早慶女子があえて「一般職」を選ぶ根本理由

早慶女子に「あえて一般職」志向の学生が増えているといいます。総合職でなく一般職を目指す理由は何でしょうか(写真:mits/PIXTA)
女性の総合職採用は狭き門で、超難関大学出身者が中心である。また、せっかく高倍率の採用試験を勝ち抜いても、男性に比べて離職率は高く、企業や官庁において、女性でトップの地位にいる人やそれに準ずる人はまだ少ない。
そうした環境の中、総合商社の一般職は、以前多かった女子大出身者ではなく、早慶などの超高学歴女子が大半となっている。なぜ超高学歴女子に一般職志向が高まっているのか。高学歴女性を中心に学歴・結婚・キャリアを分析した橘木俊詔著『女子の選択』から、一部抜粋・編集の上、お届けする。

超難関大学出身がほとんどの女性総合職

東京大学、京都大学、一橋大学、東京工業大学、早稲田大学、慶應義塾大学といった超難関大学で学ぶ女子学生の特色は、キャリア志向が強い人が多いことにある。司法関係で働く人、医師、研究者や大学教授、そして企業であれば将来の幹部候補生である総合職で働く人が多い。自己に自信のある人が多いし、まわりもそれを期待するので、専門職や管理職に就くのが自然な姿である。

ただし男性でこういう超難関大学を卒業した人と比較すれば、それぞれの分野でものすごい成果というトップの貢献や、組織であればトップの地位を占めた女性はまだとても少ない。

学歴と能力・資格からするとそういう地位に就いてしかるべきであるが、女性は排除されていた。例を示せば、政治の世界ではまだ日本では女性の首相は誕生していない。司法の世界では歴代の最高裁判所長官はすべて男性である。学問の世界では戦後の二十数名のノーベル賞受賞者はすべて男性である。上場企業の社長職に関しても、ほぼゼロに近い。

このような各分野におけるトップのみならず、それに至る一歩前の地位を占める女性の数も非常に少ない。政治の世界における大臣、官庁における次官や局長、最高裁の判事、高裁の長官などになる女性も非常に少ない。

もっとも時には女性を抜擢するべしとの声に応じて、意図的に大臣、最高裁判事、次官・局長などの地位に就く女性も少しはいた。学者や研究者は自己の実力・業績で評価される側面が強いので大学教授に就いた女性は少なからずいたが、何分にも女性学者の数が少ないので、ノーベル賞級の仕事をする人は日本では当然として、外国でもとても少なかった。

最も数が少なかったのは上場企業、すなわち大企業における社長というトップと、重役という幹部であった。たとえビジネスの世界で超一流の仕事ができそうで、能力・実績があってしかも超難関大学の卒業生がいたとしても、企業社会は男性社会なので差別があって女性の抜擢はまずなかった。

それよりもっと重要な理由は、たとえ超難関大学で学んだ女性であっても、昔であれば上場企業で雇用されることはなかった。企業内で幹部に昇進させてよい女性の候補者すらいなかった、というのが現実である。

ところが1985(昭和60)年の男女雇用機会均等法により、採用や昇進への女性差別撤廃案が導入され、女性大卒の採用が始まった。さらにこれを機に雇用者を総合職と一般職に区別する制度が導入され、将来の幹部候補としての総合職が新しく設けられた。女性の大卒の総合職採用には難関大学と超難関大学の学生が対象となった。

それ以前には幹部候補生は男性のみであったが、その時もそれらの大学に属する人を主として採用していた伝統を、女性にも適用したのであった。ところが女性総合職の採用数は男性と比して非常に少なかったので、企業は女性総合職の採用を超難関大学と難関大学に限定することができた。

それも超難関大学に集中し、難関大学からの総合職採用数はそう多くなかった。現に東大、京大、一橋大、東工大という国立大だけに限定する超名門、超人気企業もあった。ほんの数人の女性総合職の採用数ならば、そういう策も可能であった。

ただし、せっかく総合職で採用されたとしても、結婚・出産によって、あるいはほかの理由によって中途退職する女性はかなり多かったのである。

上場企業の商社一般職の大部分は早慶女子

総合職に就く女性は超難関大学と難関大学にほぼ限られていたが、コース別雇用制度が進行するにつれ、超難関大学の中で総合職を選ばず、最初から一般職を選ぶ女子学生の増加が見られるようになった。

総合職を選択して受験してみたが採用されなかったので、仕方なく一般職で採用された、という人が多かったが、最近では意図的に最初から一般職の選択をするのである。

例えば上場企業の総合商社であれば、一昔前では一般職の大半は中堅大学に属する女子大学の卒業生であったが、最近では一般職の70~80%が早慶女子というように変化したのである。すなわち超難関私立大の女子学生が占めており、残りの20~30%も難関大学の私立大、すなわち上智、MARCHなどの大学の女子学生で占められるようになった。

早慶女子の一般職全員が最初から一般職志望であったとは言えず、一部は総合職志望から変更した女性であろうが、多くが最初から一般職志望であったとされている。なぜ早慶などの女子学生の一般職が増加したのであろうか。いろいろな理由を指摘できる。

第1に、これまでの時代は女性活性化の掛け声が強かったが、これがピークに達すると一部の大卒女性は、一心不乱に働いて出世するよりも人生を楽しみたいとする人が増加した。これは女性のみならず男性の中にも増加している。日本人全体で働くことよりも人生を楽しみたいとする人の増加が指摘されている。

これは企業で総合職としてバリバリ働いて出世を目指すよりも、一般職としてそこそこ働くので十分とする人の増加をも意味する。早慶女子、そして東大、京大の一部の女子学生にすら、そういう人の増加があっても不思議はない。

「責任とやりがい」が増した一般職の仕事内容

第2に、補助的・定型的な仕事をしていた一般職が、非正規労働者で代替されつつあるので、一般職の仕事の質が高まりつつある。すなわち、一般職の仕事が従来は総合職の行っていた非定型的な責任を伴う仕事になりつつあり、総合職と一般職の違いが小さくなったのである。

それゆえ、一般職と呼ばれながらもやりがいのある仕事ができるなら、あえて総合職の名前にこだわらなくていい人が増加した。その事実として総合職と今の一般職の間にあった処遇の差が縮まっているとされる。この傾向が続けば、一般職の数が減少して、総合職に統合されるかもしれない。

第3に、その傾向の究極の出来事は、転勤だけを強要しない地域限定総合職の創設である。やや無理な解釈かもしれないが、地域限定〝総合職〟は総合職という名前を残して従業員の自尊心をくすぐり、実態は変わりつつある一般職に近い姿に等しいとの解釈も可能である。

第4に、これは多数存在する現象ではないが、働くことは結婚・出産までのことと考える女性が超難関大学・難関大学にもいるので、あえて進んで一般職を狙うのである。総合職であれば将来の幹部候補生であることが暗黙に了解されているので、結婚・出産後すぐに退職をするかもしれないと思っていれば、一般職でかまわないという気になるのである。

第5に、すでに強調したように総合職は転勤が前提とされている。自己の人生として地域を移ることを好まない女性もいるわけで、転勤のない一般職を当初から志願する女性が超難関大学や難関大学にいても不思議はない。

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