街中で見かける「青いパトカー」のような車、実は何をしているの? その秘密に迫る

防犯パトロール車両の謎

青パト回転灯(画像:写真AC)

青パト回転灯(画像:写真AC)

 青色のパトランプ(回転灯)を装着したパトカーのようなデザインの車両を見たことがあるだろうか。実はこの車両、警察から「自主防犯パトロール」の適正な運行が認められた団体が使う防犯パトロール用の車両なのだ。パトカーではない。通称

「青パト」

と呼ばれる。

 パトランプは道路運送車両法で細かく規定されているため、防犯パトロールのために自由に装着できるわけではない。青パトを運用するには、警察署や陸運局への申請が必要だ。

 通常のパトロールは警察のパトカーで行われるため、わざわざ青パトでパトロールする必要がないように思える。しかし、それでも青パトが存在しているのはなぜだろうか。

街頭犯罪抑制の青パト効果

青色防犯パトロールカー(画像:写真AC)

青色防犯パトロールカー(画像:写真AC)

 青パトが存在する理由は、まさに「防犯」のためだ。2020年度の犯罪白書によると、刑法犯の認知件数は1996(平成8)年から毎年増加し続け、2002年には285万4061件に達した。

 このような状況のなか、地域住民の

「自分の街は自分で守る」

いう自主防犯意識が高まり、2004年12月1日から「青色防犯パトロール」が導入された。当初、全国で約100団体しかなかった自主防犯団体は、現在では7000を超え、青パトの台数も8万台以上に増えている。

 この結果、2003年をピークに刑法犯の認知件数は減少し続けているが、2019年でもその認知件数は74万8559件(2002年比で74%減)に上り、市町村数で割ると、すべての市町村で1日あたり

「約1.2件」

の刑法犯が発生している計算になる。犯罪発生率の高い地域では、さらに多くの刑法犯が発生しているだろう。

 特に、窃盗や器物損壊、暴行傷害、強制わいせつといった“街頭犯罪”が多くを占める。少人数で広い範囲をカバーできる青パトは、その視認性の高さから犯罪抑止効果が期待されてきたのだ。

ボランティアの負担軽減

青色防犯パトロールカー(画像:写真AC)

青色防犯パトロールカー(画像:写真AC)

 青色防犯パトロールには、防犯効果があるのだろうか。九州大学・三崎輝寛氏の修士論文『青色防犯パトロールの実態から見た地域防犯まちづくりに関する研究』(2013年)によると、オートバイや自転車の盗難について、パトロールが行われていない区域に比べて犯罪の減少幅が大きく、有意な差が確認されている。この研究では、

「犯罪が発生が特定の場所に集中するような特徴を持つ犯罪に対して抑止力があると考えられる」

と報告されている。また、

「地域住民の防犯意識が向上する」

という副次的な効果も期待できるようだ。

 さらに、自動車によるパトロールは、活動を支えるボランティアへの負担軽減にもつながる。少人数でも広範囲をカバーできるため、不審者に遭遇しても車外に出る必要がなく、ボランティアが直接危害を受けるリスクを避けられる。深夜や早朝といった危険な時間帯でもパトロールが可能になるのだ。

人材確保の課題と対策

街を巡回中の青パト(画像:写真AC)

街を巡回中の青パト(画像:写真AC)

 青パトにはさまざまな防犯効果が期待できるが、いくつかの不安要素も存在する。まず、基本的にボランティア活動であるため、人材確保が大きな課題となっている。多くの青パトは小学生の下校時間帯に活動し、高齢者が中心となっている団体も多い。さらに、青パトを運営するための資金確保も問題で、ガソリン代や保険料などの維持費がかさむ。

 しかし、こうした問題に対処する取り組みも見られる。例えば、大阪市此花区では、区役所が青パトを用意し、月に1回からの巡回を呼びかけている。ガソリン代や保険料は区が負担し、資金確保の問題を解決しようとしている。また、青パトの車体には広告スペースを設け、活動資金も募っている。

 警視庁の2023年の犯罪情勢によると、2021年まで減少していた刑法犯の認知件数が2年連続で増加し、24万3987件に達した。これは前年比で21.0%の増加で、非常に大きな伸び率である。犯罪の内容も変化しており、インターネットバンキングに関する不正送金や、パソコンやスマートフォンを使った特殊詐欺が増加している。

 もちろん、犯罪への対応は警察の役割だが、自主防犯団体によるパトロールもこうした変化に対応する必要があるかもしれない。例えば、振り込み詐欺に引っかかりそうなお年寄りをコンビニ店員が助けた事例もある。地域のニーズに応じた防犯活動を行うことで、青パトにはまだまだ活躍の余地があるだろう。

 全国防犯協会連合会の報告によれば、防犯ボランティアの構成員は年々減少傾向にあるため、人材確保は今後の課題である。そのため、「誰かが犯罪やトラブルから街を守ってくれる」という考えを改め、ひとりひとりが

「自分の街は自分で守る」

という防犯意識を持つことが重要かもしれない。

ジャンルで探す