南海トラフの脅威!紀伊半島123万人が直面する「脆弱インフラ」の現実、能登半島地震が示した教訓を生かせるのか?

能登半島の教訓

紀伊半島(画像:国土交通省)

紀伊半島(画像:国土交通省)

 2024年8月8日に南海トラフ地震の臨時情報が発出された。南海トラフ地震は広範囲に被害をもたらす可能性があり、日本にとってこの地震に備えることは急務である。

 近畿地方南部、太平洋に突出する紀伊半島は、南海トラフ地震の影響を特に受けやすい地域とされている。この地域は山が多く、平野が少ないため、地震による被害が懸念される。

 その地形は、2024年1月1日の地震で大きな被害を受けた能登半島と多くの共通点がある。今回は、能登半島地震の経験が南海トラフ地震、特に紀伊半島にどのように活かされるのかを考えてみたい。

紀伊半島の脆弱インフラ

能登半島地震(画像:写真AC)

能登半島地震(画像:写真AC)

 1月1日に発生した能登半島地震は、東日本大震災ほどの広範囲に被害を及ぼしたわけではないが、それでも能登半島には深刻な被害をもたらした。発生当初、山岳部を中心に孤立した集落が点在し、救援物資の搬入も遅れた。このことについては自衛隊の対応の不備が指摘されているが、実際には能登半島のインフラの脆弱性がより重要な要因である。

 能登半島は山が多く、平野が少ないため、移動が難しい。半島を周回する国道249号線と、半島東側を国道249号線よりやや内陸部を走る能越自動車道に頼るしかない。このほかに、のと里山海道などもあるが、全体的に見てインフラはかなり脆弱だといわざるを得ない。

 また、能越自動車道は輪島市にはまだ繋がっておらず、現在工事中である。一方、能登半島の内陸部は山岳地帯で、高速道路や国道が通っていない。そのため、山を縫うように走る県道や市道を利用するしかない。このようなインフラの脆弱性が、地震時の救援活動を困難にしている。

 紀伊半島にも同様の特徴が見られる。紀伊半島の和歌山県や奈良県、三重県部分では、都市は沿岸部に集中しており、河川に沿って複数の都市が存在する。紀伊半島を周回する国道42号線や紀勢本線、阪和自動車道、湯浅御坊道路などのインフラがあるが、一部は建設中や暫定開業の状態で、全体的には整備が進んでいない。内陸部も山岳地帯で、川に沿った道路しか通っていない。

 紀伊半島と能登半島の違いとして、紀伊半島は広大で人口も多い。能登半島の面積は2404平方キロメートル、人口は約16万人であるのに対し、紀伊半島は9900平方キロメートルで、和歌山県、奈良県、三重県に住む人々は123万人に達する。

 南海トラフ地震では紀伊半島に大きな被害が予想されているが、能登半島地震の経験は南海トラフ地震に対しても応用できると考えられる。

防災に挑む紀勢自動車道

能登半島地震(画像:写真AC)

能登半島地震(画像:写真AC)

 南海トラフ地震では、地震や津波が紀伊半島の沿岸部に大きな被害をもたらすと予測されている。能登半島と同じように、紀伊半島も山岳地域が多く、沿岸部にも山が連なっているのが特徴だ。

 紀伊半島のインフラ整備においては、防災やリスクマネジメントの観点が活かされている。沿岸部では、阪和自動車道や新直轄方式で建設されている紀勢自動車道が進められており、これらの高速道路は和歌山県や三重県の各都市を結ぶ広域ネットワークを形成している。防災や災害発生時の物資搬出路としての役割を持ち、沿岸部から少し離れた位置に建設されているため、万が一の際には“命の道”として機能するように設計されている。

 しかし、これらの努力が南海トラフ地震でどのように機能するかは未知数だ。山岳地帯では道路網が寸断され、復旧に時間がかかることが予想される。特に、山岳地域では救援物資や救助要員、復旧要員を送り込むための道路網が脆弱で、ひとつのトンネルや道でがけ崩れが起きると、大きな迂回を強いられる場合もある。

山岳救援の難しさと対策

南海トラフ地震の注意喚起(画像:写真AC)

南海トラフ地震の注意喚起(画像:写真AC)

 現在想定されている南海トラフ地震が発生すれば、日本にとって大きな試練となるだろう。この地震は、東日本大震災のように広範囲にわたる災害であるだけでなく、山岳地域の被災地救援という難易度の高い課題も含んでいる。

 もちろん、具体的にどのような被害が出るか、どこが被災するかはその時にならないとわからない。しかし、山岳地域での地震対応が難しいことは、能登半島地震が証明している。救援物資の搬入や、その後の復興も容易ではない。

 このような状況のなかで、どのような対策を講じるべきだろうか。2024年8月8日、南海トラフ地震に関する臨時情報が初めて発出された。これは、災害発生時の被害を最小限に抑えるための措置だ。現在、幸いにも地震は発生していないが、地震が来ないと確約できるわけではない。

 今回の臨時情報発出を受けて、地震臨時情報のあり方や南海トラフ地震への備えも見直されるだろう。災害が発生した際の被害を最小限にするため、これからも努力が必要である。

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