なぜ人は“ハイスペ時計”に魅了される? 140周年を迎えるエドックス新作と「長く使える時計」への想いとは
ものづくりの裏側に光を当てる「Behind the Product(ビハインド・ザ・プロダクト)」。20回目となる今回は、スイスの老舗ウォッチメゾンの「エドックス」が登場。2024年秋に来日した取締役兼セールス&マーケティングディレクターのクリスチャン・オッツ氏に100年を超える歴史と、最新モデルが受け継ぐものづくりへの取り組みを伺いました。
●フラグシップ“CO-1”がさらに進化
1世紀を超える由緒あるウォッチメゾンがひしめくスイス時計業界にあって、2024年に創業140周年を迎えた「EDOX(エドックス)」はひときわ特別な存在です。
ポストコロナで時計業界も大きく変貌しようとするいま、老舗・エドックスの取締役だけでなく、セールス&マーケティング部門のディレクターの領域も兼任するクリスチャン・オッツ氏が来日。
一人の時計師が妻に贈った懐中時計から始まったエドックスの歴史や、最新モデルに息づくそのこだわりをブランドビルディングの全般に関わるキーマンに聞きました。
VAGUE:まずはエドックスの簡単な歴史から教えて下さい……とその前に、今つけていらっしゃる時計が気になってしかたありません。紹介していただけますか?
クリスチャン・オッツ氏:もちろんです(笑)。今日のインタビューのために選んだのは、2024年11月にリリースする「クロノオフショア1」の新作「クロノオフショア1 ベゼルロック クロノグラフ オートマティック」です。
VAGUE:12・6・9時位置に精密に配されたクロノグラフや丹精なデイ&デイト表示。隅々までエドックスらしい誠実さと力強さに溢れています。
オッツ氏:“CO-1”こと「クロノオフショア1」シリーズは、エドックスのフラグシップとなるコレクション。海のF1と称されるパワーボートレースのパイロットからのリクエストをきっかけに誕生した、45mmサイズのケースを持つメカニカルクロノダイバーズです。
VAGUE:赤く染められた9時位置のレバーが差し色となって印象深いです。
オッツ氏:赤い部品はハイテクセラミックス製のベゼルの回転をロックするためのパーツで、ブランドとして初めて搭載したもの。6時側では一般的なダイバーズと同じ逆回転仕様に、12時側にスライドさせると完全にロックがかかることでよりシビアなミッションをカバーします。赤やオレンジのカラーは水中での視認性が良いだけでなく、デザインのアクセントとしても楽しめますよね。
VAGUE:防水性能にこだわるエドックスらしく、本作も50気圧/500m防水を達成しています。
オッツ氏:140年に及ぶエドックスの歴史のなかで様々なマスターピースが生まれてきましたが、私がとくに重要だと考えているモデルが1961年に誕生した「デルフィン」です。“The Water Champion”というテーマを掲げ、リューズとケースの間を2つのガスケットで気密する“ダブル・Oリング”を採用。ねじ込み式でなくても200mもの防水性を持っていました。
VAGUE:クロノオフショア1のように、堅牢性や防水性能など、日常生活では必要のないはずの高機能を達成した腕時計には特別な魅力を感じます。なぜハイスペックな腕時計に心惹かれるのでしょうか?
オッツ氏:防水性は潜水性能のみならず、時計の耐久性が高いことも証明します。もちろんクロノオフショア1は、耐久性だけが突出しているわけではありません。堅牢なケースとベゼルをはじめ、高い精度のムーブメント、そして視認性に優れたスーパールミノバ仕上げなど、全ての要素が時計というユニバースの中に統合される。それがこの時計が特別な存在たらしめている理由ではないでしょうか。
「クロノオフショア1 ベゼルロック クロノグラフ オートマティック」は、複合素材を駆使しつつ、ソリッド感のあるスタイルを実現しています。女性にとってのジュエリーがそうであるように、身につけるだけで胸が踊るような美しい時計に仕上がったと自負しています。
●次世代へ継承できる長寿命が機械式時計の魅力
VAGUE:経歴を伺うのが遅くなってしまいましたが、時計業界でのキャリアについておしえてください。
オッツ氏:スイスのマニュファクチュールである、「カール F. ブヘラ」のセールス部門で時計業界に関わるようになりました。その後同じくスイスの「オリス」に移り、セールスマネージャーとして世界各地を巡りブティックや顧客の方々との関係を構築してきました。
VAGUE:世界各国のエンドユーザーに近いところでキャリアを積まれていたんですね。
オッツ氏:2006年にエドックスに移り、引き続きリテールの現場で時計ファンがいま惹かれるディテールとはなにか?未来の時計の理想形として何を思い描いているのかをリサーチしてきました。
VAGUE:エドックスではデザインに関する業務にも関わっているとか。
オッツ氏:世界を旅して得た知見を分析し、それをデザイナーに伝えることが私の役割です。顧客から受け取ったパッションをチームと共有し、次なる時計としてアウトプットできる。それがエドックスブランドの強みになっていると考えています。
VAGUE:時計作りをするうえで、とくに注意していることは?
オッツ氏:たくさんありすぎます(笑)。我々が“ユニバース”と呼ぶ「ダイブ」「フライ」「ドライブ」という、3つの世界観は常に意識しています。いま身につけている「クロノオフショア1」やダイバーズウォッチの「ネプチュニアン」は「ダイブのユニバース」を体現します。
「フライのユニバース」はスイス軍のパラシュート部隊のためにデザインされた「スカイダイバー」を内包し、モータースポーツの歴史をリスペクトした「クロノラリー」は「ドライブ」のユニバースに沿ってものづくりをしています。
VAGUE:エドックスのタイムピースは、機能性とトレンド感のあるスタイリッシュさを融合しながらも、価格が抑えめだと感じます。
オッツ氏:エドックスの誇りである、性能と価格のバランスに注目していただけて光栄です。我々の時計作りのテーマの一つに、「1000〜5000スイスフラン(約18〜90万円)のレンジで最高の時計を製造する」という哲学があります。ラグジュアリーなスタイルを持ちながら、現実的に手にすることが叶うプライスを目指しています。
それにくわえ私にとって一番大切なことは、「長持ちする機械式時計をつくる」ということ。一生涯にわたって愛用してもらうためには堅牢な造りや高い防水性が必要ですよね。メンテナンスをしながら、次の世代にまで受け継ぐことができるような時計を提供したいという思いは常に忘れないようにしています。
●製品仕様
「クロノオフショア1 ベゼルロック クロノグラフ オートマティック」
・型番:01128-3NOCA-BUIDN(ブルー)、01128-3NRCA-NN(ブラック)、01128-37GNNOCA-GNO(グレー×オレンジ)、01128-37GNRCA-GNR(グレー×ゴールド)
・価格(消費税込み):63万8000円 (ブルー、ブラック)、66万円(グレー×オレンジ、グレー×ゴールド)
・ケース素材:316Lステンレススチール
・ストラップ素材:ラバー(316Lステンレススチールバックル)
・ガラス:厚さ3mmのサファイアクリスタル(無反射コーティング)
・防水性能:50気圧/500m
・ケースサイズ:直径45mm、厚さ16mm
・ムーブメント:EDOX011(SW500)
・巻上方式:自動巻き
・機能:時・分・秒、日付・曜日、クロノグラフ、30分積算計、12時間積算計、タキメーター
・パワーリザーブ:約48時間
・石数:25石
・振動数:2万8800振動/時
・発売予定日:2024年11月25日
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VAGUE