「子連れはタクシー乗り放題に」元アイドルのつぶやき炎上に見る、子育て世帯の悲痛な声! 現役ドライバーも思わずイライラ、もはや支援強化待ったなしか?

ママタレの苦悩

タクシー(画像:写真AC)

タクシー(画像:写真AC)

 小さな子どもを持つ親にとって、雨のなか、子どもを保育園や幼稚園に送迎する日々の苦労は、まさに“地獄”のようである。意味をなさないレインコートを着て、前後に子どもを乗せて自転車をこぐその苦労は、見ているだけで胸が痛む。そんな嘆きが3月、話題になった。

 女性アイドルグループ・SDN48の元メンバーで、実業家の光上せあらさんがブログで

「国のお偉い方の皆さんタクシー券くだせぇ」
「子育て世帯は子連れの時のみタクシー乗り放題にしてくれないかな」
「もちろんいくらまでとか決めていいからさ」

などと訴え、賛否両論を呼んだのである。

 小さな子どもを連れた親が運転する自転車は、普通に走っているだけでも危険なのに、雨の日は目を疑うような恐ろしい暴走車になる。保育園や幼稚園に少しでも早く着くために、一時停止のところでもスピードを出して走り、信号も無視する人もいる。

 筆者(二階堂運人、物流ライター)は現役のタクシードライバーだが、小さな子どもを乗せて運転しているときは特に注意している。車内では落ち着きなく動き回るため、転んだり物にぶつかったりすることもあるからだ。また、最近の親は

・シートベルトを着用していない子ども
・着用してもすぐに外してしまう子ども

に叱ることも少ない。正直なところ、その危機意識の低さに、ほとほと困ってしまうこともある。

タクシー利用の心理障壁

子どもを載せた自転車(画像:写真AC)

子どもを載せた自転車(画像:写真AC)

 保育園や幼稚園への送迎にタクシーを利用する人は、乗り場から近い場所に住んでいることが多く、基本的にもうからない“短距離”の利用客である。

 その上、ベビーカーをトランクに積むと、ドライバーは全身ずぶぬれになることも珍しくない。こうしたことが積み重なり、タクシードライバーの機嫌を損ねてしまうこともある。

 これらはドライバーの仕事として対応すべきことなので、それを不満に思うドライバーは筋違いなのだが、不機嫌なドライバーに遭遇した経験のある母親のなかには、トラウマになってしまい、子どもを送り迎えするのにタクシーを使うのをためらう人もいる。ちなみに、筆者が以前乗せた母親は、何度もお礼をいってチップを置いてからタクシーを降りていった。

 雨の日だけでなく、タクシーを利用する多くの親にとって、このようなことはストレスの原因となる。

「近距離だからといって断られたくない。
「乗ってみないとドライバーの対応がわからない」

こうした不安を解消しなければ、彼らがたとえタクシーを利用したくても障壁になってしまう。

専門ドライバーの料金問題

子ども商品券はタクシーでも使える。商品券によってはタクシーでも使えるものがある。世田谷区など一部の自治体では子育て支援の券を配布している(画像:トイカード、世田谷区)

子ども商品券はタクシーでも使える。商品券によってはタクシーでも使えるものがある。世田谷区など一部の自治体では子育て支援の券を配布している(画像:トイカード、世田谷区)

 タクシー業界でも子育て支援の制度がある。国土交通省のタクシー子育て支援の一環として、幼児や保護者、妊娠中の人でも安心して利用できるタクシーがある。

 全国子育てタクシー協会では、子育てドライバーの育成を行っている。養成講座と保育実習、チャイルドシート設置研修を終了したドライバーがすでに活躍している。

・幼児を連れた外出のサポート
・保育園、学童保育、塾などへのドアtoドア送迎
・保護者に代わる送迎
・陣痛時のスムーズな送迎

など、子どもの年齢に合わせたサービスを提供している。

このように子育てに特化したドライバーがいることで、小さな子どもを持つ親も安心してタクシーを利用できる。

もちろん、サービスは無料ではない。通常のタクシー料金にサービス料金が上乗せされる。このサービスを利用したいが、料金面でちゅうちょしている親もいる。

 タクシーには、さまざまな福祉関連の割引サービスがある。障がい者手帳を提示すると10%割引になるほか、タクシー福祉券というものもある。また、各行政機関が発行している子育て利用券や商品券などもある。ただし、使えないものもあるので、利用する際はタクシー会社に確認する必要がある。

ドライバー支援の必要性

タクシードライバーのイメージ(画像:写真AC)

タクシードライバーのイメージ(画像:写真AC)

 たとえ前述のような「子育てタクシー」の制度ができたとしても、それが機能しなければ意味がない。そのようなドライバーはまだあまりにも少ない。親はいつでもどこでも乗せてもらえるわけではない。

 いうまでもなく、タクシー会社は営利企業である。ドライバーにも何らかのメリットがなければ、ドライバーは乗せたくないだろう。基本的に、ドライバーは対価を得られない限り、特別なことはしたくないと考えている。

 以前、車いすに乗った人を乗せないドライバーが問題になったことがあった。車いす手当のようなドライバーへの何らかのメリットがあれば、乗せないという行為は避けられたかもしれない。

 ボランティア活動ではなく、仕事として取り組むべきだ。ただし、当事者が常に費用を負担しなければならないのでは意味がない。筆者は、政府や自治体が費用を負担し、ドライバーの積極的な参加を促すことを期待している。

 ドライバーだけでなく、今後活躍が期待されるライドシェアサービスのドライバーも、福祉関連事業に積極的に参加してほしい。行政や自治体は、誰もが福祉に参加できるよう、もっと努力すべきだ。

 光上さんのような小さな子どもを持つ親が「政府のお偉いさんたち、タクシーチケットをください」と考えるだけでなく、ドライバーたちも

「手当くだせぇ」

と思っているのだ。

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