経済・IT

ダメな営業は顧客の話をうまく聞けていない

自分ばかり喋っていてはいけません(写真:xiangtao / PIXTA)
営業、交渉力などの研修講師として5000人以上を指導してきた大岩俊之氏による連載「入社1年目の営業」。エンターテインメントコンテンツのポータルサイト「アルファポリス」とのコラボにより一部をお届けする。

商品を売り込みすぎて、売れなかった時代

アルファポリスビジネス(運営:アルファポリス)の提供記事です

こんにちは。ロールジョブの大岩俊之です。入社1年目の営業マンは、一番の仕事は「お客さまに商品を売り込むこと」だと思うのは当然のことです。しかし、興味を持ってくれないお客さまに対して一生懸命商品の説明をするのは、お客さまにとっては逆効果な場合が往々にしてあります。時として営業マンは、商品を売ろうとすればするほど、お客さまに引かれ、逆に、売れなくなってしまうことがあるのです。

私は初めて営業マンになった時、担当先を6社ほど受け持ちました。中には、大手メーカーもあり、1社だけで設計1部、設計2部、設計3部、開発、購買など、訪問する先はたくさんありました。前任者の先輩から、担当先を引き継いだ形なので、新しく新規開拓をするような、ゼロからのスタートではありませんでした。よって客先を訪問することは、それほど難しいことではありませんでした。しかし今思えば、これが若かりし私の営業マンとしてのあるべき姿を勘違いしてしまった原因でした。

私は定石通り、お客さまにアポを取っては定期的に訪問をすることを繰り返していました。最初のうちは挨拶を兼ねていたので、訪問すること自体は歓迎されていました。しかし、同じようなことを繰り返しているうちに、私はお客さまから歓迎されなくなってきたのです。時には、「特に今はおたくには仕事を発注する案件がないから、来てもらってもね~」と、言われるようにもなってきたのです。

これは、私がお客さまと会う度に、お客さまの話を聞かず、お客さまのためになる提案をするわけでもなく、ただひたすら、「自分が売りたい商品」「会社が売りなさい!」と言っている商品を、一方的に、お客さまに説明することを繰り返していた結果でした。

営業マンの仕事は「一生懸命売りたい商品を売り込むこと!」だと、勘違いしていたのです。そんな状態ですから、お客さまのところに何度通っても、商品は売れるようにはなりませんでした。ついには、お客さまが居留守を使うようになり、会うことすら難しくなってしまったのです。

この状況になって、私は始めて自分が今まで営業の仕事だと思ってやってきたことが、間違っていたことに気がつきました。お客さまに敬遠されていては、営業どころではありません。このままではいけないと思い直し、営業のやり方を変えることにしました。

売り込まないことで学んだ2つのメリット

私はお客さまに、商品を売り込むことをやめることにしました。しかし、商品を売り込まなくなってから、正直、お客さまと話すネタがなくなってしまったのも事実です。それまで商品の話しかしていなかったのですから、当たり前です。そこで私は、こうした状況を打開するために、お客さまを訪問した時に、営業のスタイルを工夫するようにしました。簡単に言えば、「売り込むこと」をやめてみたのです。すると意外なことに、「売り込み一辺倒」の時よりも、「売り込まないスタイル」の方が、営業マンとしてのメリットがあることに気がついたのです。

1つめのメリットは、自分ばかり喋って売り込むのではなく、お客さまの話を聞く耳を持てるようになったおかげで、お客さまのニーズをより正確に掴めるようになりました。商品の情報以外で話す内容がないので、まずは相手の話を聞く側にまわるしかありません。話を聞くだけであれば、こちらも黙って聞いていればいいのですが、私は、それだけでは飽き足らず、どのように工夫すれば、もっと相手が気持ちよく話せるようになるかを徹底的に研究しました。

非常に簡単なことですが、「相づち」「うなずき」だけでもかなり効果が出ました。「ええ、ええ」「なるほど~」と言うだけで、お客さまは、気持ちよく話をしてくれるようになるのです。そして、時々相手の言葉を繰り返す「オウム返し」です。これらを組み合わせて、話しを聞くようにしたのです。

実際にA社でこんな会話がありました。

:御社のデジカメやビデオカメラ、よく売れているみたいですね。
お客さま:他社より、コンパクトなのがいいみたいだね。
:なるほど~。
お客さま:最近デジカメにしてもビデオカメラにしても、どんどん小型になる傾向だから、搭載している部品も今までと同じ性能で小型にしたいんだよね。
:なるほど~、そうですよね。
お客さま:そうそう、おたくの電子部品も小さくならないの?
:そうなんです、目下弊社もその努力をしておりまして。
お客さま:ハンダ付けする足(リード)の部分が横に出ていて邪魔だから、筐体(きょうたい)からはみ出ないようはできないの?
:はい、弊社でも他の部品では、そのような技術がすでにあります。
お客さま:実際に、新しい半導体はそういう構造になってきているよ。
:では次回、設計担当者連れてきますので、詳しくお話をさせてください。

と、話しを聞いているだけで、いろいろと新たなニーズの開拓に繋がることがわかったのです。実際に、この話は約1年かけて進み、社内で製品化され、業界初の電子部品として採用されることになったのです。

こうしてお客さまの話を聞き、そこにある潜在的なニーズが分かるようになると、お客さまにとって「かゆいところに手が届く」営業マンになります。的確に、お客さまのニーズを掴めるようになって、ピンポイントで商品の提案ができるようになってきたのです。お客さまのニーズにマッチした商品を提案するので、お客さまも前向きに提案した企画を検討してくれるようになり、結果的に売上が上がるようになりました。

商品以外で話す内容を探すようになった

2つ目のメリットは、商品以外で話す内容やテーマを、必死で探すようになったことです。お客さまのことは、ホームページなどネットの情報を中心に、徹底的に調べるようになりました。お客さまとの話の中で出てきた話題は、どんな内容でも自分の知識が浅いときは、後から必ず調べるクセがつきました。

日々の気になるニュースから始まり、人気の雑誌、流行のドラマ、スポーツニュースなどのチェックを、毎日欠かさなくなりました。あまり好きではなかった新聞ですが、自腹で日本経済新聞、中日新聞、業界紙である電波新聞と、3紙を購読するようにもなりました。

特に効果があったのが、「女性雑誌」を読むようになったことです。お客さまの担当者は、男性だけではなく、女性の方もいます。男性の担当者が忙しい時には、女性アシスタントの方と話す機会も多々ありました。そんな時に「女性雑誌」のおかげで、話題に困ることがなくなったのです。女性はかなりの情報通です。男性担当者に聞けない話であっても、女性アシスタントから教えてもらった情報のおかげで、商談が有利に進んだことは、幾度となくあります。

当然ですが、営業マンは「売上を上げること」が目標です。しかし、そのための方法は、営業マンが一方的に商品の話をすることではありません。いかにお客さまのニーズを的確に掴み、お客さまのためになる提案ができるかどうかが、できる営業マンになる秘訣なのです。

とはいえ、人は急には変われません。まずは、「商品の売り込みをしない」と決めることで、自然と「お客さまの話しを聞く」しかなくなる状況にしてみましょう。すると「お客さまのニーズ」が、自然と分かるようになってきます。

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