む可能性が高いのではないでしょうか。

今回、複数の地銀幹部に取材したところ、緊急融資について「地域経済を支えるという役割を果たすために、使命感を持って取り組んでいる」という型どおりの回答のあと、匿名を条件に次のような本音のコメントがありました。

「今回は、政府・自治体・金融庁が音頭を取る政治案件。仮に不良債権になっても、最終的には面倒を見てくれるはず」(関西の地銀)

「わが行は、何もしなければ10年以内に破綻します。緊急融資の信用リスクは重々承知していますが、座して死を待つより、覚悟を決めて突き進むしかないのです」(関東の第二地銀)

地域金融機関にとっては一か八かという緊急融資ですが、不良債権化するのは本格的に返済が始まる1年後の話。

ただ、それよりも足元で心配なのが、既存の住宅ローンです。近年、多くの地域金融機関が、個人向けの住宅ローンやシェアハウス向け融資など不動産関連事業に注力してきました。

かつて森信親金融庁長官がスルガ銀行を「地銀のお手本」、西武信用金庫を「信金の雄」と大絶賛したように、近年ぐんぐん業績を伸ばし、最終的につまずいたのは、不動産関連事業にのめり込んだ地域金融機関です。

7月には「住宅ローンの滞納」続出か

新型コロナウイルスの被害拡大から、今後、リストラで職を失う会社員が増えるでしょう。40万人以上の失業者が発生するという試算もあります。職を失わなくても、ボーナスはかなり減額されます。つまり、ボーナスが支給される7月上旬には、住宅ローンの滞納が続出すると懸念されるのです。

仮にボーナスを何とか乗り切ったとして、もう一つ懸念されるのが金利の上昇です。今回、緊急経済対策のために国は数十兆円に上る国債を新規発行する予定です。もし市場で国債の消化が不調だと、国債暴落までいかなくても金利は軽く数%上昇してしまいます。

現在、住宅ローンの変動金利は0.4~0.5%とただ同然。そのため、多くの住宅取得者が変動金利で借り入れています。この状況で金利が1%でも上がると、返済額が増えて、たちまち滞納が続出することでしょう(なお、住宅ローンに関しては、地域金融機関よりもメガバンクなど大手金融機関のほうが融資残高がはるかに大きいので、より大きな悪影響が及ぶことに注意が必要です)。

つまり、緊急融資の不良債権化、リストラ・ボーナス減少や金利上昇による住宅ローンの不良債権化によって、地域金融機関の破綻が近い未来に起こる可能性があるのです。

考えたくもありませんが、もしも地域金融機関が破綻したらどうなるでしょうか。

地域の中小企業・零細企業はもともと体力が弱く、金融機関に日々の資金繰りを依存しています。金融機関が破綻すると、ひとたまりもなく連鎖的に倒産します。すると、地域に失業者が溢れます。個人融資の返済が滞ってさらに不良債権が増え、さらに金融機関が破綻し……。この悪循環が始まると、ただでさえ衰弱している地方経済は、壊滅的な状態に陥ること確実です。

もちろん、そうならないよう、国は金融庁を中心にセイフティーネットを再整備をするなど、対応を進めているはずです。ただ金融政策だけでなく、給付金・支援金をスピーディに届けて国民の資金面の不安を払拭する、感染が拡大していない地域では経済活動を維持・向上させる、といった総合的な経済対策が必要です。

地域金融機関に求められる「3つの自助努力」

一方、地域金融機関も「最後は何とかしてくれる」と行政に頼り切ってはいけません。次のような自助努力をすることが期待されます。

1.増資で資本を増強するとともに、貸倒引当金を積み増す
2.緊急融資では、企業の将来性や経営姿勢などを見極めて選別融資する。また、融資した後は、外部専門家を活用して融資先の経営改善の進捗状況をモニタリングする
3.地域の経済活動を支援する(もちろん感染には注意しつつ)

こういう非常事態だからこそ、地域金融機関にも行政にも、そしてわれわれ国民にも、危機を直視し、冷静に対応することが求められます。

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