「GT-Rは緊急車両に不適切」豪州で出されたジェンダーバイアス的意外な理由とは?

オーストラリアは都市間の距離が長いため、医師が自前の緊急車両を持つことも少なくありません。そんななかある医師が緊急車両に日産「GT-R」を登録しようとし、拒否されてしまいました。スピードが求められる緊急車両と相性が良さそうに見えるGT-Rですが、一体どのような点が不適切と判断されたのでしょうか。

拒否理由には疑問なところも

 2021年9月、オーストラリア南西部の過疎地で複数のクリニックを運営する医師が、自身が所有する日産「GT-R」にサイレンと警光灯装着(緊急車両指定)したいと担当機関に申請し、拒絶されたことがニュースで取り上げられ話題になった。

 申請したのはマイケル・リビングストン医師。彼は「リビングストン・メディカル」というクリニックを経営しており、オーストラリアの国営放送局ABCが報じたのは、GT-Rが緊急車両に指定されなかったことを含め、実際にリビングストン医師による緊急移動を必要とした子供のケースを取り上げ、厳しい過疎医療の現状についてというものだった。

 オーストラリアでは地元医師会が発行する「エマージェンシー・パス(緊急パス)」と呼ばれるものが存在する。リビングストン医師が在住しているエリアの西オーストラリア州警察では、このエマージェンシー・パスを所持していれば急患往診時のスピード違反や罰金については“柔軟”な対応をする、としている。

 つまり、スピード違反をおおやけに許容しているわけではなくケース・バイ・ケースで対応してくれる、というもの。もちろん、リビングストン医師はこのパスを所有している。しかし、パスを所有しているからといって、周囲のクルマが急患往診中か否かを認識する術はない。

 急患往診中、トラックを追い越そうとするとわざと幅寄せされたり、血気盛んなドライバーに“ストリートレース”を挑まれたりすることが多いとリビングストン医師はいう。急患往診中の医師が面倒なこと巻き込まれ、事故に遭って現場までたどり着けない……なんてことだけは避けたいものだ。

マイケル・リビングストン医師と日産「GT-R」(おそらく2015年式)(C)ABC News

●男性だから認められないは時代錯誤!?

 ところで、日産GT-Rの申請が拒絶された理由だが、「男性は事故に遭いやすい」、「GT-Rのボンネットが低いので、動物と衝突すると危険」とのことだった。

「男性は事故に遭いやすい」という理由付けは昨今、かなりセンシティブなジェンダー・バイアスのようにも感じられてならない。これだけでも相当な反発を招きそうだが、意外にもとくに話題にはなっていないようだ。

「ボンネットが低く動物と衝突すると危険」という理由は一見、納得できなくもない。オーストラリアには野生動物が数多く生息しており、クルマとの衝突は決して稀な事故ではない。事実、オーストラリアには「ブルバー(Bull Bar)」と呼ばれる後付けの動物衝突用バンパーが普通に販売されているほどだ。

 ただ、GT-Rのボンネットが「クーペとして」低いか、と問われれば実はそうでもない。おそらくミニバンやSUVといった、オーストラリアで現在認可されている救急車のベース車両と比較したのだろう。

 そもそもエマージェンシー・パスを所持しているリビングストン医師は、急患往診中は速度制限超過しながらの移動が可能だ。そんな移動車両にサイレンと警光灯の装着を認めることが、なぜそんなに難しいのか理解に苦しむ。

 どうやらオーストラリアで認可される緊急車両は、行政機関が所有する車両のみ、という前例が邪魔していそうだ。前例を重んじるのは、日本だけではないようだ。

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