「共働き高年収家庭」はおカネが貯まりにくい

共働き夫婦なら年収1000万円超の世帯も珍しくないが、意外におカネが貯まらない家庭は多い。赤字体質を黒字体質に変える「3つのステップ」とは?(写真:マハロ/PIXTA)

今回は、結構稼いでいる共働き夫婦なのに「まったくおカネが貯まらない!」という30代共働き夫婦からの相談です。相談者は東京都にお住まいの小山咲恵さん(34)。夫は38歳の会社員で、4歳のお嬢さんがいます。小山家の年収は合算で1000万円超あり、「手取り年収」も約870万円。なのに、現在の世帯の貯蓄額は約300万円。結婚後それなりに時間が経っているのに、この手取り額にしては、貯金は確かに少ない額です。

「貯められない」共働き夫婦には必ず理由がある

実は共働きだと、表面上の年収である「世帯年収」(手取り年収とは別)で1000万円超のケースはさほど珍しくはありません。しかし、「貯めていける家計」と、小山さんのように「まったく貯まっていない家計」と両極端に分かれます。読者の皆さんの中にも「貯められない共働き夫婦」は結構いらっしゃると思います。必ず理由があるので、家計の見直しについて、一緒に考えていきたいと思います。

相談内容を簡単にまとめます。小山家の手取りは前出のとおり約870万円。できれば「年間200万円は貯金したい」とのことです。しかし、独身時代からも含め、家族で計7つの保険に入り、現在年間57万3000円もの保険料を払っています。しかも、この保険ショップからは、さらに「貯蓄型保険」と「がん保険」の加入を勧められています。

どうやら「保険の入りすぎ」に問題があるようですが、それだけが「貯蓄できない原因」ではないようです。まず、保険についての内容を確認しつつ、次に、老後に一定水準以上で暮らせる額を割り出すための「必要貯蓄額」を計算して、それを達成するにはどうすれば良いのかを考えていきましょう。

小山家の「7つの保険」の中身を見てみます。「地震保険付き火災保険」、ご主人の「収入保障保険」「終身医療保険」「個人年金保険」、妻である咲恵さんご自身の「終身医療保険」と「個人年金保険」、そしてお嬢さんの「学資保険」です。

共働きなら、収入保障保険は「夫婦での加入」も

まず、地震保険付き火災保険は必要ですので、このまま継続してください。収入保障保険ですが、これも持ち続けて良いと思います。しかし、小山家は共働き。夫だけ加入している、というのはどうでしょうか。

妻は、夫が死亡すると夫の年収が850万円未満であれば、子どもの有無にかかわらず、遺族厚生年金を一生涯受け取ることができます(ただし、30歳未満の妻は、5年間の有期年金となります)。

しかし、もし共働きの妻が亡くなると、夫が遺族厚生年金を受け取れるのは、子どもの有無に関係なく、「妻の死亡時に夫が55歳以上」であることが条件です。妻の死亡時55歳未満で子どものいる夫は、夫が遺族基礎年金を、子どもが遺族厚生年金を受給できますが、共に子どもが18歳になるまでです。この点を考えると、必要ならば「夫婦の収入割合に応じて、互いに按分して保障を持つ」ことも検討すべきでしょう。

次に、終身医療保険。2人とも会社員ですので、今後ある程度の貯蓄ができたら解約を検討しても良いと思います。

さらに、個人年金保険は、平均年利回りを計算したところ、約0.65%でした。貯蓄性保険のデメリットについてはこの連載でも再三お伝えしていますが、貯蓄性保険は、非常に長い期間保険料を払い続けなければならない割には、おカネはあまり増えません。将来のおカネの価値は不確実なので、つねに割り引いて評価したいところです。率直に言うと、運用手段としてはまったく魅力的な商品ではありません。しかも、解約返戻金は微々たるものなので、「払い済み保険」にすることをお勧めします。

最後に、学資保険。これも連載で取り上げたことがありますが、平均年利回りは0.51%と魅力的な商品ではありません。しかし、見てみると、契約者がお嬢さんの祖父であり13年後が満期でした。これを贈与と考るなら、判断は分かれるところなので、そのままでもいいかもしれません(なお、終身保険は、保険証券の提示がなく、以前アドバイスをしたというファイナンシャルプランナーの勧めを尊重しています。また、現在勧められている貯蓄型保険とがん保険も、魅力が小さく、加入不要だと判断しました)。

さて、次は必要貯蓄額の計算です。小山さんは「保険の入りすぎが貯蓄できない原因」だと自己分析していますが、まずは必要貯蓄率を、人生の基本公式を使って、計算してみます。

人生設計の基本公式とは、一言でいえば老後(通常65歳)に「現役時代の何割の生活水準で暮らすか」(通常は7割)を決め、それまでに「手取り年収の何割を貯めるべきか」(=必要貯蓄率)を計算するものです。誰でも3分で計算できます。計算の仕方は、過去の記事「あなたは65歳までにいくら貯めればいいのか」をご覧ください。初めての読者の方は、このままケーススタディを眺めつつ、読み進めてください。

4歳のお嬢さんは、中学校からは私立が希望とのことで、それを前提に教育費は、余裕を持って1000万円と想定、「必要貯蓄率」を求めます。

小山咲恵さん(34歳)ご夫婦の家計
会社員 共働き
家計の今後の平均手取り年収(Y)950万円
(現在の手取り年収ではなく、残りの現役時代の年数も考え、これからもらえそうな年収を考えて記入します)
老後生活比率(x)0.75倍(老後、現役時代の何割程度の生活水準で暮らしたいかを設定します。小山さんは現役時代の75%)
年金額(P)380万円(2人共が60歳まで厚生年金とした場合)
現在資産額(A)-500万円(現在の貯金額300万円から教育費を1000万円と想定して、学資保険200万円をプラスした金額)
老後年数(b)35年(60歳から95歳まで生きると想定した年数)
現役年数(a)26年(小山さんは60歳まで働くことを予定しているので26年)

これらの条件を、「人生の基本公式」に当てはめて計算すると、「必要貯蓄率」は24.45%です。

これを毎月に引き直すと、毎月では約19万4000円。年間では、約232万3000円の貯蓄をしていけば、老後は小山家が望む、現役時代の約75%の水準、約44万9000円で生活することができます。これははたして可能でしょうか?

実は「年間貯蓄額は80万円程度」ということでしたが、よく聞いてみると、小山家の直近年の支出は、耐久消費財などの購入も頻繁で、毎月当たりに引き直すと約84万円。支出が手取り年収を上回っているとのことです。これだと、貯蓄からの取り崩しで「ちょっと貯めては取り崩し」の典型的な「おカネがたまらないパターン」のようです。

聞くと「ほとんどすべてをクレジットカードで支払っていて、何にいくら使っているのかを把握していない」とのこと。クレジットカードでの買い物は、未来のおカネを先に使っているということですので、本来なら、その分は使わずに、銀行口座に残しておかなければなりません。そうしなければ、引き落とされるといくらも残らず、またクレジットで買い物をするという自転車操業に陥っていまします。小山さんの状況はこれでしょう。まずはこの体質を直すべきです。

家計を正常化する3つのステップとは?

どうすればいいのでしょうか。「家計の立て直しには、次の3つのステップで実行してください」とお伝えしました。ボーナスで入ったおカネを上手に利用しながら、家計を健全化する方法です。具体的には以下の3つの手続きを踏みます。

(1)毎月の給料ではなく、直近の冬のボーナスを取り崩し、予定されている直近のクレジットカードの支払い分に充てる。

これで、いったんは「リセット」できるはずです。そして、当分クレジットカードを使うのをやめ、現金払いにしましょう。おカネを使う「痛み」を感じて、支出に敏感になりましょう。

(2) 毎月の給料が出たらまず、「必要貯蓄額」の「19万4000円」を別口座(貯蓄専用口座などを作る)に移す。

先取り貯金で、確実に貯めていきます。

(3) 年間の臨時支出を書き出す。

「毎月ではないものの、必ず支出するもの」を書きます。たとえば、レジャー費、年払保険料、固定資産税、冠婚葬祭費などです。そして、

(手取り年収 -(必要貯蓄額 + 年間臨時支出))÷12=毎月の生活費

を求めましょう。これが、小山さんが毎月使っていい金額です。今後は、毎月、この金額内で生活をすることを守りましょう。

まずは、この3つを実行します。これが、2018年から貯められる家計にするために今すべきことです。今は年始なので見直しにはもってこいの時期です。(3)で求めた「毎月の生活費」から、2人のお小遣いや食費をいくらにするかなど、しっかり話し合いをして決めるといいと思います。

いかがでしたか。小山家の例を見ればわかるとおり、貯められる家計にするためには意識改革が必要です。もし、読者の皆さんのなかでも、貯められない共働き家庭があったら、必要貯蓄率を計算したうえで、今後は、毎月最低1度は家計についての話し合いの場を持ち、必要貯蓄率が達成できたかを確認することをおすすめします。

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