アメリカの株高と金利安定は長期化しそうだ

アメリカの株高はこれからも続く、と筆者は読む(写真:AP/アフロ)

アメリカ株の回復が続いている。ニューヨークダウ平均などは最高値圏まであと一歩のところまで上昇している。

筆者が2月に執筆したコラム「アメリカ株は『もう上がらない』と言い切れるか」(2月12日配信)では、早期バランスシート縮小停止などFRB(連邦準備制度理事会)による緩和政策が、新興国を含めた世界経済の安定をもたらし、一部で高値警戒感がささやかれていたアメリカ株を中心に、リスク資産の上昇をもたらす、との見通しを示した。

「FRBの豹変」は2016年と似ている

その後実際に、FRBは「政策スタンスのハト派化」を強めた。3月半ばのFOMC(連邦公開市場委員会)において、多くのメンバーが政策金利を当面据え置くことを示し、そしてバランスシート縮小を9月早々に停止するとした。

FRBの政策判断の背景には、成長率、インフレが下振れるリスクが高まっていることがある。しかし、2018年後半のアメリカを震源地とした株式市場の大幅な下落は、FRBの判断ミスに対する懸念が主たる要因だった。FRBの政策については、従来からドナルド・トランプ大統領がたびたび批判するなど、混乱している状況をどうみるか、考え方はさまざまだろう。

実際には、インフレ率が2%前後で安定しているにもかかわらず、FRBが政策金利を3%台へ利上げすることへの懸念は、トランプ大統領だけではなく多くの投資家に共有されていた。昨年末から年初早々にジェローム・パウエル議長などが利上げ見送りのメッセージを早々に示し大きく方針転換を行い、金融市場が発するリスクシグナルに柔軟に配慮した、アグレッシブな政策変更は妥当と筆者はみている。

このFRBの豹変は、金融市場が動揺した後に路線変更を行った2016年初と似ている。当時も、2016年初に1年間に4回の利上げを想定していたFRBは、あっさりと利上げを見送り、その後の景気回復と株高をもたらした。2016年と2019年の共通点を指摘する声は増えているが、年初から筆者自身はこの点を強く意識していた。

依然、欧州などの経済指標は停滞している。だが、下落していたグローバル製造業景況感指数は、3月に下げ止まりの兆しがみられる。金融市場で悲観論が強まった2016年初に世界経済が下げ止まったが、この点でも2019年と2016年は似てきている。年初から株高のピッチが速いため多少のスピード調整はありうるが、筆者は「2019年は金利安定とリスク資産上昇が併存し続ける可能性が高い」とみている。

日本の経済メディアでは、筆者からすれば根拠が曖昧にしか思えない「金融緩和の弊害」が強調され、また金融政策の役割や効果を軽視する論調が目立つ。実際には、一足早く成長率が高まり、中央銀行が利上げを始めたアメリカでも、金融緩和的な状況を保つことが重要である構図は、2019年になっても変わっていない。

主要な先進国、さらには多くの新興国で経済成長率が2000年代よりも高まらない中で、中銀が経済を浮上させる景気刺激的な総需要安定化政策を継続することが必要ということである。

また、労働市場において、アメリカや日本などで大幅な失業率の低下がみられている。失業率低下が、賃金やサービスインフレの上昇につながっていないことには、さまざまな議論があるが、筆者は依然として日米ともに失業率には低下余地があると考えている。

もはや10年以上も経過するが、2008年の世界的な金融危機による経済ショックが極めて大きかったが故に、表面的な失業率の改善などが示すよりも経済全体にはなおスラック(余剰)が残っており、それが低インフレの長期化をもたらしているとみている。

「消費増税」=「緊縮財政政策」への危機感が薄すぎる

FRBも、2019年初からのハト派方向への転換に加えて、6月は大規模な会議を開催する予定だ。そこでは、これまでFOMC等で議論してきた、次の景気後退に備えた政策枠組みなどが話し合われる見込みだ。

国民の経済厚生を高めるための金融政策の在り方などについて、重鎮の経済学者なども参加する予定であり、具体的な、インフレ目標の引き上げなどを含めた金融政策のフレームワークなどもテーマになるという。経済安定、低インフレが長期化する中で、インフレ上振れを許容するアグレッシブな金融政策の妥当性が議論されるのではないか。

アメリカでこうした議論が活発になっていることには、低インフレ、低金利が長期化していることがある。これは、主要国経済の「日本化」ともいえるが、この状況に経済学者やエコノミストが強い危機感を感じていることが、政策議論が活発になっている要因の背景となっている。

本来であれば2%インフレの目標実現に一番遠い位置にある日本において、こうした議論がより真剣に行われる必要があるはずだ。ただ、実際には反対のことが起きている。日本銀行の金融政策運営は、2018年からは、利上げバイアスが強い事務方の影響が増している。根拠が曖昧な「金融緩和の弊害」が強調されるなど、金融政策に関する議論について、日本では2012年以前のように、アメリカなどとの対比でかなり低調になっているようにみえる。

一方、2019年10月予定の消費増税については、景気指標の下振れを受けて見送られる可能性がやや高まっているが、可能性は五分五分だろうか。もし増税が実現すればGDPを0.5%前後押し下げるマイナス効果があり、日本経済は主要先進国の中で最も緊縮的な状況に直面する、とみている。だが、日本の経済学者などは、緊縮財政政策への危機感が薄いままである。

こうした状況では、これまでも連載で繰り返し述べてきたが、「アメリカ株>日本株」、のパフォーマンス格差が続く可能性は依然として高いとみる。こうした構図が変わるには、日本銀行による金融緩和徹底は言うまでもないが、消費増税の取りやめ、あるいは家計部門への負担を相殺する追加的な財政政策の発動が必要だろう。

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