【ノジマ】好環境とM&Aが追い風に VAIOも貢献へ

家電量販店大手のノジマ<7419>が、M&Aで攻勢をかけている。

同社は2025年1月に、ソニーを源流とする国産パソコンメーカーのVAIO(長野県安曇野市)を傘下に収める。

これに先立つ、2023年にはパソコンや携帯電話などの情報通信機器を販売するマレーシアのThunder Match Technology Sdn. Bhd.(TMT)を子会社化したほか、同年には携帯販売大手のコネクシオをTOB(株式公開買い付け)で傘下に収めている。

取得価格については、マレーシアのTMTは非公表だが、コネクシオは803億円ほど、VAIOは112億円ほどで、この2社だけで1000億円近くに達する。

一方、ノジマの2025年3月期は、2024年3月期に9%落ち込んだ営業利益が増加に転じる見込みで、この増益の要因の一つにTMTとコネクシオの貢献がある。

VAIOの2024年5月期の売上高は421億2900万円、当期利益9億8500万円。これら数字が加わることで、今後のノジマの業績にプラスに働くことは間違いない。

家電量販店業界は来店客数の増加やインバウンド(訪日観光客)需要の増加によって、大手はいずれも今期の業績好転を見込む。

ノジマには、こうした好環境下でコネクシオやVAIOなどのM&A企業の貢献が加わることになるわけで、同社には当面、追い風が吹くことになりそうだ。

10年間でM&Aは20件近くに

ノジマは1959年に神奈川県相模原市に「野島電気工業社」として創業した。その後オーディオ専門コーナーを設置した郊外型専門店を出店したほか、神奈川県や東京多摩八王子地区に集中的にロードサイド店舗を出店するなどして規模を拡大。1989年には売上高が100億円を突破した。

1991年に社名を現在のノジマに変更し、携帯電話の各通信キャリアを集めた「でんわ館」や、パソコンのアウトレット専門店などを出店するとともに、2005年には人材派遣会社の「OTS」と、映像DVDや音楽CD販売の「WAVE」をグループに迎え入れるなどした結果、翌2006年には売上高が1000億円を超えた。

2014年に携帯電話販売会社のケンウッド・ジオビットを子会社化した後は、M&Aに拍車がかかり、同年には企業教育研修コンサルティングのビジネスグランドワークスを、翌2015年には携帯電話販売代理店運営のアイ・ティー・エックスを子会社化。

さらに2017年には 富士通傘下でインターネット接続事業を手がけていたニフティを子会社化。そのあともM&Aにブレーキはかからず、2025年のVAIOまで、およそ10年間で主なM&Aは20件近くに達する。

ノジマの沿革と主なM&A

ノジマが公表している沿革と適時開示情報で作成

VAIOの魅力を国内外に発信

業績に影響を与えている直近のM&Aである2023年のコネクシオは、携帯電話市場の成熟や消費者の買い替えサイクルの長期化などの課題に対応するのが狙いで、同社をグループ化することで店舗運営やデジタル化投資の効率化、物流、店舗開発などのシナジー(相乗効果)を見込む。

ノジマはキャリアショップ(携帯電話販売店)事業を家電専門店事業と並ぶグループの中核と位置付けており、期待の大きさが株式取得金額(803億円)の大きさに表れていると言える。

また、同年に子会社化したTMTは、経済成長が続くマレーシア市場での事業拡大が狙いだ。ノジマは2019年に買収したシンガポールの家電、家具小売りのCourts Asiaを介して、マレーシア市場に進出しており、このM&Aでマレーシア国内での物流や配送関連業務の統合、情報通信機器の拡充などを見込む。

2025年1月にグループ入りする予定のVAIOは、ソニーが1997年に立ち上げたパソコンメーカーで、2014年にソニーが不採算事業として日本産業パートナーズに売却した経緯がある。

ノジマはVAIO買収について、両社の顧客基盤を活用した事業機会の創出や、VAIO財務戦略の強化など、グループシナジーを発揮し、国産パソコンメーカーとしてVAIOの魅力を国内外に発信するとしている。

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家電業界に好転の兆し

家電量販店業界はコロナ禍による巣ごもり需要の反動や、物価高に伴う消費マインドの低下、さらにはレジャー・サービスなどへの支出の増加などの影響で、このところさえない展開が続いているが、インバウンドの増加に伴い、好転の兆しが現れている。

業界最大手のヤマダホールディングス<9831>は、2022年3月期から2024年3月期までの3カ年は減収営業減益を余儀なくされたが、2025年3月期は4期ぶりに増収営業増益に転じる。

2025年3月期第2四半期の段階では、2.7 %の増収、14.1%の営業増益となっており、通期での目標は達成できそうな情勢にある。

この傾向は他の企業にも共通しており、業界2位のビックカメラ<3048>は決算期が異なることもあり、2024年8月期に営業増益に転じた。

コロナ禍の影響で落ち込んでいた免税売上が、コロナ禍前を超え過去最高を記録しており、この流れを踏まえ2025年8月期についても増収営業増益を見込む。

その他、大手のエディオン<2730>やケーズホールディングス<8282>も2025年3月期は増収営業増益を見込んでいる。

M&Aが業績を後押し

こうした環境の中にあって、ノジマは「デジタル一番星」「お客様感動No.1」の目標をかかげ、コンサルティングセールスのレベルアップや顧客ニーズに合ったサービスの充実に取り組んだ結果、2024年3月期の売上高は7613億100万円と前年度比21.6%の増加となった。

ただ、家電販売やキャリアショップ運営事業は好調だったものの、海外事業やインターネット事業が振るわなかったことなどから営業利益は305億6000万円と前年度より9.0%減少した。

2025年3月期は、第2四半期の業績予想を上方修正しており「買収後のコネクシオなどで、オペレーションと利益面の改善を図ったこと」を修正理由として挙げている。

また海外事業では前年同期に赤字だった部門利益が黒字化しており「2023年7月に買収したTMTが、2025年3月期第2四半期の海外事業に貢献している」としている。

第2四半期の業績予想の上方修正の際には、通期の業績予想(0.5%の増収、1.4%の営業増益)は据え置いたが、業界に明るさが戻る中、M&Aが業績を後押しする形となっている同社の通期業績が上振れする可能性は小さくない。

ノジマのこれまでの積極的なM&A投資や、こうした投資の成果を見る限り、同社の今後のM&A戦略に変更はなさそうだ。

上場大手家電量販店の業績推移

2025年3月期、2025年8月期は予想

文:M&A Online記者 松本亮一

上場企業のM&A戦略を分析
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