総裁選目当て? 岸田首相の電気・ガス補助復活 唐突さに与党からも戸惑い

岸田文雄首相(自民党総裁)が打ち出した電気・ガス料金の負担軽減策を巡り、自民、公明両党から戸惑いの声が上がっている。与党への根回しが遅れた上、5月にいったん補助を打ち切ったにもかかわらず、短期間で再開するドタバタぶりとなったためだ。9月の自民総裁選を見据えた首相の再選戦略の一環との見方も出ており、首相の窮状は身内からも見透かされている。

「政府で賃上げ、減税に取り組んできたが、これらの効果がだんだんと出てきている。今回の対策も含めて、国民にしっかり届けていく」

首相は27日、官邸で自民の渡海紀三朗政調会長らから電気・ガスなどの料金補助に関する提言を受け取り、こう述べた。公明も同日、首相に提言を申し入れた。

ただ、首相はすでに21日の記者会見で、酷暑対策として8~10月の3カ月間、電気・ガス料金の補助を行う方針を表明済みだ。電気代は標準世帯で毎月約1400円、ガス代は約450円の負担軽減とする案を軸に、具体的な調整が始まっている。与党は今回の申し入れで首相方針を追認した格好だが、順序があべこべな印象は否めない。

突然の補助再開を疑問視する向きは強い。電気・ガス料金の補助は昨年1月の使用分から開始したが、資源高騰が落ち着いたとして、今年5月使用分で終了した経緯があるからだ。

「唐突感がある」「行き当たりばったりだ」

自民が25日に開いた政調全体会議では、出席議員から次々と批判が飛び出した。公明からも「唐突に発表というのはおかしい」(赤羽一嘉幹事長代行)と不満が噴出した。

猛暑対策と銘打ったにも関わらず、実施時期に7月が含まれていないことも、ちぐはぐ感を生んでいる。政府は「事業者の事務手続きに要する期間を踏まえた」(林芳正官房長官)と説明するが、閣僚経験者は「そもそも夏前に打ち切らなければ済んだ話だ」と首をかしげる。ある中堅議員は「政権浮揚に向けたバラマキと捉えられかねない」と肩をすくめる。

もっとも、今夏は昨年並みの猛暑になると予想されている。自民幹部は「熱中症患者を減らすため、補助再開の判断自体は間違っていない」と理解を示しつつ、「政権が弱っているから言いたい放題になってしまう」とぼやいた。(竹之内秀介)

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