年収500万円で「億り人」になる地味な方法

おカネはじっくり貯めると減りにくい(写真:Graphs / PIXTA)

私はこれまで30年近く、累計15万人以上のサラリーマンの資産形成のお手伝いをしてきました。この経験からわかっていることがあります。それは、ごく平均的な収入のサラリーマンでも、在職中に億単位の資産を築いた「億り人」(トレードだけでなくひろく投資全般で築いたという意味で)が少なくない、ということです。

億万長者への種銭は「社内の預金制度」で作る

「まさか!」と思われるかもしれませんが、これは事実です。それも親の遺産を相続したという類の話ではありません。億まではいかなくても、数千万円の資産形成をした人であれば、相当数存在します。年収500万円の人でも「その資格」は十分あります。そんな人たちに共通するのは以下の3つの鉄則です。

1)若いうちから給与天引きを行っていた

2)会社の制度をできるかぎり利用した

3)継続的に投資を行っていた

今回は、上記のうち1と2、特に意外と知られていない「有利な会社の制度」の活用についてお話ししたいと思います。

まず、「給与天引き」は、多くの人にとって資産形成のベストな手段といえます。この方法についてもう少し掘り下げてみましょう。資産形成の基本は、手もとのおカネを楽しみのために消費せず、将来のために蓄えることです。この基本が大切なのは誰もがわかっていますが、言うは易く行うは難(かた)しなのです。人間、無理をすることは続きません。ですから、「最も無理せずおカネを蓄えられる方法」が、給与天引きなのです。

給与天引きというと、多くの人は「そんなことか」と思うかもしれません。でも、最近流行の行動経済学でも、この給与天引きは極めて合理的なやり方だといわれています。

メンタルアカウンティングといって、心の中にはいくつもの会計勘定が別々に存在します。欲しいものを我慢しておカネを蓄えるのは、人間の自然な感情に反することです。そこであらかじめおカネを見えなくしておく、つまり最初から蓄えるべき分を天引きしておけば、それは別勘定として最初からなかったものになります。

たとえば、手取りの20万円で生活していた人が、2万円を天引きして18万円で生活を始めると、初めは少し窮屈に感じると思います。でも、人間は不思議なもので、しばらくすると、その金額で生活するのに慣れてしまいます。その結果、2万円の存在をすっかり忘れてしまい、「知らず知らずのうちに貯まっていた」ことになり、それが積もり積もると、かなりの金額になるのです。

おカネはある程度貯まると減らすのが惜しくなり、今度はそれを使うことに抵抗感が生まれます。1万円札で持っている間は崩すのが惜しいけれど、いったん崩すとあっというまになくなってしまうのとよく似ています。もちろん天引きでなくても、銀行口座からの自動引き落としでも一向にかまいません。

なぜ会社の制度を利用したほうがいいのか

この「給与天引き」に加えて、2つめの「会社の制度を利用する」という方法を活用することで、おカネが加速度的に貯まっていくのです。

その理由は条件のよさです。会社が契約しているものは、個人で契約するものよりも金利の条件や保険料などが有利だからです。さらに、保険にしても貯蓄にしても、会社の制度は、営利ではなく社員の福利厚生を目的としています。したがって、市販の金融商品を利用するよりもずっと有利に活用できるのです。では、①貯蓄、②保険、③融資という3つの視点から考えてみましょう。

まず代表的な貯蓄は、かつて社内預金と呼ばれていた「社員だけが利用できる高金利の預金」で、これは一般の銀行預金よりもかなり高い金利がつきます。ただ、ここ最近、社内預金という制度が廃止されている会社が多いといいます。しかし、同じような制度が形を変えて存在しているようですから、一度調べてそうした制度があるようなら、ぜひ利用すべきです。

そして、多くの人が利用できるのが財形貯蓄制度です。これには3種類あり、貯蓄目的や積立条件などが異なります。まずは使い途を制限しない「一般財形」、次に住宅取得やリフォームに使途を制限した「住宅財形」、60歳以降に老後資金として5~20年に分割して年金形式で受け取る「年金財形」といった目的別貯蓄。これらは利子が元利合計550万円(保険契約の場合は払込額385万円)まで非課税となります。

非課税制度でいえば、最近、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)が話題ですが、もともとこうした非課税制度はかなり前からありました(財形は1971年から)。会社によっては、社員の資産形成をサポートするために奨励金を出していることもありますから、財形貯蓄制度のある会社に勤めていれば、大いに活用すべきです。

さらに、勤務先に団体保険があれば、生命保険、損害保険ともに、個人で契約する民間の保険会社や共済よりも条件が有利なことが多いので、こちらを利用することをお勧めします。その理由は、会社の団体保険は、保険の制度運営に必要な付加保険料(経費率)が低く抑えられているからです。付加保険料の多くが販売員への報酬などに充てられることを考えると、営業経費がほとんどかからないのであれば、安くなるのは当然といっていいでしょう。

時間をかけて増やしたおカネは減りにくい

融資については、会社に社内融資制度があれば、金利が優遇されていることが多いので、必要な際は活用すべきです。加えて、金利の一部を会社が負担する「利子補給」を行っているケースも多いようです。ただし、現在のような低金利では、それほど大きな差にはならないでしょう。ですので、現況では、それほど利用価値がないかもしれません。こうした社内制度は、春先に申し込みを受け付けることが多いので、この時期、社内の通達などに注意しておいたほうがいいでしょう。

ここまでお話ししてきた社内の制度は、ある程度規模の大きな企業に勤めている人でないと利用できないのも事実です。実際は、社内制度や団体保険はおろか、給与天引きすらしてくれない企業のほうが多いと思います。

では、そうしたケースの場合はどうすればいいのかというと、「金融機関」に天引きをしてもらい、「税制優遇があって引き出すのが難しい」制度を利用すればいいのです。具体的には、給与振込口座からの自動引き落としを使って、iDeCoやNISA等の非課税口座を活用することです。

私が今まで見てきたり、話を聞いてきたりしたサラリーマンで、数千万円以上の資産を作っている人は、例外なく、こうした非課税制度を利用しています。なかには、相続で大きな資産を手にしたり、仮想通貨やFXなどでの短期的な投機で大きく儲けたりした人もいましたが、得てして、おカネを散財してしまい、いつの間になくなってしまったという人も多いのです。急に増えたおカネは急に減り、ゆっくり時間をかけて増やしたおカネは減りにくいという法則性があるような気がします。

今回、「3.継続的に投資を行っていた」についてはお話しできませんでしたが、大きな資産を作るには、種銭を少しでもつくった後はこれが極めて重要になってきます。次回は、この「継続的な投資」について詳しくお話ししていきます。

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