交通事故対応の敵? 保険会社の「とんちんかん対応」が引き起こす問題、軽微な事故がもたらす意外な負担とは

交通事故に遭って知ったこと

交通事故のイメージ(画像:写真AC)

交通事故のイメージ(画像:写真AC)

 友人Aが車を運転中に交通事故に遭った。停車しているところを相手の車にぶつけられたが、幸いにも車の損傷は小規模で、けがも軽いものだった。

しかし、軽い事故のために

「事故の対応に関する悩み」

が増えた。Aが乗っていたのはファミリーカーで、車の管理は家族に任せっぱなしだった。特に強く後悔したのは、

・自動車保険の弁護士特約に入っていなかった
・ドライブレコーダーを設置していなかった

ことだった。

 知っている人には常識かもしれないが、知らない人にとっては全く知らない落とし穴である。

事故後の交渉、過失ゼロの壁

弁護士のイメージ(画像:写真AC)

弁護士のイメージ(画像:写真AC)

 事故が発生したとき、警察を呼ぶことになっている。警察は事実関係を確認するが、民事不介入の原則から、どちらがどれだけ悪いのか、過失割合については言及しない。

 民事不介入の原則とは、国や公的機関が基本的に人と人の間で起こるトラブルに介入しないという原則だ。この原則は、個人の自由や自分で物事を決める権利を大切にしており、警察がそのトラブルに関わるのは、当事者が訴えを起こしたときや法律に基づく明確な理由があるときだけである。

 警察を待つ間、Aが保険会社に連絡すると、相手方の名前、住所、電話番号をきくようにいわれた。その後はすべて保険会社を通じての処理になるものだと思っていたが、実際は違った。

 Aは事故の責任は完全に相手側にある、過失割合は相手が100%、Aが0%と考えていたのだが、その場合、Aの保険会社を使うことはできない。つまり加害者の保険会社とAが直接交渉しなければならないのだ。

 当然交渉は難航する。加害者の保険会社はAの過失0を認めない。Aの保険会社も相談には乗ってくれる。都度アドバイスをもらうのだが、相手もプロ。話が全く進まない。

 過失割合が決まらなければ、車の修理も簡単に進められない。費用を立て替えれば修理自体はできるのだが、過失割合が決まらなければ、どれだけ持ち出しになるのかわからないので、修理方法の選択が難しい。

 Aが対等に渡り合うには、弁護士に入ってもらうしかないのだが、それには費用がかかる。ネットで検索すると着手金が最低でも

「10万円」

と出てくる。ほかに相談料、成功報酬、実費がかかる。小規模の修理の場合車の修理費用も少額になる。これを上回る弁護士費用になれば、損になる。

 弁護士特約をつけていれば、弁護士費用300万円まで保険会社が負担してくれる。保険会社にもよるが月々300円程度、保険料に上乗せするだけだ。交渉するうえでの精神的負担が大きく減る。また弁護士の介入で慰謝料などの増額が期待できる。

ドライブレコーダーの重要性、

ドライブレコーダー(画像:写真AC)

ドライブレコーダー(画像:写真AC)

 Aは加害者の保険会社から、

「非がないというなら証拠を出せ」

といわれ続けた。非がない証明というのは本当に難しい。映像や証人といった客観的な証拠が必要となる。

 被害者なのに、非がない証拠を出さなければいけない、そのために奔走しなければならないのが交通事故である。ドライブレコーダーがあればそれがかなう。

 ドライブレコーダーがなく、監視カメラがある場所で事故に遭った場合はどうか。はっきりうつっている保証はない。またAの保険会社の担当によれば、映像を見せてくれるところもないことはないらしいが、たいていは不可能だ。

 店舗は警察にしか見せられないと回答したりする。防犯の手の内を見せることになる、個人情報であることが理由である。

 弁護士なら映像の開示請求ができるが、これも弁護士特約をつけておく理由につながる。

 ただ、もっとも確実なのは自身の車にドライブレコーダーをつけておくことだ。ネット通販サイトを見ると、商品は1万円台が中心となる。過失割合に影響があるのであれば、安い買い物だ。

 ちなみに、警察には、事故によるけがの診断書を提出し人身事故扱いとなれば、監視カメラの調査を依頼できるのだが、警察が必ず請求してくれるとは限らない。もし見てもらえたとしても、その映像は渡してもらえないので、過失割合のための証拠にはならない。

過失割合で変わる修理代

過失割合のイメージ(画像:写真AC)

過失割合のイメージ(画像:写真AC)

 このように、証拠が出せるか、弁護士が間に入ってもらえるかは、過去の裁判所の判断に加え、過失割合を決めるうえで重要となってくる。

 過失割合が経済的な面でどう影響をするのか。

 例えば車の修理に関して、Aの車のみ小規模の修理が発生したとしよう。それが20万円の場合、過失割合が加害者100%、Aが0%であれば、相手(の保険会社)が全額払う。

 これが加害者90%、Aが10%となれば、Aは2万円の負担になる。

 加害者80%、Aが20%となれば、Aは4万円負担しなければならない。加害者の車の修理代も発生したとして、それが10万円であれば、合計30万円の20%を負担することになり、合計6万円支払わなくてはならなくなる。

 Aは結局諦めて、過失を認めることにした。たいした額ではないと思う人もいるだろうが、自身に過失がないと信じているのに負担するのは口惜しいものだ。

 自身の保険を使って支払うこともできる。しかし等級が下がり、翌年から3年間は保険料の負担が増えてしまう。その増加分と照らし合わせて、保険を使うのか、自身で支払うのかを決めるのだが、Aの場合は、保険増額分の方が大きかったので、自腹を選択した。

 過失割合と保険の関係はさまざまな取り決めがあって複雑なのだが、車の修理だけでなく慰謝料などさまざまな面に影響する場合があり、大きな事故では10%の過失割合の違いが数百万円の差になりえたりする。

大事な心の平和と経済

心の平和のイメージ(画像:写真AC)

心の平和のイメージ(画像:写真AC)

 事故は小さなものであっても対応が大変だ。

 車が傷つき、けがをする。リハビリや事故対応で仕事やプライベートの予定を変更・キャンセルすることになる。

 加害者の保険会社からは不快なことをいわれ、警察は人身事故の申請を嫌がり、労災であれば会社が申請を嫌がり、プロのはずの保険会社が

「とんちんかんなアドバイス」

をしてきてふりまわされ、人間不信にもなる。

 弁護士特約とドラレコ設置で精神的負担が減り、経済的なメリットもあればとてもよい買い物ではないか。

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