復活ののろしを上げる「HIS」黒字転換で買収を再開

大手旅行会社のエイチ・アイ・エス(HIS)<9603>が、2023年10月期に営業黒字を達成した。コロナ禍の影響が薄らぎ旅行需要が回復したのが要因で、黒字化は2019年10月期以来4期ぶり。

同社は2023年10月期決算の発表と同時に、2026年10月期を最終年とする3カ年の中期経営計画を発表しており、この中で、成長戦略の一つとしてM&Aによる既存事業の拡充と、新規事業の取り込みを目標に掲げた。

2022年に大型リゾート施設ハウステンボスをはじめ合計3件の売却を実施し、コロナ禍を耐えてきただけに、今回の中期経営計画は復活ののろしとも言える。どのような将来像を描いているのだろうか。

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売上高は76.4%増加

HISの2023年10月期の営業利益は13億9700万円(前年度は479億3400万円の赤字)だった。最も業績が悪化した2021年10月期には640億円を超える営業赤字に陥っていたが、ようやく水面に浮かび上がった。

経常利益も14億4600万円(同490億100万円の赤字)の黒字を確保したが、当期損益は事業用資産やのれんの帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失として計上したため、 26億1800万円(同95億4700万円)の赤字を余儀なくされた。

売上高は2518億6600万円で前年度比76.4%の増収となった。ただコロナ前の2019年10月期(8085億1000万円)と比べると30%ほどに留まっている。

営業利益は13倍ほどに

中期経営計画では、既存事業の変革と新規事業への挑戦に取り組む方針で、具体的な行動計画として「旅行関連事業・非旅行事業の成長」や、「業務効率化・コスト構造改革」など6項目を掲げた。そのうちの一つが「M&Aによる成長」で、持続的な成長に向けて安定的な投資サイクルの循環に取り組むとしている。

同社は2010年にハウステンボスを子会社化したあと、九州産業交通ホールディングスやカナダの旅行持ち株会社Merit Holdings、台湾のホテル運営会社Green World Hotelsなどを次々に傘下に収め事業領域を拡大してきた。

しかし、コロナ禍の影響で2020年10月期に311億円強の営業赤字に陥り、その後も厳しい経営状況が続いたことから、2022年にハウステンボスのほか電力小売子会社のHTBエナジーと、バイオマス発電子会社のH.I.S.SUPERの3社を売却した。

エイチ・アイ・エス(HIS)の主なM&A

2026年10月期までの3年間は再び買収にカジを切る計画で、旅行関連事業と新規事業がターゲットになる。

中期経営計画最終年の2026年10月期には売上高4300億円、営業利益180億円を目指す。2023年10月期と比べると、売上高は1.7倍、営業利益は13倍ほどになる。この増収増益のうちの一部分をM&Aが担うことになる。

文:M&A Online

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