バイトを大切にしない会社が忘れがちな7原則

貴重な戦力でもあるアルバイトに、モチベーション高く働いてもらうためには?(写真:Hirotama/PIXTA)

アルバイトによるSNSへの不適切な写真や動画の投稿、いわゆる「バイトテロ」がたびたび発生しています。直近でも以下のような事件がありました。

2018年12月 ビッグエコー
から揚げを床にこすり付けてから、揚げた
2019年2月 くら寿司 
ごみ箱に廃棄した魚を拾い再度調理
2019年2月 セブン-イレブン
おでんのしらたきを口に含み、戻した後、たばこを持って踊る

バイトテロは決して許されない行為で、当該行為を行ったアルバイトを懲戒解雇したり、アルバイトに対して損害賠償請求をしたりすることも法的に可能です。しかし、バイトテロに対し厳しい法的処分をすることだけでなく、会社全体としてアルバイトの倫理観や責任感を育成する教育に取り組んでいかなければならないでしょう。

アルバイトにも有給休暇がある

ただ、その前に、アルバイトに倫理観や責任感を求めるならば、会社側もアルバイトに対して誠実な処遇をしているかを見直す必要があるでしょう。また、アルバイトとして働く人も労働者としていざという時に自分を守れるように知識を身に付けておくことも重要です。

そこで、本稿では、アルバイトの適正な労働条件の実現において、対応漏れが生じやすい7つのチェックポイントを紹介したいと思います。

【ポイント1】 有給休暇

入社後半年以上勤務し、出勤率が80%以上だった場合、アルバイトにも有給休暇を取得する権利が発生します。所定労働日数が正社員と同等であれば正社員に準じた日数が付与されます。正社員よりも所定勤務日数が少ない場合、付与日数は減りますが、週1日勤務であったとしても有給休暇は付与されます。

アルバイト本人が自分に有給休暇が発生していることを知らないことも珍しくないですし、知っていたとしてもシフト制で勤務日が決められる場合が多く、事実上、有給休暇を申請しづらい構造になっていることは否めません。

なお、2019年4月以降は、労働基準法の改正で10日以上有給休暇が発生するアルバイトにも会社は5日以上の有給休暇を取得させる法的義務が生じます。会社が積極的にアルバイトにも有給休暇を使いやすい職場環境を整えていく必要が出てくるでしょう。

時給制でも発生する割増賃金や雇用保険

【ポイント2】 割増賃金

アルバイトは基本的には時給制での契約です。「時給×働いた時間=賃金」ということになります。ただし、1日8時間や1週40時間を超える勤務をした場合、人手不足などで法定休日に出勤した場合、深夜22時から翌朝5時の時間帯に勤務した場合は、割増賃金が発生することに注意が必要です。

筆者が知る例でも、単純に時給と1カ月の総労働時間数を掛け算しただけで、アルバイトにも割増賃金を支払わなければならない場合があることを認識していない会社が少なからずありました。

アルバイトが1日8時間や1週40時間を超える勤務をした場合は時給の25%、深夜22時から翌朝5時の時間帯に勤務した場合は25%、法定休日に勤務した場合は時給の35%が割増賃金として発生します。月トータルではなく、日単位で労働時間を管理し、適正に割増賃金を支払うことが必要です。

【ポイント3】 雇用保険

昼間学生などを除き、原則としてアルバイトも雇用保険の加入対象となります。週20時間以上の所定労働時間があり、31日の継続勤務が見込まれるアルバイトは雇用保険に加入させる法的義務が会社にはあります。よくありがちなのは、最初は少ないシフトで入ったが、いつの間にか週20時間を上回るシフトを勤務するようになったアルバイトを、雇用保険の加入手続をしないまま放置してしまうということです。

雇用保険の手続は、出勤簿や賃金台帳など過去の加入実績を証明する書類を添付すれば、さかのぼって加入することが可能です。雇用保険の加入期間が短くなると、本当はもらえたはずの基本手当(いわゆる失業手当)がもらえなかったり、もらえたとしても受給日数が少なくなってしまったりする場合があります。アルバイトの方が退職したときに雇用保険で損をしないよう、会社としては正しく加入手続きを取ることが必要です。

【ポイント4】 社会保険

雇用保険と同様、社会保険(健康保険+厚生年金)についても、アルバイトの加入漏れが問題になることが少なくありません。

社会保険は、学生アルバイトも含め、その職場の正社員の4分の3以上の所定労働時間および所定勤務日数があり、2カ月以上の継続雇用が見込まれる場合は加入が必要です。従業員数501名以上の大企業では、所定労働時間の要件が週20時間以上という形で厳しくなっています。

会社の負担は重いが…

雇用保険の保険料率が給与の額面に対し本人負担0.3%、会社負担0.6%(一般の事業会社の場合。建設業などは違いあり)なのに対し、社会保険は労使それぞれ15%ほどの保険料率になりますから、負担が重いのは事実です。

しかし、社会保険に加入していれば私傷病で就労不能になったときの傷病手当金、妊娠・出産で就労不能となったときの出産手当金、老齢基礎年金や障害基礎年金が支給される場合の上乗せとして、老齢厚生年金・障害厚生年金の支給など、社会保険には何らかの事情で働けなくなった場合のセーフティーネットが充実しています。

正社員と同等の労働時間で勤務しているアルバイトも、このセーフティーネットの恩恵を受ける権利があります。人手不足の現在、アルバイトは決して使い捨てではなく、大切な戦力ですから、正しく社会保険に加入させることが必要になっています。

【ポイント5】 定期健康診断

労働安全衛生法では、年1回の定期健康診断を会社の費用負担で行うことが義務付けられています。この定期健康診断は、正社員だけでなく、週の所定労働時間が正社員の4分の3以上で、1年以上の継続勤務が見込まれる場合はアルバイトも対象となります。

おおむね、社会保険に加入すべきアルバイトは定期健康診断の実施義務対象者に含まれるというイメージを持てばよいでしょう。なお、週の所定労働時間が20時間以上のアルバイトについても定期健康診断の対象にすることが望ましいと、努力義務が定められています。

自社で定期健康診断の対象とすべきアルバイトに受診漏れがないか、1度確認をしてみてください。

また、従業員50名以上の会社で行われるストレスチェックに関しても、定期健康診断の対象となるアルバイトには受けさせなければなりません。

【ポイント6】 安全衛生教育

こちらも労働安全衛生法の定めになりますが、新規採用者に対して、職種や社員区分を問わず、労災の発生などを防止するため、安全衛生教育を行うことが使用者には義務付けられています。

人手が足りないからといきなり現場に放り込んで、「OJTで覚えなさい」というような乱暴な対応は、たとえアルバイトであっても許されないということです。倉庫作業であれば転落防止、飲食店であれば調理器具によるやけど防止といったように、想定されうるリスクに対して、実際に作業を始める前に安全衛生教育を行うことが必要です。そういった教育を省略して労災が発生してしまった場合、会社の責任は重大です。

なお、万一、不幸にも労災が発生してしまった場合は、アルバイトも労災保険による医療費の補償や、休業補償などを全面的に受けることが可能です。

アルバイトも貴重な戦力

【ポイント7】 同一労働・同一賃金

働き方改革法の一環として、同一労働・同一賃金のルールが大企業は2020年から、中小企業は2021年から適用されます。同一労働・同一賃金のルールとは、正社員・契約社員・アルバイトなど雇用区分は違っていても、実態として同じ仕事に従事しているならば、同じ賃金を支払わなければならないということです。

正社員は月給制、アルバイトは時給制という給与体系の違いは許されますが、時給換算して両者を比較した場合、時給水準は同等でなければなりません。諸手当についても原則的には同一待遇が求められます。

加えて、「正社員は賞与・退職金あり」「アルバイトは賞与・退職金無し」で当然という、一種の社会的コンセンサスがありました。ですが、直近でアルバイトに賞与を支給しなかったことを違法とした判決(2019年2月15日 大阪高裁)、長年勤務した契約社員に退職金を支払わなかったことを違法とした判決(2019年2月20日 東京高裁)が相次いで出されました。

まさに、同一労働・同一賃金を先取りした判決と言えるでしょう。すでに、実務上は同一労働・同一賃金の時代が始まっています。

キャリアプランの違い、責任の重さ、転勤の有無などに基づく合理的な待遇差は認められますが、アルバイトと正社員で説明のできない待遇差がある会社は、早急に給与体系の見直しが必須です。

このように、アルバイトにもさまざまな法的権利があり、特にフルタイムに近い時間数働くアルバイトについては、キャリアプランの違いなどによる合理的な待遇差を除き、ほぼ正社員と同等の労働条件を用意しなければならないということです。

バイトテロの防止を含め、アルバイトにも正社員と同等の責任感や倫理観を求めるならば、やはり、まずは会社側がそれにふさわしい待遇を用意しなければならないのではないでしょうか。人手不足の続く現在、アルバイトは貴重な戦力です。しっかりとした待遇を用意して、バイトテロなどを防ぐことはもちろん、モチベーション高く働いてもらいたいものです。

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