〈エクシア合同会社が破産〉9000人から850億円の出資も…出資者を嘲笑うかのようなSNSを配信し続ける代表者の大胆不敵

負債総額は800億円とも…船井電機「衝撃な破綻」に残る謎…一連の倒産劇の主導者は何者なのか?〉から続く

エクシア合同会社が10月18日に東京地裁から破産開始決定を受けた。約9000人から850億円もの出資を受けていたという。エクシアの代表・菊地翔氏は今回の破産で雲隠れをしているのかといえば、そうでもない。

【画像】菊地氏は驚異的な投資成果あげるトレーダーだった

SNSで積極的に情報を発信し、「債権者破産でラッキー」というコメントを残したのだ。投資詐欺の疑惑さえ出ているエクシアだが、なぜこれほどまでに大胆な態度を見せているのだろうか?

代表は2520%の投資成果を出すトレーダー

エクシアの代表・菊地翔氏は東京モード学園卒業後、独学でFXトレードのノウハウを習得。2015年4月にエクシア合同会社を立ち上げた。

テクニカル分析から世界情勢、経済指標などのファンダメンタルズ分析はもちろんのこと、月の満ち欠けや惑星配置などとマーケットの相関を利用する金融占星術までを駆使するというから驚きだ。

当時のプロフィールには、わずか15営業日で利益率2520%という驚異的なトラックレコードを記録したスーパートレーダーとある。

これが本当であれば、凄まじい投資成果だ。

例えば、映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』にモデルとして描かれている、実際に存在したヘッジファンドのサイオン・キャピタルは、サブプライム危機でアメリカの不動産バブルが崩壊し、世界中の株が大暴落する中で空売りを仕掛け、大儲けしたことで知られているが、このトレードのリターンは490%前後だったと言われている。

「世紀の空売り」と呼ばれるこの伝説的なトレードを、菊地氏はわずか15日で軽く凌駕していることになるのだ。「スーパートレーダー」を自称するのも頷ける話である。

エクシアは1口100万円で出資を募り、2016年は利回りが97.4%だったという。目を疑うような数字だ。

出資者を集めていた当時、エクシアに関する大量のアフィリエイトブログが存在しており、手数料なしで月利2~3%は簡単に稼げるというような体験談・伝聞が溢れかえっていた。

極限まで手数料を削った人気の投資信託eMAXIS(イーマクシス)シリーズでさえ、一定の信託報酬が発生する。投資成果が高いヘッジファンドともなれば、運用手数料で1~2%、成功報酬なら10~20%が発生するのが当たり前の世界なのにも関わらずだ。

そのようなエクシアのセールストークは夢のような内容だが、今回の破産によってどれだけ資金が戻るのか不透明な状況になった。出資者の中には8700万円を投じた夫婦もいると報じられており、結末はあまりに残酷だ。

エクシアの巧妙なスキームとは?

エクシアは2022年から出資者が出金できないトラブルが頻発しており、混迷を極めていた。その年に被害弁護団が結成されている。

しかし、メインスポンサーになっていた2022年の大型ファッションイベントを予定通り開催するなど、派手な活動を行って出資者の反感を買っていた。しかも、そのイベントには菊地氏の元交際相手として有名なキャバクラ嬢が出演していたのだ。

投資詐欺が疑われれば、雲隠れするのがお決まりのパターンだが、菊地氏はSNSなどで情報発信を続けていた。

よほどの自信があったようにも思えるが、その背景にはエクシアが構築した巧妙なスキームがある。

エクシアは合同会社の社員権で集めた資金をトレードで運用していた。出資者はファンドに出資をするのではなく、社員権の取得契約を結んでいたのだ。これ自体は、違法でもなんでもない。

そもそも、合同会社は全員で出資をし、共同で事業を営む会社形態だ。株式会社は所有と経営が分離されているが、合同会社はそれが一体となる。

合同会社で出資金を運用すると、金融商品取引業の登録が必要ない。つまり、エクシアは法律に沿って活動をしていたというわけだ。

そのため、エクシアは投資利回りではなく、返戻率と読んでいた。

菊地氏はInstagramのライブ配信にて、出資した金額はエクシアの資本剰余金に計上され、そこから払い戻しがされていると説明しており、これが返戻率と呼んでいた所以である。

運用を行っているように信じ込ませながら、出資者への配当が別の出資者によって充当されている仕組みをポンジスキームというが、これは明確な投資詐欺だ。

しかし、エクシアは出資した資金は資本剰余金となり、合同会社の利益(利益剰余金)が配当原資となっていた。

それが社員(出資者)に還元されるという形態をとっていたのだ。

金融庁はエクシアのトラブルが表面化した2022年、合同会社の社員権取得の勧誘に注意するよう呼びかけた。今後は規制が強化される可能性もあるが、エクシアを投資詐欺だと断ずるのは微妙なところだろう。

債権者破産で経営責任がどこまで追求されるか

しかしながら、エクシアはグレーな行為を行っていた痕跡もある。

合同会社はFXなどに投資をする場合、国内有価証券投資事業に該当するため、500名以上を募集する場合は有価証券届出書の提出が必要なのだが、エクシアは届出書を提出していない。

エクシアは9000人から出資を受けていたため、提出義務違反となる可能性もある。

ただし、それに抵触したからといって、厳しい罰則を受けるかといえばそうでもないだろう。

エクシアのスキームは実に巧妙に構築されているのだ。

今回の破産においても、SNSの配信にて債権者破産でラッキーだったと菊地氏は開き直っている。

さらに視聴者の「破産したらどうなるのですか?」という問いに対しても、「出資者のお金は全部なくなるね」と平然と答えている。

確かに、エクシアの破産は債権者破産だった。

債権者破産とは、債務者ではなく債権者が破産の申し立てを行うものだ。これには、破産するにあたって裁判所に支払う予納金が必要。被害弁護団は出資者に説明会を開き、1000万円を用意したという。

菊地氏は自分が費用を出さずに破産できたことをSNSで喜んでいたが、債権者には予納金というプラスアルファの資金が必要になったのだ。

しかし、喜んでいられるのも今のうちかもしれない。

債権者破産をした場合、資産が外部に流出、秘匿されていないか破産管財人が調査するなど経営実態が調査される。また、経営者は破綻の原因や経営責任が追及されるのだ。

今後、同様の被害を出さないためにも、真相解明を行う必要があるのは間違いない。菊地氏がどこまで調査に協力するのか注目される。

取材・文/不破聡 写真/Shutterstock

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