今年の鉄道業界、注目すべきトピックはこれだ

今年3月にデビューする近鉄の新型特急「ひのとり」(撮影:ヒラオカスタジオ)

2020年の鉄道業界の注目点は何か。鉄道業界の“華”ともいえる新型車両は今年も続々と登場する。3月にはJR東日本のE261系「サフィール踊り子」、近畿日本鉄道の80000系「ひのとり」が運転を開始する。どちらも車内の快適性を売り物としているのがポイントだ。

5月にはJR西日本の新たな長距離列車「WEST EXPRESS(ウエストエクスプレス)銀河」が営業運転を始める。クルーズトレインのような豪華な寝台列車には食指が動かない鉄道ファンの支持を集めそうだ。

新幹線が世代交代

7月にはJR東海の新型新幹線N700Sが営業運転を開始する。搭載したバッテリーを使い、停電時には近隣の避難しやすい場所まで自力で走行できるなどの機能がある。

新幹線N700A(左)とN700S(右)。700系の引退で東海道新幹線は車両の最高速度が統一され「のぞみ」の運行本数が1時間最大12本に増える(撮影:尾形文繁)

2016年6月に製造開始を発表。完成後も試運転の様子などが何度も報道公開されており、鉄道ファンにはすでにおなじみの列車だ。なお、一時代を築いた700系は3月8日に東海道新幹線から引退する。当日には「引退イベント」が東京駅や新大阪駅で行われるが、引退に先駆け2月からは特別な車体装飾を施された列車も走る。

700系の引退後は、東海道新幹線を走るすべての車両の最高速度が統一される見通し。その結果、これまで1時間に最大10本だった「のぞみ」の運行が12本に拡大する。ピーク時間帯における混雑緩和への期待は大きい。

秋にはJR九州が787系を改造した観光列車「36ぷらす3」を投入する。デザインするのはJR九州の一連の列車デザインでおなじみの水戸岡鋭治氏。外観と内装のイメージの一部は公表されているが、実物が乗客にどのような驚きを与えるか、今から楽しみだ。

線路と道路の両方を走れるユニークな車両、阿佐海岸鉄道のDMVは2020年度に性能試験が行われる。世界初となる営業運転は2020年度中とされている。はたして年内に実現するか。

広々とした高輪ゲートウェイ駅の内部(撮影:大澤誠)

新駅では3月14日にJR東日本の「高輪ゲートウェイ」が営業を開始する。1971年の西日暮里駅開業以来、およそ50年ぶりで、山手線30番目の駅となる。駅舎のデザインは新国立競技場を手がけた隈研吾氏が担当。白い屋根の膜材や外壁のガラスは照明電力量を削減する狙いがある。

構内はほかの駅に先駆けてAIを活用した案内ロボットのほか、警備や清掃、広告を行うロボットも導入。無人決済コンビニも開設され、未来感あふれる駅になりそうだ。五輪開催中は、駅前の広場で競技のライブ中継が行われる予定で、盛り上がりが期待できるが、本格的な「街開き」は2024年ごろとなる。

6月6日には東京メトロ日比谷線の「虎ノ門ヒルズ」駅が開業する。地下歩行者通路で周辺再開発ビルやバスターミナルに接続するとともに、銀座線虎ノ門駅との乗り換えも可能だ。

常磐線が全線で運転再開

在来線では2011年3月の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で不通となっていた常磐線の富岡―浪江間が3月で運転再開、ようやく全線での運転再開となるのは喜ばしい。九州では2016年4月の熊本地震で被災した豊肥本線・肥後大津─阿蘇間が2020年度中に運転を再開する見通しだ。

一方、札沼線・北海道医療大学─新十津川間が、5月で廃止になる。ダイヤ改正時期の3月ではなく5月なのは、大型連休の集客を見込んでいるからだろう。日高線・鵡川─様似間も地元自治体の多くが廃止を容認しており、近い将来の廃線は避けられない。

2017年7月の九州北部豪雨で被災した日田彦山線・添田─日田間は復旧方針が決まらないままだ。近年では、地震や台風で被災したインフラの復旧費用が捻出できず、廃線に追い込まれる例が多い。巨大な自然災害が増えている昨今、ローカル線に与える影響が気がかりだ。

10年単位の視点で見ると、2022年から2023年春にかけて北陸新幹線・金沢─敦賀間と長崎新幹線・武雄温泉─長崎間が開業する。

だが、長崎新幹線は佐賀県内の新鳥栖─武雄温泉間の整備方針が決まらず在来線のまま残り、関西方面から長崎に向かうには途中で2度乗り換える必要がある。これでは、開業しても大幅な利用増は見込めない。長崎県は全線新幹線化を望むが、費用負担を嫌う佐賀県が猛反対。佐賀県が納得できるよう、スキームの再構築が必要だ。

北海道新幹線では2030年度末の開業を目指して新函館北斗─札幌間の工事が進んでいる。さらに、北陸新幹線は、関西財界を中心に敦賀─新大阪間の早期着工を要望する声が大きい。毎年の新幹線建設の予算が限られていることを考えると、長崎新幹線が全線新幹線化されるにしても、工事が後回しとなり、実現は遠い将来となる可能性もある。

技術革新は鉄道をどう変えるか

鉄道業界は技術革新の真っ只中にある。とりわけ期待が大きいのは無線式列車制御システム(CBTC)と、状態基準保全(CBM)の2つ。CBTCは列車の位置を無線通信で把握することで、前後の列車の間隔を短くすることができるため、列車遅延時のダイヤ回復に高い効果が期待できるほか、地上設備の保守コスト削減にもつながる。

2022年度末、東京メトロ丸ノ内線で実用化されるほか、都営地下鉄大江戸線でも導入が決まっている。東急田園都市線でも「勉強中」としている。なお、CBTCと類似のシステムは埼京線が2017年に導入している。

CBMは老朽化や異常といった設備の状態を予知してメンテナンスを行うことで、保全コストを大幅に下げる仕組み。ICT技術の発達で導入コストが下がり、普及が進みつつある。山手線の新型車両で取り入れられており、多くの鉄道会社が活用を検討中だ。

自動運転装置(ATO)と自動列車制御装置(ATC)を組み合わせたドライバーレス運転への期待も高い。2019年1月7日、JR東日本が山手線でのATO運転試験を公開した。JR九州も別のアプローチでドライバーレス運転の検討を進めている。

2019年は自然災害が猛威を振るった1年だった。ドライバーレスのような効率化の追求もさることながら、災害対策もぜひこの10年で万全なものとなってほしい。

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