米国の「大幅利下げ」観測、堅調な雇用情勢受け大きく後退…NY市場で円安・株高進む

 【ワシントン=田中宏幸】米労働省が4日発表した9月の雇用統計は、就業者数の伸びが市場予想を大きく上回った。雇用情勢の堅調さが示されたことで市場では米連邦準備制度理事会(FRB)が再び大幅な利下げに踏み切るとの見方が大きく後退し、米金融市場では円安・株高が進んだ。

 9月の雇用統計では、景気動向を反映する非農業部門の就業者数が前月比25・4万人増と、市場予想(14・8万人)を大幅に上回った。7月と8月の数値も計7・2万人上方修正されたほか、失業率は4・1%と2か月連続で改善した。

 これを受け、4日のニューヨーク外国為替市場では、対ドルの円相場は一時、1ドル=149円台に下落。8月中旬以来、約1か月半ぶりの円安・ドル高水準となった。米債券市場では、長期金利が4%近くまで上昇し、ニューヨーク株式市場では、ダウ平均株価(30種)の終値は4日ぶりに最高値を更新した。

記者会見するFRBのパウエル議長(9月18日、ワシントンで)=田中宏幸撮影

 FRBは9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で4年半ぶりの利下げに踏み切った。インフレの再燃よりも雇用の下振れリスクの方が高まっているとして、利下げ幅は通常の倍にあたる0・5%とした。

 市場では労働市場の冷え込みを見越してFRBが再び0・5%の利下げを行うとの観測も浮上していたが、9月の雇用統計を受け、こうした見方は後退した。

 市場関係者の見通しを反映する米シカゴ・マーカンタイル取引所の予想データでは、11月のFOMCで0・5%の利下げを見込む投資家は0%で、0・25%は97%を超えている。

 パウエル議長は9月30日の講演で、米経済は堅調な状態にあり、利下げを「急ぐ必要はない」と述べていた。11月と12月の2回の会合で0・25%ずつ、計0・5%の利下げが適切との考えだ。

 もっとも、11月のFOMC前に発表される10月の雇用統計は、米南部を襲った大型ハリケーンなどの影響で大幅に減速するとの観測も浮上する。FRBは労働市場の動向を見極めながら、利下げ幅を慎重に判断していく方針だ。

ジャンルで探す