トランプ政権復活で「金融」「エネルギー」に追い風 「脱炭素」「不動産」は打撃か…明暗分かれる業界
再選が決まったドナルド・トランプ前大統領。前回の政権では、大胆な規制緩和と保護主義的な政策が特徴的だったが、今回もその路線を継続するとみられる。では、トランプ政権下でどのような業界が恩恵を受け、どの業界が打撃を被るのか。米S&P500種株価指数を元に、伊藤忠総研・上席主任研究員の髙橋尚太郎氏と深掘りする。
最も恩恵を受けるのは金融セクターとエネルギーセクターか
出水麻衣 アナウンサー
「トランプ政権下でこれから得する産業、そして損する業界等が出てくると思うのですが、どうみますか?」
髙橋 上席主任研究員
「まずやっぱり金融セクターですね。このあたりは規制緩和が進みやすい。思い起こしていただくと、シリコンバレーバンクの破綻というのがありましたが、その後に中堅銀行への規制強化をバイデン政権が進めました。これは金融監督上のミスじゃないかという批判もあったのですが、それを棚に上げるような形で銀行業界を締め上げるという感じになりました。これはいい部分もあると思うのですが、これ以外にもバイデン政権はいろいろ金融業界の規制強化を進めましたので、トランプ氏はそういった部分を解きほぐすのではないかという期待があります」
また、化石燃料を中心とするエネルギー業界も、環境規制の緩和によって追い風を受けるとみられる。
髙橋 上席主任研究員
「化石燃料エネルギーのプロジェクト促進、承認の円滑化など、環境規制の緩和はだいぶ効いてくるのではないかなということで注目されています」
脱炭素「巻き戻し」? 生活必需品、不動産も打撃の恐れ
一方でトランプ政権の政策によって打撃を受ける可能性があるのが、脱炭素関連産業だ。トランプ氏は地球温暖化対策に消極的な姿勢を示しており、再生可能エネルギーへの投資や補助金などが減少する恐れがあるという。
髙橋 上席主任研究員
「トランプ政権になると脱炭素の巻き戻しというのが多分あると思います。脱炭素関連、公益事業、例えば風力発電とか発電事業、それに関連するインフラのプロジェクトが進みづらくなるということで、今ちょっと(株価が)負けているのではないかなという感じはします」
さらに生活必需品関連の企業も、トランプ政権下では厳しい状況に置かれる可能性がある。
髙橋 上席主任研究員
「トランプ氏は『低所得者層の味方だよ』と言っているような感じはするのですが、結局、彼の政策はそこまでそこをサポートするものではないので。いったんハリス政権への期待で買われていた部分が、売られているのかなと。あとは不動産、これはちょっと意外ですけど…」
出水アナ
「トランプさん、不動産とはとても親和性の高い方なのに」
髙橋 上席主任研究員
「多分これは金利上昇を嫌気されているのかなという感じはします。住宅ローン金利が落ち着いてこないと回復に弾みがつきませんので、ここが一番下げが厳しくなってきてますかね」
不動産業界は、トランプ氏自身が不動産開発で成功を収めた経歴を持つにもかかわらず、金利上昇の影響を受けて苦戦を強いられるとの見方が強くなっている。住宅ローン金利の高止まりが続けば、住宅市場の回復は遅れることになるだろう。
また、半導体産業も、バイデン政権下で成立したCHIPS法の修正などにより、不利な立場に立たされるかもしれない。
出水アナ
「私が少し気になったのが、アメリカのGAFAMはじめテック大手のCEOたちが軒並み“トランプさんおめでとう”というのを自身のSNSで発信していまして。今までトランプ支持を表明していたイーロン・マスク氏なんかはわかるんですけれど、中立の立場を保っていた人たちも祝意を表しているというのは、これは何か、すり寄りみたいな行動に見えてしまうんですが」
髙橋 上席主任研究員
「この部分、結構しっかりとした調査が必要かと思うのですが、おそらく印象としては、独占禁止法がGAFAMに適用されるか否かみたいな議論がトランプ第1期のときもちょっとあって。今回副大統領になる予定のバンス氏がこのあたりの規制を強めないといけないということを言ってますので、関係が悪化しそうな気配をGAFAMとしては感じていたんじゃないかなと」
TBS経済部 佐藤祥太デスク
「こうなってくると草木もなびくというか、トランプ氏的なるものが好きかどうかというよりも、やっぱりパワーが強大なので。そこにみんな平伏とまでは言わないですけども、どうやったら自分の業界がそのパワーをうまくいかす、ないしはその攻撃を避けるかということにものすごく知恵を使ってくんだろうなと思うんですよね」
日経平均は「ミラーのように上がっていった」
出水アナ
「日本のマーケットで反応があった業界というのは既にありますか?」
佐藤デスク
「業界ベースで見るとそんなに突出した反応はないと思います。ただアメリカの景気が規制緩和やトランプラリー的なことで良くなるのであれば…ということで、日経平均もミラーのように上がっていったというところはあると思います。それから為替に関して言うと、トランプ氏はあんまり強いドルは好まないとされているのですが、どっちかというとやはりドル高政策ですよね。インフレを巻き起こしそうなので、そうすると必然的に金利を上げざるを得ないというか、国債の方でも金利が上がっていってしまうので、その裏側で円が安くなっているという感じですかね。それはまた日本株の上昇要因にはなっているのではないかなというふうに思います」
トランプ政権の政策が各業界に与える影響は、今後の動向次第で変化する可能性もあるが、規制緩和と保護主義を軸とした政策が継続されれば、業界間の明暗はより鮮明になっていくことが予想される。日本企業としては、これらの影響を見極めつつ、アメリカ市場でのビジネスを進めていく必要がありそうだ。
11/11 06:00
TBS NEWS DIG