物流施設に大型投資続々…運転手不足の深刻化で都市部人気、今後は「立地以外の工夫が重要に」

 物流施設への大規模な投資が相次いでいる。残業規制強化でトラック運転手不足が深刻化する「物流2024年問題」への対応として、輸送効率が高い大型で都心に近い施設や、次世代の輸送手段を想定した機能を導入するケースが増えている。ただ、人気エリアは地価が上昇しており、建設費高騰などの課題もある。(橋谷信吾)

◇都内最大

三井不動産と日鉄興和不動産が共同開発した物流施設。ドローンの実験場も併設する(2日、東京都板橋区で)

 三井不動産は2日、東京都板橋区で日鉄興和不動産と共同開発した物流施設の完工式を開いた。敷地は日本製鉄の工場跡地で、6階建ての施設(延べ床面積は25・6万平方メートル)は都内最大で、大規模な冷凍・冷蔵設備を備える。周囲5キロ圏内に100万人超が住む都市部に位置し、首都高速の出入り口まで約3キロと利便性が高い。ヤマト運輸が入居するなど、ほぼ満床という。

 ドローン配送の実験場も整備し、新興企業の利用を見込む。三井不動産の篠塚寛之ロジスティクス本部長は「需要は旺盛で旧型の施設からの移転が進む」とみる。今後、冷凍・冷蔵設備も備えた施設に約1000億円を投じる方針だ。

 三菱地所が26年の完成を目指す京都府城陽市の物流施設は、建設中の高速道路に直結する。将来を見据え、遠隔監視で自動運転する「レベル4」の無人運転トラックが出入りできる仕組みも導入する。

◇建設費上昇が課題

 郊外型が多い物流施設だが、最近は利便性が良く、都市部に近いエリアの人気がさらに高まっている。9月発表の基準地価では、千葉県船橋市と市川市の東関東道に近いエリアが前年比で3割近く伸びた。兵庫県尼崎市の高速道近くの地点も約2割上昇し、大阪圏の工業地でトップとなった。

 不動産サービス大手CBREによると、首都圏、中部圏、近畿圏、福岡圏の物流施設の新規供給面積は23年に140万坪(1坪=約3・3平方メートル)を超えた。コロナ禍で高まった通販需要を取り込むため、新規開設が相次いだ。25年も117万坪の供給が見込まれており、高い水準が続く。

 課題は建設費の上昇だ。「立地や施設に特徴がないと、建設費上昇分を賃料に反映しにくい」(不動産大手)といい、エリアの選別が進む可能性がある。首都圏の物流施設では、24年4~6月期の空室率は前年同期比1・5ポイント高い9・7%だった。立地が悪く、旧式の施設などを避ける動きが出ている可能性がある。

 物流施設の動向に詳しいコリアーズ・インターナショナル・ジャパンの川井康平氏は「首都圏と関西圏を結ぶ高速道沿いは今後も人気が継続する。ドライバーが利用しやすい施設づくりなど、立地以外の工夫の重要性が今後さらに増していく」と指摘する。

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