首脳宣言、異例の前倒し=トランプ氏復権、揺れる国際協調―G20サミット

【リオデジャネイロ時事】ブラジル・リオデジャネイロで開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は、19日の閉幕を待たず初日に首脳宣言を公表する異例の展開となった。公表は、議長国ブラジルのルラ大統領が初日の討議終了後に表明したという。意見の隔たりを縮め、ぎりぎりまで合意形成を目指すより、「グローバルサウス(新興・途上国)」の一角として存在感をアピールすることを優先させた印象は拭えない。
今回の会議は、ペルーの首都リマで15、16両日開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に続き、「自国優先」を掲げるトランプ次期米大統領の就任を前に、国際協調の行方を占う場となった。目立ったのは影響力を強めるグローバルサウスの首脳。中国の習近平国家主席を筆頭に口々に「多国間主義」や「自由貿易」の重要性を訴えた。
首脳宣言でも、議長国ブラジルが重視する気候変動問題に関し「多国間主義への強いコミットメントを再確認する」と表明し、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」からの再離脱を掲げるトランプ氏をけん制。同氏が主張する関税の引き上げなどで懸念される保護主義の高まりに対しては「多角的自由貿易体制の必要性」で一致した。
もっとも、半導体材料など重要鉱物の輸出規制といった経済の武器化を進めている点では、中国も同等以上だ。今年6月にイタリアで開いた先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、首脳声明でこうした中国の行動を強く批判した。
だが、米国はバイデン政権がレームダック(死に体)化、G7で最も安定した政治情勢を誇った日本も衆院選の与党惨敗で、外交面で重要となる安定した政権基盤に黄信号がともる。
先進国だけでなく、中国やロシアなど新興国が参加するG20は、ロシアによるウクライナ侵攻以降、合意形成が難しくなっている。トランプ氏就任で先進国間の足並みも乱れれば、協調は一段と難しさを増す。
象徴的なのは第1次トランプ政権の際、合意を妨げる火種となった保護主義への対決姿勢を巡る表現だ。米大統領選の投開票前の10月に開いたG20財務相・中央銀行総裁会議では経済的分断をリスクに挙げ、「保護主義に抵抗する」姿勢で一致した。ただ、今回はトランプ氏の影がちらついたのか、直接的な表現は姿を消した。

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