旧「東京モーターショー」開幕まで1か月を切ったのに、全然盛り上がっていない根本理由

50年ぶりの挑戦

幕張メッセ(画像:写真AC)

幕張メッセ(画像:写真AC)

 2024年10月15日から18日まで、千葉市の幕張メッセで「ジャパンモビリティショー・ビズウィーク2024(JMS2024)」が開催されるが、例年に比べて盛り上がりが欠けているように感じる。

 SNSやメディアでの話題性が低く、注目を集める動きが見られず、参加者の反応も控えめで、熱気を感じられない。

 2023年に開催された「ジャパンモビリティショー」は、以前の「東京モーターショー」から名称が変更され、来場者数は

「約111万人」

だった。このイベントは1954(昭和29)年に「全日本自動車ショウ」として初めて開催され、会場は東京の日比谷公園だった。

 その後、1959年から1987年までは東京・晴海の東京国際見本市会場、1989(平成元)年から2009年までは幕張メッセ、2011年以降は東京ビッグサイトで開催されてきた。第20回までは毎年開催されていたが、オイルショックの影響で1975年以降は隔年開催となった。

 本稿では、JMS2024が約50年ぶりに毎年開催に戻った経緯や、これまでの出展準備の状況を考察し、JMS2024の成功のカギを探る。

毎年開催となった根本理由

1960年代の東京モーターショー(画像:Project kei)

1960年代の東京モーターショー(画像:Project kei)

 JMS2023で毎年開催が決定したのは、当時の日本自動車工業会(自工会)の豊田章男会長が会期初日に提言したことがきっかけだった。

 会期の最終日には、豊田会長とタレントのマツコデラックスによるトークイベントが行われ、スタートアップ企業などついてのやりとりのなかで、マツコ氏が

「優れた技術でも2年に1回では遅れてしまうので、毎年開催するべき」

と提案した。これに対し、豊田会長は「次の(自工会)会長が決めることだが、検討したい」と答えた。その後、2024年1月1日に片山正則氏(いすゞ自動車会長)が自工会会長に就任したが、JMS2024の開催概要についての発表はしばらくなかった。

 さて、例年に比べて盛り上がりに欠けているように感じる理由のひとつは、今回の開催概要が従来と大きく異なり、

「ビジネスマッチング」

に特化しているからだ。ビジネスマッチングとは、企業や個人が互いにビジネスの機会を見つけるためのプロセスやイベントだ。参加者は、製品やサービスの提供、パートナーシップの形成、新しい顧客の獲得といった明確なビジネス目標を持っている。さまざまな企業や個人が集まり、ネットワーキングを行ったり、事業提携の可能性を探ったりする。このようなビジネスマッチングは、新しいビジネスの創出や拡大、そしてネットワークの構築において、非常に重要な役割を果たしている。

 前例のないビジネスマッチング中心のプログラムの検討には時間がかかったようだが、豊田会長の毎年開催の意向は引き継がれていた。2024年の5月に、新たな事業共創を推進するビジネスイベントとして正式に開催が発表され、デジタルイノベーションの総合展「CEATEC(シーテック) 2024」との同時開催も発表された。

 JMS2024の主な企画は三つに分かれており、

・ブース出展エリア(スタートアップ企業150社と事業会社50社の計200社が出展予定)
・ビジネスマッチングプログラム(オンラインおよびリアルイベントでのマッチング)
・未来モビリティ会議(基調講演やテーマ別ディスカッション)

となっている。このようにビジネスに特化した企画が多いことが、従来のモーターショーの雰囲気を薄れさせている要因のひとつとなっている。

 自工会による出展募集は6月21日に開始された。しかし、出展を検討する企業のほとんどにとっては、すでに決まった当年度の予算から出展費用を捻出するのは難しいタイミングだったといわざるを得ない。なかには先にCEATECへの出展を決めていた企業もあり、混乱を招いたことは間違いない。出展受け付けは現在までに締め切られたが、ビジネスマッチングの申し込みは9月中旬から受け付けが始まっている。

CEATECとのシナジー活用

2011年以降開催されていた東京ビッグサイト(画像:写真AC)

2011年以降開催されていた東京ビッグサイト(画像:写真AC)

 CEATECの起源は、1962(昭和37)年に開催された「日本電子工業展」にさかのぼる。

 この展覧会では、テレビやラジオといった音響機器、無線機器、測定器、電子部品などが出展され、パーツから完成品まで幅広い分野をカバーした総合展として現在まで受け継がれている。

 毎年1月に米国ラスベガスで行われるCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)と比較されることも多く、出展企業が最新技術を披露することで毎年注目を集めている。

 近年では自動車関連企業の出展も増加している。2023年は、

・三菱電機(自動運転レベル4移動サービス)
・京セラ(無人自動走行ロボット)
・東芝(EV充電用タンデム型太陽電池)
・シャープ(クリックディスプレー)
・パナソニック(各種車載部品)

などが出展していた。

 併催によって、自動車分野の最新技術に触れる機会が増え、両イベントの役割を補完し合うことができる。また、事前に来場者登録をすることで無料で入場でき、両会場を自由に行き来できるため、集客面でも相乗効果が期待できる。

JMS2024を盛り上げる自工会

1985(昭和60)年頃の東京国際見本市会場(画像:国土地理院)

1985(昭和60)年頃の東京国際見本市会場(画像:国土地理院)

 JMS2024に「ビズウィーク」という名称が付けられることが2024年8月に発表された。これはビジネスに特化したイベントであることを強調する狙いがある。自工会は、出展企業をサポートするためにさまざまな施策を講じて、イベントの魅力を高める取り組みを進めている。

 まず、出展料を

「無料」

にすることで、出展企業の負担を軽減している。通常、1小間(9平方メートル)の出展料は数十万円から数百万円に達するため、特にスタートアップ企業にとっては大変ありがたい配慮だ。

 次に、ビジネスマッチングを促進するためのオンラインコミュニケーションツール「ミートアップボックス」を8月20日から開設した。このツールでは、参加企業の情報を閲覧したり、商談の予約をしたり、興味のあるプロジェクトに直接オファーを送ったりすることができる。

 プロモーション施策については、2023年のJMS2023開催中に自動車メーカー各社のテレビCMで来場を促していた。しかし、今回はビジネスマッチングに特化した

「平日開催」

となるため、さまざまなメディアを使ったプロモーションが行いづらく、認知度が進まない原因となっている。

 JMS2023では、映画や音楽などの各種イベントに加えて、人気芸人によるお笑いライブや子ども向けの職業体験型施設「キッザニア」とのコラボレーションなど、幅広い世代が楽しめるイベントが多かった。しかし、2024年はそうした集客企画が期待できず、集客力をどう高めるかが課題となっている。

 2023年のCEATECの来場者数は9万人近く、コロナ禍前の2019年は1.7倍の約15万人だった。最新技術が一堂に会するイベントとしての認知度が高いCEATEC2024からJMS2024への来場者の流入に期待したいところだ。

新時代のビジネスチャンス

ビジネスマッチングのイメージ(画像:写真AC)

ビジネスマッチングのイメージ(画像:写真AC)

 JMS2023は、約70年続いた「東京モーターショー」が「モビリティショー」へと変化する重要な転換点となった。

 自動車業界は100年に一度ともいわれる大きな変化を迎えており、モビリティの形態や用途も変わりつつある。

 そんな時代に合わせて、従来の隔年開催から毎年開催に生まれ変わるJMS2024は、ビジネスに特化し、新たな需要を生み出す役割を果たしている。

 今回のJMS2024でのビジネスマッチングをきっかけに、後世に語り継がれるようなイノベーションや化学変化がたくさん生まれることを期待したい。

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