テレビ・ラジオでおなじみ 「交通管制センター」って何をするところ? なぜ全国75都市にもあるのでしょうか

全国75都市に存在

道路(画像:写真AC)

道路(画像:写真AC)

 内閣府が発表した「令和5年度交通安全白書」によると、全国75の主要都市に「交通管制センター」が設置されている。その役割は、交通管制システムが収集したデータに基づいて道路を管理・規制し、交通情報を広く提供することで安全な交通と公害の緩和を促進することである。テレビやラジオでおなじみの存在だ。

 そもそもどのような働きをするのだろうか。交通管制システムは交通情報を収集し、コンピューターで情報を解析。交通の状況に応じて信号制御を行ったり、交通情報を掲示板に表示したりする。収集されたデータはリアルタイムで発信され、ドライバーは状況に応じた対応を取ることができる。また、蓄積されたデータは将来の交通管制にも役立てられることとなる。

 そして交通情報は、道路上に設置されているテレビカメラ、車両感知器等に加え、警察ヘリコプターやパトカー、白バイなどによる警察活動を通じて収集されている。

 こうしたシステムを管理・運用するのが交通管制センターということになる。それにしても、全国75都市という多くの場所に設置されているのは、一体なぜなのか。

多くの都市に存在するワケ

交通情報の流れ(画像:埼玉県警察)

交通情報の流れ(画像:埼玉県警察)

 交通管制センターが全国75都市もの場所に設置される必要があるのは、交通管制システムの

「仕組み」

にある。前述のように、システムは街中にある機器から情報を収集している。都市が大きくなればその情報量は肥大化していく。もし、都道府県にひとつしかなければ、大きな都市をいくつも抱える都道府県のセンターはパンクしてしまうだろう。

 さらに、道路は都道府県や都市をまたがってつながっており、交通は他の都道府県や都市と密接に関連する、

 いわば“血管”のような網の目のように広がる巨大ネットワークなのだ。隣接する他都府県が多い所では、情報量や制御するファクターは多くなり、センターがパンクしてしまうことになる。

 そうした状況を避け、より緻密に情報を収集しそれを連携させて生かすためには全国の主要75都市に必要になってくるというわけだ。

交通管制システムの効果

交通管制センター(画像:神奈川県警察)

交通管制センター(画像:神奈川県警察)

 では日本全国に巨大なネットワークを張り巡らしている交通管制システムは、具体的にどのような効果をもたらしているのだろうか。その効果は大きくわけて四つ挙げられる。

 まずひとつめは「交通渋滞の緩和」だ。システムは収集した情報に基づいて、信号機をコントロールし、交通整理・誘導を行っている。それにより渋滞や混雑を緩和しているのだ。

 ふたつめは「交通公害の防止」。交通渋滞が緩和され円滑な交通が促進されることにより、停止や発進による排ガス・騒音公害の減少に貢献している。

 三つめには「交通事故の防止」が挙げられる。内閣府による「事故類型別交通事故発生件数(令和3年)」によれば、1位は追突事故の9万3098件であり、構成率30.5%を占めている。なかでも興味深いのは、2位の「出会い頭による衝突事故」が2011(平成23)年以降横ばいであるのに対し、追突事故が少しずつではあるものの、

「減少傾向」

にあるという点だ。

 もちろん、衝突防止装置の普及など交通管制システム以外の要因も関係するため、システムだけの効果で事故が減少しているとはいい切れない。しかし、交通渋滞が緩和されることにより、追突事故などが発生しかねない危険な状況を減らすことができているのは事実だろう。

次世代交通システムへの展望

交通公害低減システム(EPMS)のイメージ画像(画像:警視庁)

交通公害低減システム(EPMS)のイメージ画像(画像:警視庁)

 交通管制システムの四つめの効果は「省エネルギーと環境保護」である。

 発展する都市交通の永遠の課題に思える点だが、システムはこうした点でもメリットがある。これまで交通渋滞は環境に大きな悪影響を及ぼしてきた。システムの運用で交通渋滞を緩和させることで渋滞発生による悪影響を減少させ、クルマの燃費向上にも一役買っている。

 実は、交通管制システムには環境に配慮するための

「交通公害低減システム(EPMS)」

も組み込まれている。EPMSは、大気汚染物質や騒音などの交通公害を低減し、地域の環境を保護するためのシステムとなる。自動車の排ガス濃度や騒音レベルなどの環境情報を収集して交通情報板や光ビーコンなどで車両の迂回、流入制御を行うことができるのだ。

 さらに、交通管制システムは次世代を見据えている。情報収集のための機器を設置していないエリアもカバーできるプローブ情報(走行中の車両から収集した位置、速度、通過時間などの走行軌跡情報)の活用や、発展が著しい人工知能(AI)をシステムに融合させる研究などが進められている。

 また、自動運転も無視することはできない。自動運転を行うクルマは、各種センサーで情報を収集し走行している。そのため、天候状況などで信号を認識できない場合などに備え、信号情報を無線で送信するようなシステムが必要になってくるだろう。

 技術的なハードルもあり、今すぐに実現するわけではないと思うが、次世代システムはまさに未来予想図だ。将来、主要75都市に存在する交通管制センターは消滅し、高度に発達したAIが日本中の道路網を制御するSFのような時代が来るのかもしれない。

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