靴通販「ロコンド」急成長でも株価急落のワケ

靴のネット通販で急成長するロコンドは3月、東京・原宿に旗艦店をオープンした。テレビCMの積極投入で2019年2月期は営業赤字となる見通しだ(記者撮影)

30~40代の女性をターゲットに、靴を主力とする通販サイト「LOCONDO.jp」を運営するロコンド。順調に業績拡大を続けてきた同社の株価が4月16日に急落した。同日の終値は前営業日比300円(20.63%)安の1154円。翌17日も下げが続き、終値は前日比56円(4.85%)安の1098円となった。

デヴィ夫人が出演するCMを放映

株価下落のきっかけは4月13日の決算発表だった。同日発表した2018年2月期決算は、売上高39億円(前期比37.3%増)、営業利益3.2億円(同68.9%増)と順調そのもの。だが、今年度に当たる2019年2月期の業績見通しについては、営業損失10億円(売上高の予想は非公表)と、赤字に転落する計画を発表したのだ。営業黒字化を達成して2年、安定した成長軌道に乗り始めた矢先での赤字予想に対し、株式市場が大きく反応した。

営業赤字を見込むのは、テレビCMの投入で広告宣伝費が増えるからだ。CMは2年にわたり展開する予定で、複数のパターンを作成。今年度と来年度、最大で13億円ずつのCM関連費用を計上するという。CMによる宣伝効果も織り込み、商品取扱高自体は今年度、150億円(前期比58%増)を計画する。

同社は3月10日から、タレントのデヴィ夫人が出演するCMを放映。巨大なハイヒールに座ったデヴィ夫人が、頭上にもハイヒールを載せた状態で登場し、「靴を買うならロコンド」のせりふが最後に流れるという内容だ。「LOCONDO.jp」の主要顧客である35~49歳の女性の視聴者が多い番組を中心に積極投入する。

ロコンドは2010年に設立され、2011年からサービスを開始。社長を務める田中裕輔氏は2003年に一橋大学を卒業した後、マッキンゼー勤務を経て、2011年にロコンドの社長に就任した。

他社との差別化で当初から打ち出してきたのが、返品無料サービスだ。衣料品などのEC(ネット通販)は、「試着ができない」障壁が立ちはだかり、特にフィット感が重視される靴は、ネットでの販売が難しいといわれる。そのためロコンドは、無料で返品やサイズ交換を受け付け、自宅で試着してもらう感覚での購入を促すことで、リピーター顧客を獲得してきた。

百貨店などに入る中高価格帯のブランドも数多く取りそろえ、業績は順調に拡大。2017年3月には東証マザーズへの上場を果たし、商品取扱高は右肩上がりの成長を続けている。

「認知度はゾゾさん水準を目指す」

上場から1年。ようやく安定的に利益を稼げる状態に入ったこのタイミングで、テレビCMを展開するのはなぜなのか。4月16日に本社で開かれた決算説明会では、莫大な先行投資を疑問視する質問が複数出た。

サイトの主要顧客は都市部に住む30~40代の女性だ(写真:LOCONDO.jpホームページより)

最大の狙いは、認知度向上だ。同社の顧客はリピーターが圧倒的に多く、今後の成長に向けては新規顧客の取り込みが課題となる。国内のファッションECで1位に君臨するのは、スタートトゥデイが運営するゾゾタウン。ロコンドと比べ顧客年齢はやや若く、商品単価も低いため、ターゲット層は多少異なるが、CM投入で認知度をゾゾに匹敵するレベルに押し上げることをもくろむ。

「あくまで当社の強みは靴で、ゾゾタウンと同じになるつもりはまったくない。ただ、認知度や取扱高はゾゾさん水準を目指す」(ロコンドの田中社長)

上場による資金調達で現預金は約30億円に増え、投資できる体制も整った。CMを今後2年間投入することを前提に、会社側は2019年2月期に10億円の営業赤字、2020年2月期には営業益均衡圏を見込む。そして2021年2月期には営業利益30億円と、約3億円だった前2018年2月期と比べ、10倍に拡大させる計画だ。

「(今回の計画に)いろいろと批判があることは十分理解している。株価を見ても、批判的な声があると承知している」。決算説明会で田中社長はそう受け止めながらも、CMの投入は3~5年後の利益や株価を最大化するための最適な方法との認識を示した。

ツイッター上でのやり取り

4月13日の決算発表後の週末には、田中社長が自身のツイッター上で、決算の詳細について、ツイッター利用者からの質問に逐一答える場面もあった。やり取りの中で田中社長は、「株主は皆、同じ船に乗っている仲間。今回私が指し示した航路に対し、志を共有する『同志』が結束するのがあるべき姿だ」と持論を展開し、中長期的視点での戦略の妥当性を強調していた。ただ、4月17日早朝に田中社長のツイッターアカウントは削除されたようだ。

ロコンドの田中裕輔社長。決算発表後の週末はツイッター上で業績に関する多くの質問に答えた(記者撮影)

3月の速報値ベースでの同社EC事業成長率は、前年同月比45%のプラスと好調な出足となった。CMの本格的な効果の発現は今年度の下期以降を見込むが、会社が計画するような高水準での成長率を維持していくことは容易ではない。

欧米では日本以上に靴のネット通販が浸透しているとはいえ、地理的条件の違いや物流事業者の人手不足の問題もあり、国内でどこまで伸びしろがあるかは不透明だ。CMという真正面からの宣伝手法をテコに結果を出し、株式市場からの支持を得ることはできるか。

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