消費者庁が警鐘、テレビ通販「怖い事故」「怪我」実例集

こんな事態が起きることも…

 消費者庁が11月14日に発表した注意喚起が話題になっている。2013年4月~2018年9月にネット通販で購入した製品による〈危害または危険〉に関する情報は9248件にのぼったのだ。とりわけ注意が促されているのが「テレビの通販番組」だった。購入した商品で怪我をしてしまった事例は後を絶たないとして、国民生活センターも警鐘を鳴らしている。

 2012年には、同センターが家庭用フィットネス器具による骨折や火傷といった「被害相談」に関する報告書を発表。報告書によれば、同センターに相談が寄せられた怪我や事故に至った商品について、その「購入方法」を調べてみると、「通販」が圧倒的に多く、全体の約7割を占めている。さらに、通販のなかでも「テレビを見て買った製品」による被害相談が46%と最も多く、ネット通販が13%、カタログ通販が5%と続く。

 国民生活センターの報告書では、テレビ通販番組の“宣伝文句”だけに気をとられてしまったために起きた事例がある。

 背中を痛め、医師に「ストレッチ運動をしたほうがいい」と指導されていた70代男性が、寝ころがって機械に足を乗せると機械が左右に動いて“金魚運動”させる健康器具を注文した。「30分以内に申し込むと半額」という言葉に、“今すぐ買えば得だ”と、大急ぎで買ったという。

 ところが商品が届き、1回使用してみたところ、腰が痛くなった。取扱説明書を見ると、「背骨に異常のある人は必ず医師と相談の上使用する」と小さく書いてあったが、「テレビ放送ではそんな警告は一切なかった」として、国民生活センターに相談を寄せたという。

 こうした事例を踏まえ、同報告書では特にテレビショッピングの場合、〈使用上の注意や禁忌症状などが放送内に明示されていない場合がある〉ことが問題だと結論づけている。

「購入したルームランナーを使用したところ、ついていけずに後ろに飛ばされてしまったという50代男性のケースもありました」(国民生活センター担当者)

 テレビショッピングなどを通じて販売を行なっている大手ルームランナーメーカーの担当者はこう話す。

「スタートの仕方から(安全装置の)クリップのつけ方まで、安全にお使いいただくための方法は説明書に記載していますし、使い方のステッカーも製品に貼ってあります。それらに従って正しく使っていただければ危険はないはず。通販番組の放送時間の枠のなかですべてのリスクを説明できないから、使用前にきちんと目を通すようにしてほしいのですが、そうではない方も多いようで……」

◆「誰でも簡単」本当に?

「通販で購入した健康関連商品が原因で怪我をしたという中高年の患者さんが来院する例は、少なくない」

 そう話す秋津医院院長の秋津壽男医師もやはり、「ネットよりもテレビで見て買ったという方が多い印象」とした上で、こう分析する。

「テレビの通販番組では、高齢の視聴者が多いことを見込んで、盛んに『誰でも簡単にできる』ことが強調される。そうすると体力が落ちている人も注文したくなります。しかも、『買った以上は使わないともったいない』という気持ちが出る。実際に手元に届いた商品を使ってみてすぐに、“ちょっとキツイな”と感じても、無理して頑張ろうとしてしまい、それが怪我や事故につながっている傾向がみられます」

 視聴者の世代に近い中高年のモデルが、実際に商品を使ってみるという演出の通販番組も少なくないが、「見栄えを考えて、モデルは年齢の割に若々しく健康的な人を起用する傾向がある」(番組関係者)という以上、“自分と同年代が楽に使いこなせる”と安易に考えるのもよくない。

 実際に国民生活センターに寄せられた被害相談でも、「“初めて使った時”に怪我をした」という事例が少なくない。

 前述の2012年の報告書には、テレビショッピングで「ダイエット効果」を謳うフィットネス器具を購入した消費者が怪我をしたという事例が掲載されている。

 四つん這いになって両手でハンドルを握り、可動する台に両膝をついて腰をスイングする商品を50代女性が初めて使用した際のことだ。スイング幅を最大に設定すると、膝が台から外れて転倒、肋骨2本を折る大怪我をしてしまったのだ。

 国民生活センターの担当者によれば、「テレビショッピングで買った下半身を鍛えるための足踏み健康器具を使ったら、最初の1回で腰と背中を痛めたという事例があった」という。店頭で使い心地を試した上での購入であれば、避けられた事故かもしれない。

 前出・秋津氏は、「機械そのものに問題がなくても、例えばロデオマシンのような“乗って使用するタイプ”の器具の場合、昇り降りが上手くいかずに転んで骨折してしまうケースも少なくない」と指摘する。

 これについても、店頭で商品に触ったり、店員からの商品説明を聞いたりした段階で自分で「昇り降りが危ない」と気づけたかもしれないが、テレビ通販では、“自分が使っている時のイメージ”がわきにくく、トラブルにつながりがちだと考えられる。

◆海外製品、説明書の翻訳が違うぞ!?

 健康器具以外の通販でもトラブル事例はあるので参考にしておきたい。消費者庁が11月に発表したこんな事例がある。

「ネット通販で輸入品のシャンプーとコンディショナーのセットを注文した。頭皮にかゆみがあり、吹き出物ができたので、すぐに使用をやめた」(40代男性)

 消費者生活相談員で行政書士の遠山桂氏は、「インターネット通販だと海外のものが手軽に手に入る利便性がある一方で、いい加減なサイト運営者が注意事項などの翻訳を簡略化してしまうケースがある。ネットの場合、テレビと違って購入前にゆっくり注意事項を読む時間がつくりやすい半面、ネット特有のリスクもある」と指摘する。

 テレビ通販の場合、販売に「放送局」という“フィルター”があるが、ネット通販の場合、サイトを運営する会社がどこに所在するのかも判然としないケースが少なくない。

 ネット通販で商品を販売する企業は、「特定商取引法」によって、サイト内で事業者名、代表者名、連絡先と返品のルールを記載することが義務づけられている。こうした項目の表記がないサイトでの購入は避けるのが賢明だ。国民生活センターにも、ネット通販で起きた問題の相談が寄せられている。

「60代以上の男性から、『ネットで筋肉増強剤の定期コースを購入して服用。気分が悪くなったので解約したいが、最低何回か受け取らないとできないといわれた』といった相談が何件もありました。ネット通販の場合、購入者が返品・返金を求めたくても、販売会社に連絡すらつかないといったトラブルも起きています」(国民生活センター担当者)

 初めて使うサプリなどを通販で購入する場合について、秋津氏は注意を促す。

「サプリのなかには、服用している薬との“飲み合わせNG”もある。そのため、購入前に医師や薬剤師に相談するのが安全です」

 公益社団法人日本通信販売協会に問い合わせると、「製品個々の取り扱い基準や安全基準は、一般的にそれぞれの業界基準に従って、各事業者の責任範囲となる。当協会としては製品安全に関するガイドブックを発行するなど、情報共有に努めています」と語る。

 テレビにしろネットにしろ、通販の利便性を活用する際には、自分の身は自分で守るという意識を忘れてはいけない。

※週刊ポスト2018年12月14日号

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