年収400万未満はお断り? 最近の「車中泊」なぜ年収600万以上が興味を持つのか?

レジャーとしての車中泊経験

車中泊のイメージ(画像:写真AC)

車中泊のイメージ(画像:写真AC)

 ホンダアクセス(埼玉県新座市)が実施した「秋レジャーと車中泊に関する調査2024」によると、1000人の回答者のうち34%が「車中泊をしたことがある」と回答した。この調査は2024年10月24日に発表された。

 男女・年代(20~60代)別で見ると、

・50代男性:47%
・40代男性:45%

が多く、一番少ないのは50代女性20%だった。男性は中年に経験者が多く、女性は若い世代に多い傾向がある。

 経験回数は「1~2回」(41.8%)が一番多かったものの、経験者全体の平均は10.6回になり、リピート率の高さがうかがえる。場所としては

「車中泊可の道の駅」

が65.3%で圧倒的に多い。オートキャンプ場(20.3%)やRVパーク(6.8%)に大きく差をつけている。

 寝方(複数回答)は、「運転席・助手席で背もたれを倒して」62.1%、「後部座席で横になって」37.9%といったシンプルな方法が多い。

「(マット・マットレスは使わない)フルフラットにして」(28.8%)、「フルフラット・荷室でマット・マットレスを敷いて」(24.1%)といった、より快適な環境を取れない人が多いせいだろうか、今後も車中泊を「非常にしたいと思う」は19.4%、「まあしたいと思う」が32.1%だった。

『デジカメWatch』によれば、車中泊は、

・サーフィン
・星景、戦闘機、鉄道等の写真撮影
・釣り
・スキー

といった早朝や夜間に活動する趣味がある人の需要があるという面がある(2023年5月11日付)。仮眠のつもりの人もそれなりに多いのだろう。

車中泊をする人の年収

車中泊のイメージ(画像:写真AC)

車中泊のイメージ(画像:写真AC)

 車中泊はここ1~2年のホテル料金の高まりで、需要が一層高まっていくことが考えられる。筆者(古宮宗、フリーライター)は以前、ミニバンで

「犬連れ車中泊」

をしたことがある。フルフラットにして古い布団を敷いて寝た。フルフラットといっても段差があったり、想像以上に車内が寒かったりと、快適とは決していえなかったのが正直なところだ。

 その経験からすると、日産が2024年12月に発売する予定の車中泊向けバン「NV200バネット MYROOM」は、フラット具合がまるでベッドのようで寝心地がよさそうである。大人ふたりが寝られる広さで、木目調の内装で部屋感覚があり、荷物スペースも確保できるところが魅力だ。希望小売価格は

「464万3100円~496万7600円」

と決して安くはない。人が無理なく購入できる車の金額の目安というのがあって、

「年収の5割」

とされているが、 車中泊をする人々の年収はどうだろうか。

 データマーケティングマガジン『マナミナ』の調査によれば、特に世帯年収が

「600万~1000万円」

の人々が車中泊に高い関心を示しており、

「400万円未満」

の世帯ではその関心が低くなっていることがわかった(2024年4月2日付)。同媒体は、この結果を受けて

「一般的には、車を所有していれば車中泊はそれほどコストがかからないと考えられがちですが、快適な車中泊を楽しむためには、マットやカーシェードといった車用アクセサリーのほか、寒い季節には冬用寝袋や暖房器具が必要です。ホテルやキャンプに比べ宿泊費は不要ですが、快適な体験のためにはある程度の初期投資が必須です。そもそも車を持つためにもお金がかかるため、ある程度、可処分所得に余裕ができる世帯年収600万円~1000万円の関心が高くなるのかもしれません」

と分析している。

キャンピングカーの需要

キャンピングカー(画像:写真AC)

キャンピングカー(画像:写真AC)

 居住性をさらに高めるとなると

「キャンピングカー」

にたどり着く。キャンピングカーの価格は、他の車種同様、最近上がっている。エンジンをかけずとも電化製品を使えるバッテリーや空調といった装備品を含めて1000万円を超えるものがメインになってきているという(2024年5月21日付、日本経済新聞)。

 それでも2023年のキャンピングカー販売売上総額は、新車・中古車を合計して過去最高の1054.5億円(対前年比138%)を記録した(2024年2月2日付、日本RV協会)。

 国内キャンピングカーの保有台数は、2022年より1万台増えて15万5000台となった。2005(平成17)年の5万台から3倍になっている。

 旅行目的が76.3%でキャンプ(8.5%)、アウトドア(7.9%)を含めてもレジャー目的が多いわけだが、

「災害時の住居」
「テレワークが出来るオフィスとしての利用」

といった関心も高まっていることも見逃せない。

災害時の車中泊

車中泊のイメージ(画像:写真AC)

車中泊のイメージ(画像:写真AC)

 実際、災害時の車中泊利用の割合が高かった例がある。2016年4月に発生した熊本地震において、

「避難者が避難先とした場所」(複数選択可能)

として、回答者800人の74.5%が車中泊を経験した(2023年10月25日付、内閣府『車中泊避難者への支援について』)。

 これは、自宅(50.9%)、避難所(45.3%)、親戚や知人宅(18.4%)を大きく上回っている。なお、テント泊は1.5%にすぎなかった。

 最初から避難所を利用した人は16.6%に過ぎず、最初から車中泊・テント泊等に避難した人は52.9%と圧倒的に多い。

 また、避難所から車中泊等に切り替えた人が14.6%いたのに対し、逆に車中泊等から避難所に切り替えた人は7.5%にすぎなかったことから、車中泊にいかに需要があるかがわかる。

 車中泊をする理由には、以下が多い。

・余震が怖いので避難所に避難したくなかった
・老人・幼い子ども・ペットなどがいるため
・プライバシー確保
・感染症対策
・避難所がいっぱい
・空き巣対策や車に積んだ財産管理のため

場所は、防災倉庫や耐震性貯水槽がある「都市公園」、駐車スペースが広い「大型商業施設」が多かった。

車中泊の問題点

車中泊のイメージ(画像:写真AC)

車中泊のイメージ(画像:写真AC)

 車中泊で一番問題とされやすいのは、「健康問題」である。

 トヨタ自動車の「車中泊避難ヘルプBOOK」(2023)によれば、新潟中越地震や熊本地震でエコノミークラス症候群を発症した人の車中泊率が高かったという。40代から60代の女性を中心に発症したのが、

・車の中で長い時間同じ姿勢を取る
・トイレ環境の悪さから水分摂取を控える
・避難時の足のケガや打撲がある

と、血栓ができやすくなるそうだ。熱中症、一酸化炭素中毒のリスクもあるし、浸水の危険等についても注意を支払う必要がある。とはいえ、避難所にいても、エコノミークラス症候群は発生するし、熱中症も発生する。

 2017年の内閣府の調査では、全国自治体において、車中泊等の避難者を想定した対応策を検討していないところが54.8%あった。

 自治体サイドからすると、車中泊は状況把握がしづらい。熊本地震においても、

・夜間のみ駐車場に戻ってくる人
・点々と場所を変更する人

がいたことから、人数把握が難しかったという。物資配布等にも影響がある。国としては実情を踏まえ、車中泊避難者の支援において、

「行政が実施すべきところをどのように考えるか」

投げかけているところのようである。

 今後車選びをする際は、災害避難の点からも考える必要があるかもしれない。

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