コメ兵、海外店や越境ECに注力 複数のM&A実施
コメ兵ホールディングス<2780>は宝石、腕時計、バッグなどの装飾品を買取り、個人・法人向けに販売するリサイクルショップ事業を展開している。2021年3月期までは売上高400~500億円台で推移していたが、「KOMEHYO」ブランドの買取専門店を出店し急成長、2024年3月期の売上高は1195億円となった。そして2019年末以降、5件のM&Aを実施し、小規模の同業者やオークション事業者、越境ECに強いリサイクルショップを買収した。従来型の実店舗ビジネスのみならず、海外市場やオークション市場を開拓する狙いがある。
コメ兵のビジネスモデル
コメ兵HDはタイヤ・ホイール事業や不動産事業なども手がけているが、業績のほとんどを占めるのが「ブランド・ファッション事業」である。同事業では主に個人から買取り、自社店舗やオークションを通じて個人・法人向けに販売するリサイクル事業を行っている。主力商材は、宝石・貴金属、腕時計、バッグの3種類で、衣類品の買取販売も行う。リユース市場ではゲオやブックオフが最大手だが、ゲオは服やゲーム、ブックオフは本に特化している一方、コメ兵は高級品に強い。
2024年3月期末時点で国内215店舗、海外19店舗を展開。国内店舗の内訳は販売店10、買取専門店160、買取併設販売店45であり、主に「KOMEHYO」ブランドの店舗を運営している。売上高に対する個人/法人の比率は52%/48%と半々程度。2024年3月期の海外売上高比率は9.8%で、国内でも免税比率は13.2%である。
前中計より出店攻勢
2014年3月期に売上高400億円を達成後、売上高はしばらく横ばいで推移していたが、後述の通り2019年末には金沢地盤のブランドオフを買収。2022年3月期を起点とする前中計から出店攻勢をかけ、規模は急成長した。コロナ禍が落ち着いた一方、同社はリユース市場が拡大する見通しを立てていた。2021年3月期から2024年3月期までの間、売上高および店舗数は下記の通り推移している。
売上高700億円、営業利益28億円という24年3月期の目標は悠々と達成した。後述するが、現中計でも強な計画を立てている。
リユース市場は国内外で成長し、今後も拡大が続く見込みだ。オンラインでの中古品売買が普及したことで、中古品に対する抵抗が消費者の間で薄れたことが主要因と言われている。持続可能性への意識に関する意見も聞かれるが、単に「高いものをできるだけ安く買いたい」という心理が大きい。そもそもコメ兵が得意とする高級品の市場は新興国の成長で拡大しており、一次流通の時点でパイが膨らんでいる。
M&Aでエリア拡大、事業拡大
近年では新規出店のみならずM&Aを通じて事業を拡大した。2019年末以降、コメ兵HDが実施したM&Aは下記の5件である。
2019年にエリア拡大を目的として買収したブランドオフは金沢地盤の買取販売業者である。コメ兵は東京・名古屋を中心としており、今後のインバウンド増加を見据えて金沢エリアを狙った可能性がある。インバウンドに強く、オークション事業も展開していたが、インバウンドバブルの崩壊で経営難に陥っていた。現在はK-ブランドオフを運営企業として「KOMEHYO」と同様の店舗を展開している。
2022年に買収したセルビーは宝石に強く、買収目的に関してコメ兵HDは「ジュエリーの販売、買取強化」と発表している。また、セルビーは自社開発の販売/在庫システム「OMRIS」を提供している。コメ兵はOMRISを用いた新しいリユースプラットフォームの構築を目指しており、新サービスを開発する上でシステムを欲していたとみられる。
そして2024年は3件のM&Aを行った。RECLOは中古ブランド品の買取・販売事業を行うECサイト「RECLO」を運営するほか、中国でECサイト「Tmall」で顧客を持ち、越境ECのノウハウを有している。10月に買収したアールケイエンタープライズは神奈川を中心に国内8店舗を有するほか、香港に1店舗を構える。神奈川エリア拡充もあるが、香港店に価値を見出したのかもしれない。日本の企業が中古品を海外向けに販売する場合、(1)中間業者に売る方法と(2)現地にショップを構える方法の2パターンがある。上記のM&Aによって越境EC及び海外店舗を取得する手法は(2)に則ったものといえるだろう。
越境ECや海外店舗取得の動きに出ているのは、国内よりもリユース市場のポテンシャルが高いためだ。急速な国内の人口減少を前に、海外事業で基盤を安定化を図り、拡充する。コメ兵は2030年までの中古品市場の見通しとして、米国は2倍、中国は5倍に膨らむという予想を立てている。中国には旗艦店を出店したほか、北米には現地法人を構えるなど、M&Aによらない直接的な投資も行っている。
Rs-JAPANは国内で買取専門店「ブランド楽市」や法人オークション「Rs-Auction」を運営する。買収に関してコメ兵は「在庫の効率化、法人オークションの拡大」を目的としている。このように近年のM&Aではエリア拡大を目的に同業者を買収する動きが見られる。そして、規模だけでなく横幅を広げるべく、海外向け事業者やオークション事業者を取得していることが分かる。
リユース市場は国内外で成長が続く
今後の市場環境についてコメ兵は国内外ともに拡大する予想を立てている。2028年3月期は強気の目標を設定しており、売上高2500億円、営業利益150億円を見込む。海外売上高比率の目標は15%。そのうえで下記3つのビジネスを定義し、(1)→(2)→(3)の順に事業成長を進める。
(1)売買ビジネス
(2)流通関与ビジネス
(3)市場成長関与ビジネス
(1)は従来型の店舗を通じた買取・小売卸売販売事業で、(2)は主にオークション事業である。(3)は具体的なサービスを確立していないものの、OMRISを通じたリユースプラットフォーム構築を挙げている。そして店舗数・エリア拡大とオークション運営に関してはM&Aとの相乗効果が大きいとしている。買取拠点を増やすほど、販売店やオークションにおける商品数をさらに充実させることが可能となる。エリア及び事業拡大を目的に、国内外の同業者やオークション事業者のM&Aが注目される。
文:ライター 山口伸
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