新旧「カウンタック」が揃い踏み! ミラノの街に突如現れたレストモッド「フェラーリ308GTS」の正体とは?【イタリア通信】

モーターショーなど、クルマを展示するイベントは数多くありますが、「ミラノデザインウィーク」でのクルマの展示は、それらと比べてセンスよくてオシャレです。そこで、VAGUEが注目した展示を紹介します。

新旧「カウンタック」がミラノで共演

Writer:野口祐子(NOGUCHI Yuko)
Photographer:野口祐子(NOGUCHI Yuko)

 2021年のミラノデザインウィークには、気になるクルマの展示もあった。そこで今回は、ミラノ市内でおこなわれたフオーリサローネ期間中に出会ったクルマを紹介。それぞれのクルマメーカーがミラノの街中で独自の企画で世界観を展開。ファニチャー、クルマ、ファッション、フードなど、各業界との境界線を跨いで新しい世界に挑戦。

112台限定モデル「カウンタックLPI800-4」は、2021年8月の公式発表前に完売していたという

112台限定モデル「カウンタックLPI800-4」は、2021年8月の公式発表前に完売していたという

 VW傘下のランボルギーニは、クリエーターに人気があるトルトーナ地区のスーパースタジオ・ピュ内にブースを構えた。このブースは毎年、「時のデザイナー」が作品を発表する場として知られている。

 入り口からベールをくぐり抜けるようにして、825平米もあるブースの内側に入っていくと、薄暗い空間が視界に入り、先ずはランボルギーニとコラボをスタートしたCulti Milanoのフレグランスの香りが嗅覚を刺激する。深い霧の中に迷い込んでしまったような神秘的な世界の中に、「カウンタックLP400」とカウンタック50周年記念として発表された112台限定モデル「カウンタックLPI 800-4」、そして「アヴェンダドール」の最終モデルである「アヴェンタドール・ウルティマエ」の3台のそれぞれが強烈なオーラを放っていた。ランボルギーニの存在感は何処にいても周りに感動と刺激を与える。

 会場にはランボルギーニのエンジンを使用したモーターヨット「テクノマール・フォー・ランボルギーニ63」の1/6モデルと、ランボルギーニチェントロスティーレとiGuzzini社とのコラボレーションで生まれた新しい照明「Mya」も展示されていた。Myaは、ランボルギーニの生産と同様、一人一人のカスタマイズ仕様が可能なテーブルランプという。

 デザインウィークは、クルマファンだけでなく一般の人たちが足を運ぶ広範囲にわたる客層のイヴェントとして知られている。中には初めてランボルギーニを実際に目にする若い人も多かっただろう。霧の中に存在する3台のランボルギーニ。この神秘的な仕掛けが彼らにより一層の感動を与えたのではないだろうか。

 何よりも驚いたのは、ランボルギーニの若手デザイナー達がデザインスケッチを披露している机の周りに、常に大勢の人だかりがあったということ。クルマの知識はないが、デザインに関わる若者たちはスケッチの過程にとても興味を惹かれたらしく、多くの質問がデザイナーに向けられていた。

 若者はクルマ離れというけれど、クルマの方から若者の居場所に出向いて行くと、新しいマーケットが生まれるかもしれないと思うほどの人気だった。デザインウィークでの展示は、クルマファン以外の若者達の層獲得には絶好の場所だろう。

「A6 e-tronコンセプト」は、2021年4月の上海ショーでワールドプレミア公開された

「A6 e-tronコンセプト」は、2021年4月の上海ショーでワールドプレミア公開された

●未来・宇宙を感じさせるアウディ

 今や、ミラノデザインウィークには欠かせない自動車メーカー、アウディ。VW傘下のアウディは、カーボンニュートラルの世界を目指し、2030年以降の生産車を全てEVに切り替えると謳っている。

 そんなアウディは、ミラノの街のデザイン力を評価し、2021年4月というパンデミック真っ最中におこなわれた「Designer’s Week Milano」では、メインスポーサーとして「デザイン」を支えた。当時はまだ、どこのメーカーもヴァーチャルで新車発表をしていた時期に、ニューモデルとなるアウディ「Q4 e-tron」のリアルなワールドプレミアをミラノでおこなったのも記憶に新しい。

 2021年のアウディはミラノデザインウィーク/フオーリサローネで高級ブティック街のど真ん中、Via della Spiga 26(スピーガー通り)にAudi City Labを構え、2021年4月に上海で発表されたピュアEVの「A6 e-tron コンセプト」、そして「RS e-tron GT」を展示。

 Audi City LabはオランダのデザイナーMarcel Wanders Studioとコラボをし、アウディが持つLEDの技術を駆使し、「Enlightening the Future(未来を啓発)」の世界を展開した。LEDの光を可視エネルギーとして表現し、2台のクルマの展示スペースまでの空間を「LED照明のトンネルを通る」という光を使った演出をおこなった。その光は未来、宇宙を感じさせ、まさに将来に向けEVに向かっているアウディの世界観そのものだった。

ミラノに現れたフェラーリ「308GTS」ベースのクルマとは?

 そして今、イタリアで注目を浴びているのが、Silk-Fawの「Hongqi S9」である。アメリカのSilK EVと中国のFAW、そしてイタリア人デザイナー、ワルテル・デ・シルヴァがデザインの指揮を取るという、アメリカ、中国、イタリア、3国共同によるEVのハイパーカーがトルトーナ地区で発表された。

 設計・製造はもちろんのこと、イタリアの自動車業界の経験豊かな人材、技術を導入し、エミリア・ロマーニャ州のレッジョ・エミリアで生産をおこなうという力の入れようだ。この最高速度400Km/hのハイパーカーは、2023年に生産開始される予定。ミラノデザインウィークでの発表は新しい顧客層獲得へのチャレンジとなっただろう。

 どこのメーカーも市場の矛先をクルマの世界だけに留まらず、デザインという大きな枠の中へ向け始めた。とくにデザインや革新的な技術に特化したスーパーカーは、時代を先取りするアンテナが研ぎ澄まされている人たちが集まるイヴェント「ミラノデザインウイーク」をターゲットにすることも重要な市場になるだろう。

「Hongqi S9 Hypercar」の量産型は、2021年4月の上海ショーで公開された

「Hongqi S9 Hypercar」の量産型は、2021年4月の上海ショーで公開された

 このほかにもミラノの街を歩いていると、いくつか目についたクルマに出会った。

 カドルナの駅の周辺でHondaという文字を目にした。中で発表会がおこなわれていたようだった。主催はファッション雑誌で有名な『Vanity Fair Italia』で、スポンサーの名前にHondaがあった。残念ながら既に「HR-V e:HEV」に関するトークショーは終了していたが、日本人のHondaスタッフの方々に遭遇。今回はデザインに関してのトークショーをおこなったという。ファッションの先端の雑誌、Vanity Fairとのコラボレーションというところがとても新鮮。

 またブレラ地区を歩いている時に、「iGuzzini」と書いてある赤い大きな垂れ幕がかかっている会場があった。ランボルギーニの会場で発表していた照明会社だ。入ってみるとそこにはなんとラボルギーニ「ウラカンEVO RWD」が鎮座し、ディスクライトが展示してあった。この会社iGuzziniはランボルギーニのディーラーブースの照明を担当しており、今回はランボルギーニとのコラボしたプロダクト照明MYAのお披露目だという。

フェラーリ308GTSのレストモッド「Progetto 308M」

フェラーリ308GTSのレストモッド「Progetto 308M」

●レストモッドの「308」

 刺激的なミラノの街を歩いていたら、友人から電話が入った。レストモッドとして発表された「Progetto 308M」(ベースはフェラーリ「308GTS」)がどうやらミラノの街を走っているらしい。インスタにアップされていたので、すぐに連絡したみたらどうだ? という。

 面白そうだ。直ぐに連絡をしたところ、相手からメッセージが届いた。場所はなんと私が歩いている通りと目と鼻の先。エルメスの会場の前にパーキングしているという。

 とにかくその場に向かった。ミラノのどこにでもあるような通りに、普通のクルマの中に混じって真っ赤なProgetto 308Mが縦列駐車していた。そして若い男性がクルマの前で立っていた。

 彼の名は、Gianluca Maggiore(ジャンルーカ・マッジョーレ)。このクルマを作った人物だ。メーカーの正式名称はAutomobile Maggiore。

 鮮やかなブルーのラインが目を引く。夏にサルディニア島でおこなわれたコンクールデレガンス「Poltu Quatu Classic 2021」のレストモッド部門で優勝したという。Gianlucaとの出会いはフオーリサローネという自由な形のデザインイヴェントだからこそだろう。

* * *

この他にもデザインウイーク中、何社かのクルマを見かけた。最近はモーターショーに出展しないメーカーが増えており、どこも新車を始めとする情報発信のあり方を模索している最中のようだ。今後のクルマの発表の方法は、これまでにないような、多方面の業界とコラボして、あらゆる方法でなされていくのではないだろうか?

 想像していなかった場所で突然遭遇するレアなスーパーカーへの驚き。個人レベルでの情報発信が活発な今日この頃、街で見かける刺激が思いもよらぬ展開になることもあるだろう。

 これからどんな奇想天外な発想が飛び出してくるか、今から楽しみだ。

ジャンルで探す