アルピナの未来、26年「BMW傘下」でどう変わる? 高性能EV&Mモデルとの差別化を考える
BMW統合の影響
1965年に創業したアルピナは、BMW公認のチューニングブランド(車両の性能や外観を改良・強化する専門の企業やブランド)として確固たる地位を築いてきたが、2026年からBMWの傘下に統合されることがすでに発表されている。
アルピナは、BMWのベースモデルの性能にラグジュアリーを巧みに融合させた車両を提供しており、スポーティーさと快適さの両立を得意としている。
BMW純正チューニングブランド「M」とは異なり、アルピナは過度にアグレッシブな走行性能よりも、日常的な快適性を重視したクルマ作りで高い評価を受けている。
本稿では、BMW傘下に統合された後、アルピナの独自性がどのように生かされるのか、またBMW傘下での今後のラインアップについて考察する。
アルピナの歴史と成長の軌跡
本題に入る前に、アルピナの歴史を振り返ってみよう。
アルピナはもともと、ドイツ・バイエルン州でタイプライターなどの事務機器を製造していた企業だ。1961年、創業者の息子であるブルカルト・ボーフェンジーペン氏が、自身のBMW「1500」のキャブレターをチューニングしたことが、アルピナの始まりとなった。
ボーフェンジーペン氏が手掛けたエンジン性能は、すぐにドイツ国内で注目を集め、1964年にはBMWから高く評価されるまでに至った。その後、アルピナは
「BMW公認のチューニングブランド」
として認められ、BMWの車両保証が与えられた。
アルピナがコンプリートカー(ベースとなる車両を基に性能や外観の改良を加え、最終的に完成した状態で販売されるクルマ)の販売を始めたのは1978年で、1983年にはドイツ自動車登録局から自動車メーカーとして認定され、現在に至るまでBMWのコンプリートカーを製造し続けている。
年間生産1700台、約2割は日本へ
しかし、アルピナの商標権は2025年末にBMWグループに譲渡され、2026年からは
「BMW直轄のサブブランド」
として引き継がれることが決まっている。これにより、アルピナによるコンプリートカーの開発・生産・供給は終了する。2026年以降、アルピナはボーフェンジーペン社として再編され、エンジニアリングサービスを提供することになる。
アルピナは、BMWとの強固な信頼関係の下で独自の哲学を反映させたモデルを送り出してきた。ウェブサイトによれば、アルピナの年間生産台数は約1700台で、そのうち
「約300台」(18%)
が日本で販売されている。日本では1982(昭和57)年から総代理店ニコル・オートモビルズが輸入・販売を手掛けており、現在のラインアップは
・ガソリン車:4車種
・ディーゼル車:4車種
の計8車種だ。
電動化で新たな進化
2026年以降、BMW傘下となったアルピナモデルにはどんな特徴が出るだろうか。
アルピナはこれまで、BMWの各モデルに独自のチューニングを加えてきた。今後もこの流れが続き、BMWの主力モデルである5シリーズや7シリーズをベースに、ハイブリッド車や電気自動車(EV)モデルのアルピナバージョンが登場する可能性が高い。
特に、BMWが進める電動化に合わせて、高性能なEVやプラグインハイブリッド車(PHEV)の開発が進むと予想される。また、アルピナ・XD3が成功を収めた背景には、ディーゼルスポーツタイプ多目的車(SUV)市場の需要に応えたことがあり、今後もこのようなニッチなモデルがラインアップに加わるだろう。
アルピナモデルを語る上で欠かせないのは、BMWの
「Mモデルとの差別化」
だ。両者の大きな違いは、チューニングによる乗り味にある。BMWのMモデルは、サーキットでのパフォーマンスを重視し、アグレッシブな走行性能が求められる。一方、アルピナは日常的な使用を重視し、高速道路での長距離走行でも快適な乗り心地を提供することを重視しており、ここが大きな違いとなっている。
アルピナモデルは、Mモデルの硬いサスペンションとは対照的に、柔らかい乗り心地を提供し、ラグジュアリーなインテリアも特徴的だ。こうしたアルピナならではの特徴は、BMW傘下となっても引き継がれ、Mモデルとうまく共存する戦略が取られるだろう。
最終章であるB3GTとB4GT
XD3の魅力は、高性能なディーゼルエンジンとSUVとしての実用性を兼ね備え、ラグジュアリーでありながらパワフルな運転体験を提供する点だ。また、アルピナ独自の電子制御プログラムによって、アルピナらしい乗り味が実現されていることも評価されている。
XD3のベース車であるBMW・X3はアメリカのサウスキャロライナ州で生産されているが、XD3として仕上げるために、すべてドイツのアルピナに輸送され、そこでチューニングが施される。
さらに、年末にB3GTとB4GTが発売される予定だ。これらは
・アルピナの独自手法
・BMWのテクノロジー
が融合した最終モデルになる可能性が高く、将来的にはコレクターズアイテムとして価値が高まると期待されている。アルピナファンにとっては、まさにラストチャンスとなるだろう。
11/21 14:10
Merkmal