“グーグルマップ”一強時代に異変!? カーナビ代わりに使えるスマホ無料「地図アプリ」2024年の注目株とは

カーナビ代わりにも使えるスマートフォンの無料地図アプリですが、ユーザー数の多い「Googleマップ」のほかにも多くの無料カーナビアプリがあります。今回はいま使っている人が多い4つのアプリの特徴を紹介します。

ユーザー数の多いGoogleマップとYahoo!カーナビ

 ほとんどの人が持っているスマートフォン。多くの無料アプリがあります。

 GPSを用いて道案内をしてくれる地図アプリ、カーナビアプリも多数存在しています。代表的なものとしては「Googleマップ」や「Yahoo!カーナビ」が挙げられますが、実はそれ以外にも無料で使えるカーナビはたくさんあります。そこで今回は無料で使える4つのアプリを紹介します。

 なお、今回のレポートはiPhone単独での使用結果に基づきます。

●Googleマップ:圧倒的な目的地検索能力 まだ細い道を案内する傾向がある

「Googleマップ」が無料で使え、もっとも利用されているカーナビ用アプリであることは誰もが認めるところでしょう。

今なおユーザー数が一番多い「無料地図アプリ」、Googleマップ

今なおユーザー数が一番多い「無料地図アプリ」、Googleマップ

 その理由は、ライバルを圧倒する目的地検索能力にあるからといっても過言ではありません。

 たとえ、検索する際の入力が曖昧でも、それに近い候補をリスト表示することで、スムーズに目的地を設定できるのです。しかも、それは音声でも入力可能なため、運転中でも簡単に目的地が探し出せるのです。この使いやすさこそがGoogleマップ最大の魅力と言えるでしょう。

 目的地を決定してルートを探索すると複数のルートが案内されるのは、一般的なカーナビと同じです。そこには推奨ルートと比較した所要時間が表示され、この案内とルートを見比べながら最良のルートが選べるようになっているのも使いやすさのポイントです。

 地図は全国を詳細なマップで収録し、地図上には各施設のアイコンをランダムに表示して案内。また、カーナビの案内としては使えませんが、事前にストリートビューを使ってルートを確認することや、エリアによっては目的地までのルートをリアルな俯瞰写真でスクロールできる「イマーシブビュー」も使えるようになりました。

 ルート案内中は、車載カーナビのような交差点拡大図は一般道/高速道ともに一切使わず、ルート上の矢印によってのみ案内します。ただ、交差点名や車線ガイドを表示するほか、分岐した先の道路名まで案内するので、進行方向は確認しやすいでしょう。また、大型商業施設などでは、各施設のアプローチまでルート案内を継続することを実現しています。

 Googleマップで特筆すべきがGPS信号をロストした時の対応です。前後方向に対しては他のアプリと同様、ロストした時点の速度を維持しながら簡易的にルートを進んでいきますが、GPS信号が途絶えてもジャイロセンサーが対応して、たとえ分岐点があってもしっかりと追従することができるのです。これは測位能力向上に大きな力を発揮するはずです。

 一方で、案内ルートは距離優先で選ばれることが多い傾向にあるようで、今もなお、すれ違いが難しい道路を案内されることが少なくありません。また、目的地の入口情報についても未整備なことが多く、施設によっては入口と反対側で案内が終わることもありました。この辺りも早期改善を望みたいところです。

◆Yahoo!カーナビ:ルート案内中は広い道を優先 安心度はとても高い

 Yahoo!カーナビは日本で誕生したカーナビ用アプリです。

Yahoo!カーナビ。ルート案内中は広い道を優先するため、その安心度はとても高い

Yahoo!カーナビ。ルート案内中は広い道を優先するため、その安心度はとても高い

 地図プラットフォームにはアメリカのMapbox社製ながら、そのデータ提供元はゼンリンで、カーナビのアルゴリズムを業界の老舗「住友電工」が担当。実質的に国産カーナビ用アプリと言えるでしょう。

 目的地検索は、アプリ内の検索ウインドウに施設名や住所など探したいキーワードを入力して行い、ここでは手入力以外にも音声入力でも可能です。検索を実行すると、候補リストが一覧表示されるので、そこから対象施設を選んで目的地設計を行います。

 周辺の施設を探す時は、頭に“近くの”というワードを付けて読み上げれば、すぐに対象施設が近い順にリスト表示されます。ただ、入力方法が適切でないと「該当なし」と出てしまうことも。この対応力では残念ながらGoogleマップには及びません。

 目的地までのルートは、高速道利用/一般道利用それぞれで候補が表示され、そのルートごとの所要時間や費用までも一目でわかります。また、出発時刻を指定してルートを探せるので、所要時間を考慮した出発も可能なのはYahoo!カーナビならではのポイントと言えるでしょう。

 ルート案内中は広い道を優先するため、その安心度はとても高いものです。

 一般道での交差点案内は分岐点までの距離と車線ガイドを示し、道路標識に基づいた速度規制や一時停止といった案内も行うなどなかなかの充実ぶり。さらに高速道では各施設をリスト表示する画面に切り替えられる他、都市高速入口やJCTでリアルなイラストによって進行方向を示します。

 一方で案内音声はやや歪みがちで聞き取りにくさを感じます。また、GPSが受信できないトンネル内では、トンネルに入った時の速度で、一定時間、簡易的に進むだけとなります。また、交通情報はVICSと同じ日本道路交通情報センター(JARTIC)から情報を元に、その上で会員が実際に走行して取得したプローブ情報を加えてルートに反映します。

 自動速度取り締まり機(オービス)を知らせる機能を備えているのは重宝しそうです。さらにiOS版では「Yahoo!カーナビプラス」(月額250円)を申し込めば、移動式オービス、ネズミ捕り、検問の場所を知らせてくれるようにもなります。その場合、経由地は最大10カ所までとなり、バナー広告非表示となることも見逃せません。

iPhone純正の「マップ」といま注目のトヨタ「モビリンク」

◆Appleマップ:Siriでの音声入力にも対応 安心してルート案内を任せられる

 言わずと知れた、iOSに添付される無料で使えるカーナビ用アプリです。

 2012年に提供された当初はさまざまなトラブルに見舞われましたが、iOSの更新とともにアップデートされて着実に進化を遂げ、今ではそうしたトラブルもすっかり解消。

 むしろ、特に狭い道を案内するようなこともなく、安心してルート案内を任せられることに好感が持てます。

アップル「マップ」。自動車でルートを探索した際は、あらかじめ有料道路/高速道路の回避設定も行える

アップル「マップ」。自動車でルートを探索した際は、あらかじめ有料道路/高速道路の回避設定も行える

 地図の使い勝手も良好で、多彩な機能を備えているにも関わらず動作もスムーズそのもの。表示される地図の表現力も美しく、特に3D表示での描画能力はかなりレベルが高いことを実感します。ルート案内中はオランダの「TomTom」が独自に収集したプローブデータを反映した交通情報を提供。もちろん、渋滞回避も行います。

 目的地検索では、文字入力やSiriでの音声入力に対応しています。特に音声入力の認識レベルは十分に実用的で、ほとんどの場合で対象地のリストアップしてくれました。目的地とした付近の様子を写真や住所、口コミといった情報を案内する機能も備えています。また、出発時刻や到着時刻を指定することができるのもポイントになるでしょう。

 目的地検索で惜しいのは、対象地がマイナーな場所になると思うように探せなくなることです。やはり検索能力ではGoogleマップに見劣りしていると感じます。

 目的地を探し終えたら、下側に表示されるアイコンをタップすると目的地へ向かうのに、自動車のほか、公共交通機関、徒歩、自転車から利用方法を選びます。利用方法に応じて所要時間がアイコン上に表示されるのはわかりやすいですね。
 
 自動車でルートを探索した際は、あらかじめ有料道路/高速道路の回避設定も行えます。

 ルート案内中は他のカーナビ用アプリと同様、交差点拡大図を表示することはありませんが、分岐点に近づくに従い地図を拡大して周辺を見やすく表示します。

 交差点名を音声で読み上げ、車線ガイドは一部ではあるものの表示するので、複雑な交差点でもない限り、ルート案内で不安を感じることはないと思います。一時停止や制限速度などの道路標識情報は初めての場所で重宝するかもしれません。

 トンネル内に入ってGPS信号をロストした時は、トンネルに入った時点の速度のまま簡易的に進んでいきますが、一定時間を過ぎると停止。左右方向の動きにも追従はしないため、トンネル内の分岐には追従はできませんでした。

◆トヨタ モビリンク:トヨタ車ユーザー以外も無料で使え 使い心地はトヨタ純正カーナビそのもの

 トヨタの標準的な車載カーナビと同等の機能を持ちながら、誰でも無料で使えるカーナビ用アプリです。

 トヨタは近年、ディスプレイオーディオの標準搭載を進めていますが、このアプリを使うことで手軽にカーナビ機能が利用できるというわけです。しかも、その対象をトヨタ車ユーザー以外にも無料で解放しているから驚きです。

モビリンク。その使い心地はトヨタの純正カーナビそのもの

モビリンク。その使い心地はトヨタの純正カーナビそのもの

 トヨタ発のアプリだけに、その使い心地はトヨタの純正カーナビそのもの。交差点名を読み上げる音声ガイドはまんま同じで、高速道路での合流案内や一般道での側道案内も行うなど、その案内機能はかなりの充実ぶり。

 都市高速入口や高速道路での分岐点ではイラストを使って詳細にガイドするなど、もはや見た目には“トヨタ純正カーナビ”がそのままスマホに入ったと思えるほどです。

 ただ、データが重くなることを避けるためか、さすがに交差点拡大図をすべての交差点で表示することはありません。

 それでもオートズーム機能を使い、分岐点に近づくに従い、徐々に地図を自動的にズームアップしていきます。信号機の存在も地図上でガイドし、交差点名も一部で読み上げられていました。

 ルート案内中で便利と思えるのは、一般道や高速道において4つ先の交差点や施設のリストを表示することです。

 車線ガイドや交差点名の表示と共に、これを使うことで分岐点での心構えができるようになるのです。また、ルート上には他の候補ルートが表示され、これをタップすると即座に別ルートでの案内に切り替わるのも便利です。

 また、探索したルートは「お出かけプラン」として登録しておくことができます。出掛ける前にプランを経由地を含めた立てておき、当日はそれを展開すればすぐに出発できるのです。

 一方で目的地を設定する時は音声での検索にも対応していますが、曖昧な入力やマイナーな施設には思うように探し出せないこともあります。

 そんな時は、Googleマップで検索してそのデータをモビリンクに転送して使うことをおすすめします。また、同様に「NaviCon」との連携することで、好みのアプリで探した位置情報の転送も可能です。

 交通情報はVICSを基本にトヨタが独自に収集した「Tプローブ」をプラス。日本の国道や都道県道に限った総延長距離は約40万km。のほとんどをカバーしています。一方で、GPSをロストした時は、一定時間を過ぎると停止していました。

2024年のいま 一番オススメの「無料カーナビアプリ」とは

 カーナビとして使う以上、重要なのは目的地がスムーズに探せて、わかりやすいルート案内で目的地へと誘導することです。

 目的地の検索能力では「Googleマップ」を超えるアプリがないのは明らかで、それは曖昧な名称や住所、あるいはイベント情報なども検索対象とし、ありとあらゆるものをターゲットとしているからです。

筆者のオススメは、モビリンクとGoogleマップの合わせ技。モビリンクをカーナビとして使い、目的地検索をGoogleマップで行い、座標をモビリンクに転送するのが良い

筆者のオススメは、モビリンクとGoogleマップの合わせ技。モビリンクをカーナビとして使い、目的地検索をGoogleマップで行い、座標をモビリンクに転送するのが良い

 その実力差があることはライバルも認識していて、最近はGoogleマップの検索結果を他のアプリ上で共有することを可能にする事例が増えてきました。ここで採り上げたアプリでは「モビリンク」がそれに対応しています。

 一方、ルートガイドのわかりやすさでは、モビリンクが頭ひとつ抜けている気がしました。分岐点では案内するタイミングが適切で、交差点名も表示して、一部では交差点拡大図も表示して目的地へと誘導。何よりも音声がとても聞きやすいため、状況把握がしやすいのです。

 案内のわかりやすさではAppleマップやYahoo!マップも該当しますが、Yahoo!マップは音声に歪みがあって聞き取りにくいのが残念です。

 ただ、Yahoo!マップには並行する高速道/一般道の切り替えをワンタッチで行える機能があり、案内ルートを間違えて案内している時は重宝するでしょう。

 一方でGoogleマップは、ショートカットするルートを優先しがちで、時折、狭い道を案内されて困ることもあります。分岐点での案内では自動的にズームアップして交差点名も案内しますが、案内そのものは道路上に矢印を載せるだけと物足りなさを感じます。

 地図の美しさはどうでしょう。これは建物一つひとつを立体的に表示するモビリンクとAppleマップに軍配が上がります。その上でモビリンクは国会議事堂や東京タワーなど、著名な施設はリアルな形状で地図上に描いており、これは見ていても楽しいものです。

 こうした結果、おすすめはモビリンクとGoogleマップの合わせ技です。

 モビリンクは地図がきれいで案内もわかりやすく、カーナビとして使うには最適。しかし、目的地の検索能力ではGoogleマップに敵いません。そこで目的地が思うように探せない場合はGoogleマップで探して、その座標をモビリンクに転送するのです。

 これまで無料アプリといえば、GoogleマップとYahoo!カーナビが双璧とされてきましたが、ここへ来てAppleマップやモビリンクも侮れない実力を付けていることがわかりました。

 今後も互いに切磋琢磨して、より良いアプリへと進化していくことを期待したいと思います。

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